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なぜ農家はジャムを作りたがるのか。農家の作った果物の行き先について考えてみた。

⚠️この記事は、私があった農家や、直売所での業務経験を踏まえて綴っています。

果物をたっぷり使った甘酸っぱいジャムは、手作り感が魅力ですよね。
観光地の直売所やファーマーズマーケットで並ぶさまざまなジャムを目にして、「こんなにたくさんジャムが作られるのはなぜ?」と思ったことはありませんか?
実は、そこには農家が抱える「B級品」の現実と、ジャムという加工方法の「保存性の高さ」が大きく関わっているのです。

農家が抱える「B級品」の現実

農家が作る果物は、収穫されたすべてが市場に出るわけではありません。果実の一部は、病害虫による小さな傷がついたり、収穫の過程で傷ついてしまったりして、商品としての基準を満たせない「B級品」となります。
こうしたB級品は、見た目は少し悪くても味は一級品ですが、市場で求められる「完璧な見た目」を備えていないため、多くの場合、売り物にはなりません。

農家にとって、こうしたB級品は早く消費しないとそのままでは廃棄になってしまいます。
収穫の手間をかけたにも関わらず、廃棄してしまうのは惜しい。
そこで、農家の多くが「ジャムとして加工」するのです。

保存性の高さが求められる「ジャム」という選択肢

B級品を有効活用する方法として、農家がよく選ぶのが「ジャム」づくりです。
ジャムは、果物を熱して砂糖を加え、瓶詰めすることで長期間保存が可能になります。
(最近はHACCPの関係でジャムを製造して販売するのも厳しくなりましたので、販売する時は注意が必要ですよ。)

季節を感じられる果物も、ジャムにすることで一年を通して楽しむことができます。
農家は廃棄のリスクを避け、手間をかけた果物を無駄にせずに消費者に届けることができます。

特に観光地の直売所やファーマーズマーケット、農家の軒先で販売されているジャムは、このような「保存が効く」という理由から作られていることが多い。
これは、私が過去に多くの農家と接してきて、目の当たりにしてきた事実です。

顧客ニーズが先?農家の都合が先?

こうして農家の工夫から生まれたジャムですが、必ずしも「顧客のニーズがあって」作られた商品ではないケースも多いようです。
こうした商品は、「売れるもの」よりも、「作れるもの」を優先する傾向が感じられます。
農家が生産した果物を、どうにか形にして無駄なく販売するという農家側のニーズが、ジャムづくりの背景にあるのです。
つまり、私たちが「ジャム」を手にする機会が多いのは、ある意味では「果物を無駄にしないため」という農家の都合が大きな理由なのかもしれません。

まとめ

農家の手にかけられた果物がジャムとして販売される背景には、無駄を出さず、できる限り多くの人に果物を届けたいという想いが込められています。こうした背景を知ることで、私たち消費者もまた、そのジャムがただの「甘い食べ物」ではなく、農家の手間と工夫の詰まった一品だと感じることができるのではないでしょうか。
次にジャムを手に取るとき、その奥にある農家の想いに少しだけ思いを馳せてみると、味わいもまた変わってくるかもしれません。

しかし、「無駄にしないために作られたジャム」は、必ずしも「消費者のニーズ」と合致しないのでは?
直売所で見かける高額な値札が付いたジャムを見つけるたび、そう疑問に思ってしまいます。
「作ったものを売る」のは、私が見てきた限り、農家の悪い癖だと思います。
やはり、お客様の求めるものを、求める時期に、求める量を、安定して提供できることこそ、お客様からも、お店からも求められるプロの農家なんだと私は思います。

だから、無農薬とか、オーガニックだからとかの理由で傷だらけの農産物やジャムを販売するのは私はあまり好みません。


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ゆず
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