自己正当化の沼から抜け出そう「自分の小さな箱から脱出する方法/アービンジャー・インスティチュート/金森重樹」
よりよきビジネス、人間関係、家庭生活のために、時には、もしかしたら自分は今「箱」に入っているのではないかと疑ってみることが大切です。あなたをとりまく人間関係のトラブルを、一挙に解決する考え方を紹介。
一時期、人間関係で悩んでいて「人にもっと寛容にならなきゃ」と思い始めた頃に、私が所属しているプログラミングスクール「フィヨルドブートキャンプ」のメンターさんから教えていただいた一冊です。
発売は2006年でもう15年も前の本ですが、参考になることがたくさんありました。あらすじは以下。
本書の主人公トムは、ザグラム社のライバル会社から最近転職したばかり。新しい上司となる、バドと初めて面談をします。転職後、張り切って仕事をしていたトム。いきなりバドに「君には問題がある」といわれショックを受けます。バドから問題点を指摘され、己を振り返り始めるトム。仕事だけではなく、妻や子供との関係も見直していき、そして...
引用元:https://goribest.com/box-review/
この本では人間関係でうまくいかないときは自分が「小さな箱」に入ってしまっているんだといいます。箱の内と外とがあって、いつの間にか内側に入ってしまっている。そうすると周囲との軋轢が生じて、物事がうまく運ばなくなる。
だから、箱から抜け出さなきゃいけない。外に出ていこう、と。
小説仕立てで書いてあるので相当読みやすいです。サクサク2〜3時間で通読できてしまったはずです。お手軽さも含めておすすめですね。
箱とはなんなのか
本書では一貫して箱のことは箱としかいいません。他の言葉にしないとちょっとイメージが付きづらいので私なりに考えてみました。
まず、箱に入ると具体的にどうなってしまうのか。
一つは自己欺瞞に陥ること。
「このくらいでいいだろう、誰も見ていないし」というような振る舞いを各所でしてしまいます。自分が当初考えていたことがあったにも関わらず、始めるにあたってやっぱりいいや、と自分をごまかしてしまうことです。
本書では「子どもと遊ぶはずだったのに理由をつけてやめてしまう」とか、私であれば「営業車のガソリンを入れようと思っていたけど、めんどくさくなったのでそのまま戻す」とか自己欺瞞の心当たりがあったのでドキッとしちゃいました。
2つ目は人にどう思われるのか気になるようになること。
箱に入ってしまうと、人に相対したときにその人自身ではなく、その人を通じてみる自分が気になるようになってしまいます。
3つ目は他の人を人として考えなくなること。
本来であれば誰もが自分自身と同様に「考え、感じる人間」であり「ときには成功することもあれば失敗することもある人間」であるのに、そのような前提をないがしろにして人を道具のように扱うようになってしまいます。
2つ目と3つ目をかけ合わせて人を自分のために使う、そんな考えにとらわれてしまうのです。
では、箱とはなんなのか。
私は「自分本位の価値観」のことではないかと思いました。
自分本位になってしまえばこそ、決めていたことを理由をつけてしなくなり、他人を自分より下のものとして見るようになっていくんじゃないでしょうか。
箱に入る瞬間
妻に手を貸さないという決定と妻の欠点を結びつけたのは、妻に手を貸し損なったあとのことなんだ。自分を正当化しなくてはと思って、妻の欠点に目をつけ、その欠点を大げさに仕立て上げた。
引用元:自分の小さな「箱」から脱出する方法 P124
人はいつ箱に入ってしまうんでしょうか。
それは、自己欺瞞のまさにその瞬間だといいます。
自分がすべきと思ったことをしなかったときに、しなかった自分を正当化するために他人を自分のために扱うようになってしまう。
自己欺瞞→自己正当化→自己欺瞞…
このようなループ、沼に囚われてしまうのです。
このときにしない理由探しをするために、しないに足るしょうがない理由探しを始めたり、相手の欠点探しを始めてしまいます。
そうして、行き着く先は自分が本来すべきことが自己正当化と自己欺瞞によってわからなくなる状態。
私も心当たりがありました。自分を正当化しているんじゃないかという問題が。それがわかったとしてもどうすればいいのかがわからない。やっぱり相手が悪いんじゃなかったかとか考えてしまう。人間性を失っていってんじゃないかと怖くなりました。
つまり自分の感情に背くことで現実の見方が歪んだわけだ
引用元:自分の小さな「箱」から脱出する方法 P125
人が一日に行う選択は35,000回以上に上るといいます。
自分がすべきと思ったことをしない、自分を裏切った行動を続けることで現実の捉え方が歪んでいわゆる認知のゆがみに陥ってしまうんでしょう。自分が本当にすべきということがそもそも分からなくなってしまいます。
さらに自分を守るために歪んだ現実に迎合し始める。
正当化した自己を崩す人を脅威と思い、正当化した自己を強化する人を味方と思う。根拠となりそうなものを過大に評価して、相手に非があると思うようになってしまう。
箱の中にいると、自己正当化のために他者が悪くなければならない。そうして悪を望み、悪を引き起こす言動を取るようになってしまうのです。
箱から出るには
ずばり、相手を人間として尊重することだと本書に書かれています。
相手を人間として尊重し始めた瞬間から箱から脱出できている。
箱が引き起こす問題は常に自分の内側にあるものです。
箱に入った状態では無駄な行動リストがあります。
1. 相手を変えようとすること
2. 相手と張り合うこと
3. その状況から離れること
4. コミュニケーションを取ろうとすること
5. 自分の行動を変えようとすること
これらにはある共通点があります。
それは自分の考え方を変えていないことです。行動を変える…というのもありますが、問題の本質は自己正当化する自分本意な価値観にあります。これをどうにかしない限り、問題の根本解決には至りません。
つまり、自分本意な価値観を捨てるためにも相手を尊重しましょう、という話に落ち着きます。
大切なことは「相手を尊重する、そのためにこういうことをしよう」と思ったのならばそれを貫徹することです。できなくとも思いやる気持ちを持ち続けることです。
「やっぱりいいや」と自分を裏切り、相手をないがしろにしてしまうと箱に逆戻りしてしまいます。
補足
箱の概念はとてもいいのですが、箱から出るには相手を尊重しましょう…というのはちょっとざっくりかなと思いました。
そのへんの話は自己啓発書の名著 7つの習慣 という本において、人間に備わる良心や想像力といった4つの力を用いて生きることが書かれてます。
◎「想像力」とは?
未来を心に描く力、心の中で何かを作り出す力。
◎「自由意志」とは?
刺激と反応の間にどの様に反応するか選択することが出来る力。
◎「自覚」とは?
自分の考え方、動機、歴史、先入観、行動、習慣、傾向を客観的に検証する能力。
◎「良心」とは?
道徳的な善悪をわきまえ区別し、正しく行動しようとする心の働き。
引用元:https://bookmarkme.hatenablog.com/entry/2019/05/03/232639
本書の内容はこのあたりが前提にあるかと思いますので、気になった方は7つの習慣も読んでみるといいかと思います。4つの力の話は序章〜第1章あたりにかかれていた気がします。