◆では経済は死んでいないのか?
で、もう一つの問題、「経済」です。
現在の若者は「経済」に関して不信感を持っている、と私はさっき書きました。
ここまで読まれた方には、「科学が信頼をなくしたのは分かる。しかし、経済は違うのでは? たとえば女子高生売春などの事件を考えると、若い世代は、より拝金主義になってるといえるはずだ」と考えた人も、多いのではないでしょうか。
しかし私は、こう考えます。
もし女子高生を含む今の若者たちが本当に拝金主義ならば、彼らの就職、結婚の対象は、もっと経済的に有利な方向へ向くはずだ。
が、現実は違います。
今の学生は、より給料が高い企業、より安定した企業を就職活動の第一条件にはしていません。もちろん、最低これだけの給料は欲しいという希望はあるでしょう。今にも潰れそうな会社に好き好んで入ろうという奇特な人もいません。
しかし同時に「おもしろいことをしている企業か」「自分におもしろいことをさせてくれる企業か」「自分にとってプラスになる経験ができ、ネットワークができるのか」といった判断材料の方が大きなウエートを占めているのです。
給料がたくさんもらえるとか、退職金が多いというのは、決定的な判断材料にはならないのです。
一般的にいわれている「現代の若者像」はウソなのです。
おまけに彼らは、あまり就職したがりません。
昔は、大学を卒業したら、すぐにきちんと会社に就職するのが当たり前でした。
(前にも触れましたが、私か子供のころ、小学生に対するインタビューで「将来の希望は?」という質問がありました。断然一位はサラリーマン、でした。当時の評論家たちは夢がない、なんて言ってたけど、逆ですよね。経済に対して一般的に信頼感のある時代は、子供はサラリーマンになりたがる。軍事に対して信頼感があれば、子供は軍人になりたがるのです。今の子供は「何にもなりたがっていない」だけなのです)
就職しないのは学生生活を続けられないドロップアウト組と呼ばれる、どうしようもない連中、とされていました。
しかし今や、大学院へ進む学生は急増しています。
また、大学を卒業してからもう一度、他の大学や専門学校に入り直す学生も珍しくありません。マスコミは「モラトリアム現象」と騒ぎますが、彼らは口をそろえて「もっと勉強したい」と言います。たとえ就職しても、時間の余裕のある仕事に就いて勉強は続けたい、と考えているのです。
これを見て「ずっと遊んでいたいだけ。学生気分が抜けていない」「責任ある大人になるのがイヤなオタク世代」と、頭の悪い評論家たちは批判したりします。
本当にそれだけなんでしょうか。
一流大学生も、フリーターも、専門学校生も、みんな口をそろえて言うこの現象を、そんな決まり文句で断ずるには無理がありますよね。
「ちゃんと就職すること」「きちんと働いて稼ぐこと」「この経済システムの中に所属すること」という価値観がすっかり崩れている。この「価値観の変化」をきちんと見なければ、何も論じられるはずがないのです。
で、もう一度戻って、だから女子高生はパンツを売るのです。
きちんと働く、という価値観なしに経済を見ると「とにかく最小労力で最大利益を上げること」が唯一の回答なのだから。
「科学」に対しての「科学や合理主義は、私たちを幸せにする」という価値観が崩れたから、科学は信頼を失った。
同じように「経済」も、その内部に「一生懸命働くことが、みんなの幸せにつながる」という価値観を含んでいないと、信頼を失ってしまうのです。
すなわち、「お金は私たちを幸福にしてくれない」と。
支援していただけるなんてチョー嬉しいんですけど^^笑