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今に通じる15年前のネット論「ウェブ進化論 / 梅田望夫」

GMOペパボ取締役CTOのあんちぽさんのプレゼンを視聴した際に、おすすめされていた書籍です。

発売が2006年ということで15年も前の書籍です。私は存じ上げなかったのですが当時はベストセラーになっていたようで…。
内容は、当時上場を経てますます勢いづいていたGoogle(と一部Amazon)にフォーカスをあてて、WEB企業が目指しているものを分析しています。読んでみると15年の時間経過とともに「たしかにそうなってるよね」という話も多く、実感を持ちながら読むことができるのですが、当時では非常に抽象的な話だったでしょうから理解した人も少なかっったんじゃないかなと想像します。

3大潮流と3大法則

本書では当時から将来においてWEBの進化によって生じる大きな流れ(3大潮流)があると説いています。

3大潮流とは、
知的資産の無償化による知性のつながりを生み出すオープンソース、
インターネットの拡大と機能強化、
モノのコモディティ化によって価値が下がるチープ革命
といいます。
これらは相互に作用していて、オープンソースによってイチ組織でくくられていた活動範囲が撤廃されて、価値の融合新生が促進されることでインターネットの拡大に寄与したり。
たとえば設計のオープンソース化によって一定水準以上のモノが簡易に生産されるようになってチープ革命が進んだり。
オープンソースによって恩恵を受けた人は新たなオープンソースを提供したり、といろいろ。
GoogleもLinuxの恩恵を受けていましたから、先進的な発想を持って様々なコンテンツをオープンソース化したのではないかと思います。

オープンソースでなにか公開してそれが定着すると、プラットフォーム化するんですね。多くの人にとってそれがなくてはならなくなってしまうような。今でこそわかりやすい話ですけど、Googleは15年前にプラットフォーム化を目指し、未開拓のウェブをどんどん開拓して提供していったという感じですかね。

3大法則は、というと3大潮流によって生まれるものを指します。
一つは神の視点からの世界理解(ビッグデータ)といわれるもので、ネットの拡大によってあらゆるものがつながることで、個としてはより詳しく集団として俯瞰して事象を分析できるようになるというもの。明らかにビッグデータですね。
また、その他WEB上で自動で収入を得ること消えるはずの価値の集積といった2つの法則が紹介されています。
いずれもネットの拡大によって従来ではつながらなかった人とつながって価値が生まれたり、何もせずになくなっていた時間を有効活用できるようになることで価値が高まることを予見していました。いずれも今はそうなっている、という実感がありますよね。

知の高速道路の話

ウェブ進化論で特に面白かったのが知の高速道路の話
将棋の羽生さんがウェブの進化によって将棋がどう変わっていくかを問われたときに出た話だといいます。

当時から将棋はネット上で戦術データが集積されていたり、24時間いつでも誰かとつながって将棋を打てる環境があったといいます。そういった環境ができあがったことで、棋士の能力向上は飛躍的に進み、プロ入り直前程度の強さの棋士がどんどん生まれたそうです。
この飛躍的に強くなる環境を羽生さんは高速道路になぞらえたわけです。
じゃあ棋士は大戦国時代になったかというとそうではなく、高速道路が終わってしまった棋士の多くが同質化してしまって一歩抜きん出ることに難儀してしまいました。
むしろ羽生さんに言わせれば、そうやって生まれた棋士は窮地を脱する一手を生み出す力に欠ける、とも。

この話は色々と示唆に富んだいいエピソードだと思います。
知の高速道路に乗って定型的に早く強くなる分、定型外の対応力が育たなかった。将棋は強くなるけど発想力は育たない、みたいな。
もし、両方持った人がもしいたら強いよねっていうのが藤井聡太さんですね。

これが15年前の話ですから、今だと何でもある程度まではかんたんにできるようになりました。モノはより安くなって、インターネットからノウハウが得られます。多くのことに高速道路が敷設されました。
じゃあ今なにが必要かと言うと、高速道路を抜けたときにどうするか意識的になることだったりするんじゃないかと思います。
あんちぽさんは、時間経過では変わりにくい能力(≠技術)こそ伸ばしていくべきとおっしゃっていて、さすがだなと思いました。

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