なつがおわる。
夏が終わる。と言うことにする。何もかもが、ただ順調に歩んでいるのなら、そこからこぼれて行くものも必然だったのだろう。と思いながら、窓を閉める。
たった一杯のコーヒーを淹れる。ために、生きていたい。それがなくても毎日は、特に変調もきたさないけれども。換気扇は、一度も掃除をされたことがないままもう、何年も旋回している。私の声を、廊下に静かに漏らして。
ふたり、で暮らす。わたしと、私と。でも死んだ時、見付かるのは私一人だろう。わたしは、どこかに行ってしまって見付からないだろう。私は、わたしのためにお墓を用意してあげなければならない。私がいなくなった後に、わたしが帰れる場所を。そしてまたどこかに、ふらりと出掛けられるように。
なつがおわる。それだけで、さびしい。