ツマミ
心にツマミがある。誰でもあると思う。
オンとオフを切り替えるのはパチパチスイッチじゃなくてツマミの形をしているやつだ。
ツマミをONのほうに引っ張ると『公』の度合いが増して、他者の目を想定した振る舞いが出来るようになる。
ツマミをOFFの方に倒すと『個』の度合いが増して、個の性質を発揮した自由な振る舞いをする。
私の持っているこのツマミをほんの少しONに動かしてみたら、『公』がなだれ込んできた。
秩序や良識や常識の篩を通る前の、予測不可能なあれやこれがごうごうと押し寄せて『個』を瞬速で凌駕していく。
私という個の意思や意図は散り散りの藻屑です。
なかなか強烈である。
みんなこんな中で笑っているのかと、私もキリッとしなくてはとやってきたけれど。
ツマミをもう少し細やかに調整すれば良いのでは?
触れるか触れないか、ほんの少しだけ倒す。
相変わらずごうごうなだれ込む人の意思。
全てに応答できなくても、ある程度適合しようとしては空回り。
藻屑と化した私の個を拾い集められず、代わりに有象無象の他者の意思が口をついてこぼれ出る。他者の意思が表情筋をつき動かす。
果たして、……。
“みんな”がひた隠した本音が口をついてこぼれ出る。表情筋をつき動かす。
「それは言わないでおくべきこと。みんなガマンしていますよ。」
反感、反感。批難。疎外。孤独です。
「これは私の想いじゃないんです」?
都合のいい言い訳みたいに宙を舞う。
恐ろしい体験をした気分!
このツマミ、もう動かさんとこ!って決心した。
OFFから動かないツマミ、『個』に全振りした私のツマミ。
疎外。孤独。
反感ふたつと批難が減って、ありがたいことです。
孤独の先に、じぶん時間のオマケ付き!
ここから一歩も通さない。理屈も法律も通さない。誰の声も届かない。友達も恋人も入れない。
手掛かりになるのは薄い月明かり。
孤独の中で私はやっと私を知った。
このツマミを少しずつ動かす仕事をしています。
役に立つやり方を見つけた。相変わらずなだれ込んでくるものに凌駕される日もあるけれど。
クライアントさんのこと、みんな愛してるから。
出会ってくれてありがとう。
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