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「ブレない人」と「頑固な人」の違い
はじめに
多くの人が「ブレない人」を評価し、反対に「頑固な人」の扱いに戸惑うことがあります。これらの言葉の違い、きちんと説明できますか?
「考えがブレない人」と「頑固な人」。見かけは似ているが、実は明確な違いが存在します。この記事で、その違いを具体的に解説します。
その違いを理解することで、人間の言動をより深く捉えられるようになり、また、自己認識も深まるでしょう。さらに、感覚的な考えを言葉でしっかりと表現することの重要性を、この記事を通して感じていただければ幸いです。
動画も作ってますのでこちらもどうぞ。
1. 解説
考えがブレない人と頑固な人。その違いを構造で捉えてみましょう。
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物事を判断する際には、以下の 3 つの要素が関与します。
判断材料
判断基準
判断結果
考えがブレない人は、判断基準が一貫しています。しかし、判断材料が変われば、その基準に基づき結果も変わることができます。
対照的に、頑固な人は、一度下した判断結果を変えようとしません。そして、それを保つために判断基準まで変えることがあります。
簡単に言うと、考えがブレない人は「基準」を変えない。頑固な人は「結果」を変えない、と考えることができます。
少し抽象的な内容で分かりづらかったかもしれませんので、次の具体例でその違いを見ていきたいと思います。
2. 具体例
では、具体例を見ながら、その意味を理解していきましょう
ⅰ. 新しい技術の導入
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背景:
B 社は、効率的な業務遂行を目指しており、常に新しい技術や方法の導入を検討しています。最近、効率を大幅に向上させる可能性のある新しい技術の提案がありました。より自動化されたツールです。
社員は元々以下の判断をしていました。
判断材料: ツール A、ツール B の利用、もしくは、アナログ対応から選択
判断基準: 業務効率を優先
判断結果: ツール A を利用
新しい技術の提案を受け、ブレない人と、頑固な人の反応の違いを見てみたいと思います。
ブレない人の反応:
山田は B 社の技術部長。彼は業務の効率化を常に求めており、新しい技術にも前向きに取り組む姿勢を持っています。
判断材料: 既存ツールに加えて、ツール C も利用可能
判断基準: 業務効率を優先
判断結果: ツール C で効率が上がるか検証する
頑固な人の反応:
中村は B 社の経理部のベテラン。彼女は長年、現在の業務方法での経験を積み重ねてきており、変更には慎重な姿勢を持っています。
判断材料: 既存ツールに加えて、ツール C も利用可能
判断基準: 業務効率に加えて、人とのつながりを大切にする
判断結果: あまり自動化されていないツール A を継続利用
まとめ
ブレない人は、新しい判断材料を受け入れ、一貫した判断基準に基づいて適切な判断を行います。一方、頑固な人は、既存の判断結果に固執し、その結果を維持するために新しい判断基準を探そうとします。
ⅱ. 部署間のコミュニケーション改善
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背景:
A 社は、2 部署間の案件で情報の取りこぼしを経験し、それが業績への悪影響をもたらしていました。この事態を受けて、部署間のミーティングを適宜実施することとなりました。しかし、業務が拡大し、3 部署以上が関与する案件が増えてきた現在、部署間の情報取りこぼしの問題がさらに深刻化しています。
社員は元々以下の判断をしていました。
判断材料: 2部署にまたがる案件の情報の取りこぼし、業績への悪影響
判断基準: 部署間のコミュニケーションは重要
判断結果: 適宜、部署間のミーティングを実施
問題の深刻化(前提の変化)を踏まえ、ブレない人と、頑固な人の反応の違いを見てみたいと思います。
ブレない人の反応:
田中は A 社の営業部長。彼は先の 2 部署間の案件での情報取りこぼしのトラブルを経験しており、現在の 3 部署以上の関与による問題も深刻に受け止めている。
判断材料: 3以上の部署にまたがる案件で部署間の情報の取りこぼし、業績への悪影響
判断基準: 部署間のコミュニケーションは重要
判断結果: 全体ミーティングを導入すれば、部署間のコミュニケーションが改善される可能性があると判断
頑固な人の反応:
佐藤は A 社の人事部のベテラン。彼女は A 社がまだ小さな会社だった頃から働いており、部署ごとの独立性と文化を大切に思っている。
判断材料: 3以上の部署にまたがる案件で部署間の情報の取りこぼし、業績への悪影響
判断基準: 部署間のコミュニケーションは重要、かつ、部署ごとの独立性・文化も重要
判断結果: 適宜、部署間のミーティングを継続し、部署の独立性や文化を守るべきだと判断
まとめ:
ブレない人は、新しい判断材料を受け入れ、一貫した判断基準に基づいて適切な判断を行います。一方、頑固な人は、既存の判断結果に固執し、その結果を維持するために新しい判断基準を探そうとします。
ⅲ. オフィスの飲み物の選び方
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背景:
D 社は、休憩室にて社員のための無料の飲み物を提供しています。これまで、コーヒーと紅茶を提供していたのですが、最近、健康志向の多くの社員から緑茶の提案が出てきました。
社員は元々以下の判断をしていました。
判断材料: コーヒー、紅茶
判断基準: 多くの社員が好む飲み物を選ぶ
判断結果: コーヒーを選ぶ
新しい提案を受け、ブレない人と、頑固な人の反応の違いを見てみたいと思います。
ブレない人の反応:
石田は D 社の広報部員。彼は社員の声を大切にし、新しい提案も積極的に受け入れる性格です。
判断材料: コーヒー、紅茶、緑茶
判断基準: 多くの社員が好む飲み物を選ぶ
判断結果: 緑茶も導入してみて、社員の反応を確認する
頑固な人の反応:
吉田は D 社の営業部のベテラン。彼は長年、コーヒーを飲んでおり、新しい提案には慎重な姿勢を持っています。
判断材料: コーヒー、紅茶、緑茶
判断基準: 休憩室の飲み物はシンプルであるべき
判断結果: コーヒーのみを継続して提供するべきだと判断
まとめ:
ブレない人は、新しい判断材料を受け入れ、一貫した判断基準に基づいて適切な判断を行います。一方、頑固な人は、既存の判断結果に固執し、その結果を維持するために新しい判断基準を探そうとします。
補足: 柔軟性
時代の変化や社会の進歩など、大きな変動が生じたとき、判断を下すための「判断基準」自体が変化する必要が出てきます。こうした状況においては、頑固な人の反応が、先程の例とは異なるので補足します。
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頑固な人は、新しい状況や情報が出てきても「判断基準」を変えずに、既存の「判断結果」を維持しようとします。このため、変化する状況に対応するのが難しくなることが予想されます。
一方、考えがブレない人(柔軟性のある人)は、新しい状況や情報に合わせて、今まで考慮してこなかった「判断基準」を更新し、新しい考えや視点を取り入れる柔軟性を持っています。これにより、変わった状況にも適切に対応することができます。
では、一つ具体例を見てみたいと思います。
チャットツール普及によるコミュニケーション方法の変化
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背景:
15 年前、山田さんと中村さんは大学の友人同士で、連絡手段として主にメールや電話を用いていました。しかし、LINE などのチャットツールが 普及し、友達や会話履歴の管理が効率的に行える様になりました。
2 人は元々以下の判断をしていました。
判断材料: メール、電話から選択
判断基準: 速やかなコミュニケーション方法を選択
判断結果: 状況に応じてメール・電話を使い分ける
新しいコミュニケーション手段の出現を受け、ブレない人と、頑固な人の反応の違いを見てみたいと思います。
ブレない人(柔軟性のある人)の反応:
山田さんは、新しい技術や情報に対して前向きな性格の持ち主です。
判断材料: メール、電話、LINE、メール
判断基準: 速やかかつ「効率的」なコミュニケーションをとる
判断結果: LINE を主要なコミュニケーション手段として利用する
頑固な人の反応:
中村さんは、長年慣れ親しんだ方法を好む性格の持ち主です。
判断材料: メール、電話、LINE
判断基準: 速やかなコミュニケーション方法で十分(効率性はどうでもよい)
判断結果: メール、電話を使い続ける
まとめ:
時代の変化や技術の進歩に伴い、今までになかった価値観がもたらされることがあります。この場合ですと、コミュニケーションに「効率」という新しい価値観が現れました。これにより、ブレない人(柔軟性のある人)はこの新しい状況を柔軟に受け入れ、「判断基準」を更新して適切な「判断結果」を導き出します。一方、頑固な人は「判断結果」を変えないように、新しい状況に対しても既存の「判断基準」を維持しようとしています。
まとめ
この記事では、日常の判断や決定の過程において「考えがブレない人」と「頑固な人」の違いについて解説しました。
判断の過程において 3 つの要素(判断材料、判断基準、判断結果)が関与し、ブレない人は、判断基準を一貫して保持し、判断材料が変わると結果も変わることができます。
対照的に、頑固な人は一度下した判断結果を変更しようとせず、その結果を保持するために判断基準を変えてしまう。
さらに、時代の変化や大きな社会的変動により、判断基準自体を更新する必要がある場合は判断基準を変えずに判断結果を維持しようとします。
この内容により、人を見る目が養われ、自己認識も深まったなら幸いです。