望遠鏡でみる星の世界
星が好きな私は、3千円ほどで購入した家庭用の小さな望遠鏡を持っています。
この望遠鏡は“誰でも簡単に組み立てられる工作キット“として販売されていて、付属のドライバー1本を使うだけの簡単なものでした。(不器用な私でも簡単に作れました!)
月のクレーターの様子が見えたり
木星のまわりの衛星が見えたり
土星がほかの星と違って横に伸びた形をしているのが分かったりと
低倍率ではありますが意外と見えます。
はじめて買った望遠鏡ということもあって宝物にしています。
今は寒くて使う機会が無いまましまわれていますが、夏や秋にはベランダに持ち出して、時間を忘れるほど観察していました。
去年話題になった皆既月食+天王星食の際も、この望遠鏡を空に向け、赤く変化する月の様子をたっぷり楽しみました。
でも、もっと大きな望遠鏡で見てみたい!
ということで、天文台のある施設に出向き、星空の観望会に参加してきました。
天文台には、口径60センチ以上もある大きな望遠鏡が設置されていました。
ほかにも、ボランティアさんが用意した小型の望遠鏡や大型双眼鏡もありました。
大型望遠鏡では、火星や冬の一等星を観察しました。
大気のゆらぎで少しぼんやりしていましたが、目では点にしか見えない星たちが、しっかりと丸い形をしていることが分かりました。
火星の情熱的な赤色、一等星の煌めき。
ずっと昔に放った星々の光が、こうしていま私の目に届き、「美しい」と思わせてくれる。以前にも観望会に参加したことがありますが、いつも感動してしまいます。
ちなみに、火星は肉眼でもその赤さがよく分かります。今ごろは、20時前後に南の空高くにのぼっています。
同じ赤い星でも、うさぎ座にあるR星という星は異なる色をしていました。
火星はオレンジに近いような朱色っぽい色をしていますが、R星は「紅色」の字がしっくりくるような色でした。
薔薇の花びらを連想させる赤(紅)色で
星空にこんな綺麗な色があるんだ!
と見入っていました。
私の大好きな天体「すばる」にも、大型望遠鏡が向けられました。
ただ倍率が良すぎるため、星団全体を捉えることはできず、星団の一部の星に焦点を当てていました。
星団全体の、滲むような輝きを見られるのを期待していたので残念でしたが
覗いてみると、焦点を当てたその星の力いっぱい放つ白い光に魅了されました。
その星のまわりにも明るい星たちが散らばっていて、本当はひとつひとつがこんなにも輝いているのに、普段私たちの目にはその輝きのほんの一部しか映っていないということが惜しいくらいでした。
オリオン星雲にも、望遠鏡が向けられました。
オリオン座には「三ツ星」と呼ばれる、横に並んだ3つの星があります。
さらにその下には「小三ツ星」と呼ばれる、縦に並んだ3つの星があります。(街中でも見つけられる明るさです。)
そして「小三ツ星」の辺りにぼんやりとした星雲の姿があり、「オリオン星雲」や「オリオン大星雲」と呼ばれています。
大型望遠鏡で見ると、星々が青白い靄をまとっている様子が分かりました。
その靄に包まれるようにして輝く、とても明るい4つの星々。
ここはオリオン星雲の中心で、たくさんの赤ちゃん星が生まれている場所でした。
別名、“星のゆりかご”。
あぁ、美しい
肉眼や双眼鏡、そして私の持つ小さな望遠鏡では白っぽく滲んでいることしか判別できませんが、
実はこんな神秘的な姿をしていたのだと感動しました。
そして、今も新しい星々が生まれている。
遠い星雲に想いを馳せ、ただただその美しさを目に焼き付けました。
最後は大型双眼鏡で、いま話題になっている「ZTF(ズィーティーエフ)彗星」を見ました。
新聞やネットニュースなどで青緑色に光る彗星の写真をご覧になった方もいらっしゃるでしょうか。
(ちなみに望遠鏡は視野が狭まり、彗星を見つけるのは難しかったようです。)
地球に接近中のこの彗星は、来月の2月2日ごろに地球に最も近付き、離れたらもう二度と会えない彗星だそうです。
ボランティアさんが「一期一会の彗星です」と話していました。
どんな風に見えるのだろう、とワクワクしながら覗きました。
あれ、どこだろう?
彗星に向けられているはずの双眼鏡には、星が点々と映っているだけで、どこにもシュッと尾をなびかせる彗星の姿がありません。
実は、たとえ見えたとしても写真で見たようなはっきりとした姿を見ることはできず、暗くぼんやりとしたかたまりを捉えられれば良い方だということを聞いていました。
それを知った上で覗いても頭には「?」しか浮かばないほど、見えない......。
何となく、ぼやぁと白っぽいような見間違いのような小さなかたまりが見え、
「もしかして、これですか?」
とボランティアさんに尋ねると
「たぶんそれです」
とのお返事が。
(今回は大型双眼鏡ですが)よほど性能の良い望遠鏡と、よほど条件の良い暗い空でなければ彗星の姿を捉えることはできないのだと、天体観察の厳しさを感じました。
でも、一期一会の彗星をこの目で見られたことは確かです。それが嬉しくて、今回の観望会でいちばんの収穫でした。
寒空の下、体は冷えていましたが、心は星々に灯されてあたたかい夜でした。
2023.01.31 朝方