ひだりてになる頃。
わたしの手を切って、流れて行った。花の色を覚えていない。わたしの手を切って、切れた側から咲いて行った。この花の色はまだ透明で、味がしない。
ふっかつというじゅもんをすてる。
公園でわたしは火をつけた。誰もいなかったから、誰も目撃していない。最近、新しくなったカラフルなジャングルジムと滑り台と鉄棒に火をつけた。お砂場にも投げ入れ、ちろちろと燃え出す散らばった花びらを見ていた。木にも、つけようと思ったが辞めた。木は、何も悪くない。そこにいただけだ。
知らない方へ行く。ために、捨てて行く。切れた側から花が咲いて、川が出来て、向こう岸に渡ってしまうから、振り返ると妙に美しく見える。足元にはまだ、生ぬるく火がくすぶって煙を上げているけれども、熱くはない。素足で踏んで、ぐっぐっぐっと深く押し付けると、無口に消えた。馬鹿にしたんだろう。腹の底から低い声でそう響いて、思い掛けないそれに驚いた次の瞬間には、それが空腹から鳴ったものか分からなくなってしまった。切れた口から、だらしなく花が垂れ落ちる。まだ、垂れ落ちている。
暗号だったか信号だったか心臓だったよねでもそれはみんな消えた。最後の審判など信じない。誰も気付かないが、わたしの左手には幾つものあとがある。知ってどうするの? また川を渡るの。