【名盤チェック】#7 Radiohead: In Rainbows (2007)
どうも、yuzuramenですよ。
タイトル通り名盤を一つ一つ聴きながらレビューし、自分の中の音楽の価値観を広げていこうという企画です。
聴くアルバムの基準ですが、かれこれ5年以上視聴している「み○ミュージック」様のアルバムランキングを参考に、邦・洋楽問わずトップ50辺りに入っているものを適当に選びます。その中でも、僕が今までマニアになったアーティストが好んで聴いていたものを選ぶ傾向にあると思うので、ご了承を。
7回目は再度の登場となるRadioheadの「In Rainbows (2007)」でございます。
いろいろ概要
決して第1回でボロクソに言ったRadioheadをまたこき下ろす記事ではないですよ。この記事を出してからの5ヶ月間、10周以上OK Computerを聞いていたら突然その魅力の沼にどっぷりと嵌まり、今では洋楽の中でもトップクラスの大好物になりました。後世のレディへのアルバムに比べたら相当メロディ的に優れてるし、あんな完璧なギターロックアルバム無いですよ。ファンの皆様、あの時は突発的な感情であんな文書いてしまってすみません。
その記事と現在は全く対照的な感想を持っているので消すことも一時は考えましたが、自分の稚拙な過去の価値観は見返すと面白いので取っておきます。
そして無事にOK Computerを克服した後に他のアルバムも全て聴き、その過程でKid A以降では一番好きだと自認するに至ったIn Rainbowsを今回はレビューします。割と褒めまくるので長くなると思いますが御付き合いいただきたく。
アルバム全体の感想
当時何回集中して聴いても???だったオケコンとは違い、今作は初聴から割と好印象でした。今では本当に聴いてて心地が良い大名盤だと思っています。
Rate Your Musicのオールタイムランキングでオケコンに次ぐ歴代3位の位置につけているのも大いに納得です。
ここでまたファンの皆様に喧嘩売るのもなんですが、自分Kid A全然好きじゃないんですよね。1~4曲目の流れは傑作だと思いますが、後半は取り敢えず電子音でビート作って大したメロディも無いのに何だか変な方向に盛り上げようとしている…て感じで正直全く優れていると思ったことはありません(Idiotequeも何が良いのかさっぱり…)。それに急にギター手放しすぎという点はやはり見過ごせず、電子音と奇妙なSEに頼り過ぎて元のバンドグルーヴの良さまで完全に打ち消しているのが受け付けなかったです。
それに比べ、In Rainbowsはとにかくバンドサウンドと電子音のバランスが素晴らしい。HTTTで鳴りを少し潜めたピコピコ音は完全に消え、今作ではほんの2曲で電子音が土台のリズムを刻むに過ぎず、基本的には生のドラムがビートを築いているのが嬉しい。他でいうPulk/Pull Revolving DoorsとかThe Gloamingのように押し付けがましい電子音だらけでメロディが存在しないような曲が無いのも好印象です。
そしてほぼ全ての曲でエレキギターが大半の伴奏を担当しています。決してオケコンのようなハードな使い方ではないですが、NudeやReckonerのように柔らかな音で美しく曲を彩る楽器として入っているのが斬新で素敵でした。その他度々入るパーカッションとかクワイアのSEなど、装飾の何もかもが今作ではより幻想的な良い方向に作用しています。サウンド作りは聴いたことも無いほど緻密で、音の隙間を一切生むこと無く、控えめに言って完璧。
レディへが現代音楽を経由して辿り着いた先が本作のサウンドというのが何とも言えない感慨深さがありますよね(何様だよ)。
曲単位で語りたいことも山程ありますので、この辺で移ります。
曲ごとの感想
感想に移りますが、サウンドの世界観の一貫性が強いゆえ同じような普遍的なコメントしか綴れませんでした、申し訳ありません。この文章だけじゃ魅力の1割も伝わらないかと自分の力量に項垂れているので、もう音源手に取って何回もリピートしてください、聴く方が魅力を発見するのが早いと思いますよ。
1) 15 Step
5/4拍子の特徴的な電子のビートで始まり、その後は2+2=5のように激しいロックが展開されるかと思いきや、丁寧なギターと優しいトムのボーカルと共にゆったり目で進むギャップがとても良いですね。初めて聴いた時から本作の掴みとしてこれ以上の曲は無いと気に入りました。歌い出しの"How come I~"は時々つい口ずさんでしまいます。
(このFrom The Basementと呼ばれるスタジオライブは全曲素晴らしい生演奏が披露されているので是非フルで視聴してみてください)
2) Bodysnatchers
(実はトムが弾く)歪んだカッティングのリフが切り込み始まるのは、前作までなら考えられないような純粋なハードロック。OK Computer以前でもおかしくないアレンジですが、昔とは違うエフェクトが使われており、ジョニーはバックの幻想的な音像の表現に徹しているのがミソ。全体的にあまり大きなコードの変化も無く比較的淡々と進んでいきますが、骨となるギターリフが格好良すぎるのでそれだけでもう満点です。どの間奏も全く無駄が無い、まさに大好きな曲ですね。
3) Nude
一転して繊細なスローバラードへ。コリンのベースと低音ギターの交わりがとても心地よい感触を与えてくれる、最上級のメロウな曲です。決して音数もトムのボーカルも多くないですが、終始響き渡るコーラスがとても素晴らしくて好きなんですよね。
4) Weird Fishes/ Arpeggi
疾走感に溢れるフィルの無機質なドラムから始まるのは、名の通りジョニーとエドの弾く(途中からトムも入る)2種類の柔らかいアルペジオが全編で冴え渡る静かなスピード?ナンバー。とにかくギターの音のコンビネーションが素晴らしくそれだけで曲が成り立ってしまっていますね。メトロノームのように淡々とビートを刻み続けるフィルの音も大好きです。
5) All I Need
低音のストリングスとグロッケンが目立つ暗めな雰囲気のローテンポの曲ですが、正直今でもあまり印象がありません。主軸のメロディがどうも刺さらなかったんですよね、別にキャッチーであれば良いという訳ではないですが。アウトロのトムの叫びだけは好きです。
6) Faust Arp
弾き語りの小品。飛び抜けた特徴はありませんが、寂しめのイントロから少し光に向かっていくようなストリングスのメロディが結構好みです。前半から後半への繋ぎとしてはこの上ないと思います。
7) Reckoner
同意見は多いと思われますがこのアルバム一番の大好物です。もうイントロのタンバリンとドラムが同時進行するリズムの絡みから引き込まれますよね。そしてこの軽快なリズムと裏腹にサウンドを包むのはこれまで同様非常に繊細なギターと高音を駆使する幻想的なボーカルワークとギャップが凄まじい。途中で電子ピアノの透明感一杯のコードもギターに併せて挿入されるのが更に深みを感じさせる点でもあります。
本曲でもストリングスが押し出されていますが、個人的にこの曲が一番好影響を与えていると思います。特に打楽器が一旦止まってトムのボーカルとのアンサンブル?になる場面など、目を閉じずとも壮大な景色が目の前に広がって見えるようです。
(個人的にジョニーのレモンの振り方の豪快さがツボ)
8) House Of Cards
こちらもお気に入りです。今作も他曲と同様なスタイルを貫いているんですが、ギターリフとメロディは本アルバム屈指のシンプルさで曲調の変化が全く無いにも関わらず5分超えの曲として全く退屈を感じさせないのが不思議な魅力です。トムも普段に比べてとても音域を狭め、何の変哲もないトーンでメロディを歌っているのにリバーブの効かせ方が随一で上手く聴いてて全く飽きません。
9) Jigsaw Falling Into Place
久々のアップテンポのアコースティックナンバー。トムがかなり気怠く絶えず言葉を繋ぎ歌っているんですけれども、どうしても他の曲での絶妙な儚さを表現出来ているボーカルワークがとてつもなく好みなので、前半のパートが他に比べて劣ってしまうというか…。後半の音のスケールが広がる展開は割と良いんですが。
10) Videotape
有終の美を飾るに相応しいスローバラード。ピアノも勿論素晴らしいんですが、本曲での肝はリズムセクション。一歩踏み外せば曲が丸ごと崩れ去りそうな巧みで危ういタムの叩き方が、この曲に更なる終末感を与えています。最後までユニークさに欠かない本アルバムはまさに徹底されていて凄まじい。
まとめ
色々とっ散らかり結局同じような感想しか言ってないようにしか見えなくなってしまいましたが、ロックバンドが創った一つの作品としては愛おしいくらいに緻密で、その評価の異端な高さからもレディへが音楽界の雲の上の頂点に返り咲いた文句なしの名作と言えるでしょう。
まぁ総括して言うと、今作はレディへはこの路線が一番高みに達しているので変にテクノや気難しい現代音楽なんて試さずいたら良かったのではと思ってしまう理由の一つです。100年後も放棄されず聴いていそうなそんなアルバムでした。
評価: ★★★★★
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