ある女の復讐劇
1519年 ユカタン半島に『エルナン・コルテス』という男が600人程のコンキスタドールと呼ばれるスペイン人を従え、上陸した。
当時栄華を誇っていたアステカ帝国を征服しようとしたのだ。
1521年コルテスの手により、アステカ帝国の首都テノチティトランが陥落し、アステカ帝国は滅んだ。
少数精鋭だったコルテスがアステカ帝国を征服出来た理由は大きく2つある。
1つは当時アステカ帝国では天然痘によるパンデミックが起こっていた事。
もう一つはマリンチェという女性。
彼女はコルテスの側室であり、軍の参謀でもあった。
彼女は様々な言語を話す事ができ、周囲の民族やアステカ帝国に不満を持つアステカ人を説得し、味方につけた。
コルテスの軍はマリンチェにより強大になった。
それにより、アステカ帝国は滅んだ。
時を少し遡る。
1502年1人の娘が生まれる。
父はアステカ帝国のパイナラという街の王だった。
その娘は姫として育てられた。
しかし、父の死後別の男と再婚した実母はその娘の事を疎ましく思い、隣国のタバスコへ奴隷として売り飛ばした。
実の母に売られ、国からも追放されたその娘は、
『母とこの国には必ず報いを受けさせる』
と心に誓った。
その娘は生まれ持った美貌で、タバスコの王のお気に入りになった。
その娘はタバスコでの屈辱に耐えながら虎視眈々とアステカ帝国への復讐を目論んでいた。
そこに1人の男が現れた。
その男はアステカ帝国を征服しようとしていた。
その男を恐れたタバスコの王は数人の奴隷を献上した。
その奴隷の中にその娘も含まれていた。
その娘はその男の冷徹さと残虐さを見て、自分が求めていた男だと確信した。
その娘は男に取り入り、持ち前の美貌と語学の才で側室兼参謀にまで登り詰めた。
時を戻す。
焼け焦げたアステカ帝国。
無数に転がるアステカ人の亡骸。
その娘は街の中を歩く。
一通り街を歩くとかつて母だった亡骸の前で立ち止まり、その娘は静かに笑った。
その娘の名は『マリンチェ』
これは、国を滅ぼした女の復讐劇。