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日本一有名な名無し猫の謎を追う本『吾輩は猫である殺人事件』

日本一有名な名無し猫の謎を追う本『吾輩は猫である殺人事件』


吾輩は俳優である名前(代表作)はまだない。というかそもそも仕事がない。仕事がないから、時間はある。
小晦日から大晦日、元旦ふくめの三ヶ日、五日丸々実家に帰る。
しかし、帰ったとてすることはない。仕方がないから本を読む。

『吾輩は猫である殺人事件』

ちなみに『吾輩は猫である』を知っているだろうか?「吾輩は猫である。名前はまだない」から始まるアレである。
ではこれを最後まで読んだものはどれほどい

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フライパンを買い替えて生活を取り戻す本『私の生活改善運動』(安達茉莉子)

フライパンを買い替えて生活を取り戻す本『私の生活改善運動』(安達茉莉子)

卵焼きを作る。フライパンに焦げつく。私は膝から崩れ落ちた。その程度のことで、私は痛く、参ってしまう。

例えば、職場の隣のババアが嫌い。
ババアの発する小言、独言、嫌味、痰の絡んだ声、過剰なタイピング音、ヒステリックな言動、行動、あらゆることが勘に触る。

例えば、電車が嫌い。
100デシベルの走行音。不機嫌な車掌の声。永遠に繰り返される甲高い発着メロディ。意味不明にスピーカーから流される鳥の鳴き

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読書家が語る読書についての本『読書について』(小林秀雄)

読書家が語る読書についての本『読書について』(小林秀雄)

読書で金を稼ぎたい。これは読書家の夢である。ページをめくる毎に本の定価の1%、金が空から降ってきて欲しい。
派手な生活に憧れはないから、必要以上の金は要らない。
安酒を買い、塩を舐めては此れを肴に、酔いては寝つつ、日々を過ごす。
せめて駄馬のように膝を震わせ、日銭を稼ぐあの無意味な時間を、読書に充てれれば十分なのである。

しかし銭とは労働の対価であり、労働とは、雑に言えば、誰かのためにために手足

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酒飲悪口愛妻作家のパリ生活を覗きたい時に読む本『移動祝祭日』(ヘミングウェイ)

酒飲悪口愛妻作家のパリ生活を覗きたい時に読む本『移動祝祭日』(ヘミングウェイ)

ヘミングウェイは大酒飲みだった。彼は酒を飲まねば文章を書くことができなかった。
朝6時に起きて筆を取り、夜8時までグラス片手に書き続け、それ以降は断酒。
なんとも逆転した生活を送っていた。
彼にとってアルコールはペンのインクも同然だった。

だから彼が糖尿病に犯され、酒を控えよと医者から強く忠告された事は、彼の作家人生最大の危機に違いなかった。
そこで考案されたのが”パパ・ダイキリ”

ここから砂

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もうyoutubeもSNSも見たくないけど、そんな生活に戻れない時に読む本『現代生活独習ノート』(津村記久子)

もうyoutubeもSNSも見たくないけど、そんな生活に戻れない時に読む本『現代生活独習ノート』(津村記久子)

できることならインターネットから離れたい。
もうyoutubeは見たくない。SNSは開きたくない。amazonの欲しいものリストは増えてく一方。楽天からはもう要らないって言ってるのにダイレクトメールが送られてくる。Ubereatsはなんだか苦手。うるさいグループライン無視してたら未読が100件越えた。
あーヤダヤダ現代社会。

新しいものより古いものの方が好きだから、知らないうちに生まれてきた知ら

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『空洞のなかみ』(松重豊)

『空洞のなかみ』(松重豊)

”俳優本”が好きでよく読む。面白い。

僕が好きな俳優本の中で言うと、例えば柄本明の『東京の俳優』なんかは絶品。ユーモラスな語り口で荒唐無稽な俳優人生が綴られる。
堺雅人の『文・堺雅人』なんかもおすすめ。あのヒョロヒョロっとした、それでいてナイーブな感じが文体に出ててイイ。
山崎努の『俳優のノート』は割合演技論に傾いた本。一人の老俳優が一本の舞台に向き合う姿そのままに描かれている。このレベルの俳優

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『きみは誤解している』(佐藤正午)

『きみは誤解している』(佐藤正午)

僕自身ギャンブルはやらないし、ギャンブラーと関わったことはあまりないが、
その数少ない経験の上で言うと、ギャンブルをする人間はどこか変だ。

僕が最初に出会ったギャンブラーは、大学の演劇サークルの同期の女の子。
稽古前に必ずパチンコを打ち、勝っていれば芝居も上々、負ければ芝居も散々だった。あるとき、彼女が爆発的な芝居をして稽古場で大爆笑をかっさらった日があったが、その時は10万勝っていたんだそうな

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俺のせいでも、お前のせいでもない世界『中動態の世界』(國分功一郎)

俺のせいでも、お前のせいでもない世界『中動態の世界』(國分功一郎)

例えば、友人が待ち合わせに遅刻したとする。寝坊とのことだ。
僕は友人を咎める。
待ち合わせの時間は伝えたはずだ、どれだけ待ったと思っているんだ、なぜ遅刻したんだ。
最初は平謝りでヘコヘコしていた彼は、しだいに反抗を始める。
彼の主張はこうだ。

遅刻したのはまじメンゴ。でもよ、俺はいつもより二時間も早く寝たし、アラームもかけたんよ。今日の時間もちゃんと確認したしね。でも起きたらもう待ち合わせ時間だ

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正直かっこよくなりたい 『「いき」の構造』

2021年04月14日

とは言うものの、かっこよさって具体的に何?って聞かれるとゴニョゴニョとした答えしか出すことができない。

僕にとってのかっこよさとは、あえて言えば、なんてゆうか、大人な、上辺だけじゃない、内側からジュンジュン染み出る、色気?、みたいなやつだ。

いつかに見かけた、汚い居酒屋のカウンター席で一人、芋焼酎のロック片手に本を読む無精髭の似合う細身のお兄さんがまさにそれであった。

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村上春樹とNTR文学 『女のいない男たち』

2021年04月07日
ここ最近、村上春樹にハマっている

 きっかけはラジオ。
 今、僕の家にはテレビがなくて、一人暮らしの家は妙に静かでサワサワしてしまう。youtubeを垂れ流していた時もあったけど、5分おきに不愉快な筋肉増強剤のCMが挟み込まれるので、近くのディスカウントストアで500円の昔ながらのハンディーラジオ(おじいちゃんが川辺で座りながら競馬中継聞いてるアレ)を買って、無音を紛らわ

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「まずいスープ」

2021年03月31日

「まずいスープ」という小説を読んだ。

作は戌井昭人。
鉄割アルバトロスっていう最高に面白い劇団?余興集団?を率いて活動をしていて、僕が昔いた文学座の研究所の先輩らしい。

鉄割については2〜3年に一回ペースで公演やってる。
youtubeとかで検索すれば動画が上がってると思う。
例えばこれなんかお気に入り。

最高にファンキー。

僕は鉄割のファンだ。

しかもこの戌井

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「このブログ面白いね」と言われた時、僕は今世紀最大、喜びに果てた。

2021年02月09日

それはそれは、大歓喜。
天にも昇る気持ちとはこのこと。
最高の気分。
う、う、う、うれぴーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!
イェイ、イェイ、イェイ!!!!!
わっしょい、わっしょい、うんとこどっこいしょい!!!!!!!!!
万才三唱!!!!縁もたけなわ!!!!三々五々!!!!!!!解散!!!!!!!

こんなに嬉しいこと滅多にない。
たとえ、顔がかっ

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インテリアと念仏

2021年02月06日

昨日、最高に分厚くて、重くてかさばる本を買ったが、案の定、今日は1ページも開かなかった。
いやいや、そんなもんよな。そんなもん。
買う瞬間が一番高鳴るのが読書。読書の醍醐味は買う瞬間と、本棚におく瞬間。
もはや本はインテリア、実用性0のインテリア。オブジェ。鹿の剥製と同じカテゴリー。

そんなわけで、机に置きっぱだった『読書の日記(阿久津隆)』を本棚にin。
代わりにこれ

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引越しと本

2021年02月05日

引越しをするので、家中のものを処分している。
この安アパートには6年近く住んでいる。狭いけど住みやすい、割りかし良い家なんだけど、いいかげん6年も住んでると流石に飽きてくる。ということで先月頭ぐらいに引越しを思い立ち、先週新居を決め、今月末に退去する。スピード転居だ。
特に物をため込む性格ではないので、そんなに大変じゃないけど、家にはとにかく本が多い。

本は重い。かさば

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