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Vol.10 メタバースの住人こそ、筋トレを! - 仮想と現実、二つの世界で健康に生きるために

「やっぱり筋トレが大切」。

このタイトルを目にした人は、もしかしたら「脳筋」の戯言と思うかもしれない。しかし、あえて言おう。やっぱり、そうなんじゃないか、と。

私は、メタバースの世界、特にVRChatに足を踏み入れて、3年になる。現実世界での運動習慣は、いつしか、VR空間での活動に置き換わっていった。毎晩のようにVRゴーグルを装着し、アバターの姿で、友人たちと語らい、遊ぶ。その時間は、確かに楽しく、充実していた。しかし、その代償として、私の身体は、確実に蝕まれていったのだ。

VRChatに没頭する生活は、必然的に、運動不足を招く。私の場合、中学、高校と、少林寺拳法部で汗を流し、厳しい練習にも耐え抜いてきた。精神的に不安定になることは、ほとんどなかった。もちろん、つらいこともあったが、それを乗り越えるだけの気力と体力が、当時の私には備わっていた。

しかし、VRChatを始めて1年余りが過ぎた頃、私は、かつてないほどの精神的な不安定さを感じるようになっていた。ちょうどその時期は、会社を立ち上げ、様々な課題に直面していた時期とも重なる。しかし、それだけが原因ではないと、今なら断言できる。生活習慣の乱れ、体重の増加、そして、それに伴う運動不足と筋力低下、睡眠不足。それらが複合的に作用し、私の心身のバランスを、確実に崩していたのだ。

このままではいけない。そう感じた私は、昨年の後半から、生活習慣の改善に着手した。まず、朝8時には起床し、夜は12時半までに就寝する、規則正しい生活リズムを取り戻した。そして、週に1、2回、ジムに通い、筋トレとランニングを始めたのだ。また、増えすぎた食欲を抑えるために、医師の指導のもと、食欲抑制剤の服用も開始した。

その結果、半年で10kgの減量に成功した。目標体重まで、あと10kg。道のりはまだ半ばだが、それでも、身体が軽くなり、以前よりも格段に体力がついたことを、はっきりと実感している。

そして、何よりも嬉しい変化は、精神面の改善だ。まるで、霧が晴れたかのように、心が軽くなり、以前のような活力、そして、前向きな気持ちを取り戻すことができたのだ。

実際、運動がメンタルヘルスに好影響を与えることは、多くの研究で示されている。例えば、定期的な運動は、うつ病の予防や、症状の改善に効果があることが報告されている。また、運動によって、脳内のエンドルフィンやセロトニンといった、神経伝達物質の分泌が促進され、幸福感やリラックス効果が得られることも、明らかになっている。

さらに、2023年11月には、厚生労働省の専門家検討会が、健康づくりのための身体活動・運動の目安となるガイドライン案をまとめた。実に10年ぶりの改訂となるこのガイドラインでは、成人に対しては「1日60分以上の歩行、またはそれと同程度の身体活動」を、そして、高齢者に対しては「1日40分以上の歩行またはそれと同程度の身体活動」を推奨している。さらに、筋力トレーニングについては、成人・高齢者ともに「週2~3回」の実施が推奨されている。このガイドラインでは、歩行やランニングだけでなく、卓球、テニス、水泳などのスポーツ、さらには階段昇降や風呂掃除といった日常生活における身体活動も例示されており、運動の重要性が強調されている

さらに驚いたのは、私の妻の変化だ。私がジムに通い始めた当初は、乗り気ではなかった妻だが、珍しく「一緒に行ってみようかな」と言い出し、今では、欠かさず一緒にジムに通っている。かつては、筋トレなど全く縁のなかった妻が、今では、積極的にトレーニングに励んでいるのだ。

妻は以前、精神的に不安定な時期があり、気分の落ち込みに悩まされることも多かった。しかし、筋トレを始めてからというもの、そういった症状は、ほとんど見られなくなった。それどころか、以前よりも、ずっとエネルギッシュで、活動的になったように感じる。

もちろん、VRChat内でも、運動や筋トレをすることは可能だ。なので、VRChat、現実問わず筋トレをする習慣をつけてほしい。それは、単に身体を鍛えるだけでなく、心の健康を維持し、高めるためにも、非常に重要なのだ。

ついつい忘れがちだが、私たちの心と身体は、密接に繋がっている。身体を動かすことは、メンタルを鍛えるための、最もシンプルで、最も効果的な方法、いわば「近道」なのかもしれない。

メタバースの世界で生きる私たちこそ、現実世界の身体を、そして心を、大切にしなければならない。仮想と現実、二つの世界で健康的に生きるために、今日からあなたも、筋トレを始めてみませんか?

参考文献

・Cooney, G. M., Dwan, K., Greig, C. A., Lawlor, D. A., Rimer, J., Waugh, F. R., ... & Mead, G. E. (2013). Exercise for depression. Cochrane Database of Systematic Reviews, (9).  

・Dishman, R. K., Berthoud, H. R., Booth, F. W., Cotman, C. W., Edgerton, V. R., Fleshner, M. R., ... & Zigmond, M. J. (2006). Neurobiology of exercise. Obesity, 14(3), 345-356.  



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