銀木犀

住宅街を歩いていると、ふと鼻が柔らかな香りを捉えた。

顔を上げると、立派な金木犀の樹が目に入った。
緑の葉の中にオレンジ色の花がぽつぽつと咲く様子は綺麗で、秋が来たんだなぁとじんわり感じる瞬間だ。


でも私は、同じ時期にひっそりと咲く銀木犀のこともすきだ。

私が生まれた時に親が庭に植えてくれた、私にとって大切な樹だから。



夕方、ふとカメラを手に外へ出て、庭の銀木犀を眺めてみた。

香りは金木犀ほど強くなく、微かに感じる程度。
花はオレンジではなくて、白っぽい色。
時折、道を行き交う車に反射した夕陽があたって、その小さな白い花を仄かに染める。

その優しい香りと匂いに包まれながら、ファインダーを覗いてシャッターを切った。