アメリカを透かして見えるもの〜外で食べる。外で弾く
アメリカで暮らす中で楽しくなり当たり前になってしまって、日本に戻ってからなかなかできなくて残念なことがあります。
それは「外で食べる・外で弾く」ということです。
どういうことかと言うと、アメリカにいた時はライブなど予定が何もない日に家で過ごしていると、何となくふらりと庭先に出てコーヒーやお茶を飲んだり、ギターを持ってポロポロ弾いたりしていました。そうする理由や動機があったわけでもなく自然にそうなりました。それはもちろん街の住宅事情によるのだと思いますが、僕らが最初に下宿していた家にはポーチという広いベランダのような場所がありました。アメリカの多くの街に行ったわけではないので詳しくはわかりませんが、割と一般的なスタイルなのかなと思います。映画なんかでもよくある景色です。そこでみんな椅子にのんびり座ってぼんやりしたり、向かいの人と話したり。どこに行っても庭や庭先でくつろぐ様は目にしましたし、自分たちもそうしていました。これがとても良い時間でした。
朝起きてご飯を食べて仕事して、午後から夕方くらいにかけて外に出てコーヒーを飲みながら喋ったりギター弾いたり。そのままそこで軽食を食べたり。いい気持ちでした。僕らがいたバッファローは程よく自然があったりするので、鳥が飛んできたり目の前をリスが走っていたりしました。夏場は日がとても長いことも要因だったのかも知れません。夜の8時くらいになっても外で過ごせるくらい明るい時もありました。秋が深まるととても寒くなるので、なかなか外でそんな風に過ごすことはできませんが春から夏の間の楽しみとして、外で飲んだり食べたり弾いたりしていました。その時間を楽しむためにクオリティの高いアウトドア用の椅子を買おうかと迷ったこともありました。そのくらい楽しい時間でした。
外でギターを弾くこともアコギくらいなら全く問題ありませんでした。大家さんからはさすがにフルセットでの演奏はしないでねーなんて言われましたが、パーティーの時は庭先でドラムセットと音量を抑えたアンプでバンドとしてライブをしたこともありました。音楽には寛容なのです。
そうした日常の過ごし方を知ってしまうと、日本に戻ってからもそれをやりたくなってしまいます。しかし帰国してから住んでいるのは集合住宅ばかりです。アメリカのようにはいきません。ベランダでギターなど弾いたらすぐに苦情が来てしまうでしょう。帰国して家が決まってすぐ買ったのはキャンピングチェアでした(笑)
せめて少しでもアメリカの時のような楽しい過ごし方をしたかったのです。今でも休日の昼間は狭いベランダでコーヒーを飲んだり、外で歯を磨いたりしてささやかにそんな気分を味わっています。だいぶスケールは小さくなりましたが。
思えば僕の実家は北海道で、子どもの頃には日曜日に庭先でジンギスカンをしたこともありました。でも子どもの頃の記憶とアメリカでの記憶はだいぶ隔たりがあります。子どもの頃に自由に庭でコーヒーなんて飲みませんし。人口密度の高い首都圏では外で食べたり飲んだり弾いたりなんて難しい。外でコーヒーを飲む時はテラス席や外の席を選ぶようになりましたが、人が多かったり騒がしかったりして、あまり落ち着きません。家で過ごしている時にのんびり外に出る、というのが良かったんだよな、と思います。
僕が今とにかく目指しているのは、外で食べたり飲んだり弾いたり出来る場所と家に住むことです。のんびり・ぼんやり過ごせることの豊かさを知ってしまったのです。その実現に向かって日々邁進しているというわけです。