髭をのばす。

2021年03月13日

最近髭をのばしている。

のばすと言っても、髭剃りをやめるだけだから何のことはない。
朝の工程を一つスキップするだけだ。

すね毛は濃いのに髭は薄いので、毎日微々たる成長スピードだ。
2週間ほど経って、やっと鬚っぽさというか、
鬚の自我が確立されてきた気がする。
”口周りの毛”ではなくて、”髭”と名乗ってもいい頃合いになってきた。

なぜ鬚をのばすかというと、大人っぽくなりたいから。
大人っぽくなりたいから髭を伸ばすなんて、子供っぽい理屈だと言われるだろうが、
大人っぽくなる他の方法が思いつかない。

僕は大人になりたいし、精神的に成熟した人間になりたい。

どこで誰が言ってたのか書いてたのか忘れてしまったけれど、
子供に戻りたいと思っていたら、それはもう大人になっている証拠で、
早く大人になりたいと思っていたら、それはまだ子供の証拠なんだそうだ。

髭を伸ばしてみて、いくつか僕自身に変化がある。
まず、お菓子を食べなくなった。
特にチョコやプリン、シュークリーム。甘いお菓子は食べなくなった。
大人に向けて一歩前進だ。

代わりに、コーヒーや紅茶、緑茶を飲むようになった。
近所のディスカウントストアに売ってる10パック200円のティーパック入りの紅茶に、お湯を注いで、3分待って、湯気を眺めて、少しずつ飲むようになった。
時間がゆっくり進んでいく感じが、大人っぽくて、とてもいい。
タバコを吸ってる時に似た感覚なのかもしれない。
僕は吸わないのでよく知らないけど。
(過去に一回だけ吸ってみたことがある。
家のベランダで一本吸ってみたら、ヘラヘラしてきて笑いが止まらなくなってしまった。
面白くないのに、口角が引きつって、笑い声が漏れ出て止まらなくなった。
怖くなったので、それ以降吸ったことはない。
アメスピの紫の、確か1mmのやつだったと思う。)

昔、5年ぐらい前に坊主にしていたことがある。
なんで坊主にしたのかあんまり覚えてないけれど、たしか何かしら大きな失敗をしたような気がする。
申し訳なくって、衝動的にドンキでバリカン買ってきて、風呂場で頭を剃った。

今まであった毛が一掃され、頭皮が外気と触れる。
これが結構気持ち良かったのだ。
脳が冷やされるからなのか、今まで自分を覆っていたものが取り払われたからなのか。
邪念が一切なくなり、健やかな気持ちになって、性格も心なしか明るくなって、友達も増えた。

精神と肉体はひと繋ぎだ。
デカルトが否定し、スピノザが肯定した、心身一元論の本意を、僕は坊主によって悟ったのだった。

精神は肉体によって決まる。逆も然りだろう。
元気がない時は、よく眠るのがいい。
焦っている時は、思いっきり呼吸するのがいい。
苛々している時は、たくさん水を飲むのがいい。
不安なときは、ちゃんと太陽を浴びるのがいい。

心を晴れやかにさせたいなら、坊主にするのがいい。
大人になりたいなら、髭を伸ばせばいい。

もし僕がこの先大人になって、
その時子供に戻りたいと思ったら、
その時は、髭を剃ればいい。

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