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Vol.9 メタバースは高齢者にこそ優しい? -高齢者とデジタルの架け橋
今なお、巷で話題のメタバース。様々な調査レポートやメディア記事を見ても、その利用者層は10代から30代の若者が中心であり、新しいコミュニケーションの形として、若者文化に深く浸透しつつあることは明らかだ。
しかし、私は、ふと思うのだ。実は、メタバースは高齢者にとってこそ、優しい空間になり得るのではないか、と。
なぜなら、メタバースは、現実世界のコミュニケーションに、非常に近い形で設計されているからだ。
考えてみてほしい。現代の高齢者にとって、一般的に普及しているSNSは、あまりにも難解ではないだろうか? タイムライン、ポスト、リポスト、引用リポスト… 新しい概念が次々と登場し、その仕組みを理解するだけでも一苦労だ。
一方、メタバースでは、空間の中を自由に移動し、目の前にいる人と、面と向かって話すことができる。人型のアバターは、表情や身振り手振りで感情を伝え、まるで現実世界で会話をしているかのような感覚を味わえる。つまり、メタバースは、私たちが長年慣れ親しんできた、最も自然なコミュニケーションの形を、デジタル空間に再現したものと言えるのだ。
SNSのように、小さなアイコンが並び、広告とユーザー投稿が混在する、情報の濁流とも言えるタイムラインを、高齢者が使いこなすのは、容易ではない。しかし、メタバースであれば、目の前に広がる空間、そして、そこに佇むアバターを通じて、直感的に、そしてスムーズに、コミュニケーションを楽しむことができるはずだ。
私は、そこに、大きな可能性を感じている。では、なぜ、現状、多くの高齢者がメタバースを利用していないのか? 答えは簡単だ。メタバースにアクセスするまでのハードルが、あまりにも高すぎるのだ。
例えば、現在最も普及しているMeta Questを例に取ってみよう。まず、前提としてFacebookのアカウント、Metaアカウントが必要だ。それも、実名での登録が推奨されている。年齢制限が設定されているため、高齢者の家族がアカウントを作成しなくてはならないケースも考えられる。取得したMetaアカウントで、スマートフォンに専用アプリをインストール。その後、ヘッドセットを起動し、アプリストアから必要なアプリをダウンロード・インストール。そしてようやく、各アプリのアカウントを作成し、初期設定を行う…この煩雑なプロセスは、デジタルネイティブ世代でさえ、辟易することがある。高齢者にとっては、まさに「高い壁」と言えるだろう。
高齢者を含む誰もが簡単にメタバースにアクセスするためには、デバイスも、利用開始までの手順も、抜本的に見直す必要がある。
理想を言えば、VRゴーグルを購入したら、箱から出して装着するだけで、すぐにメタバース空間に入れるようになるべきだ。インターネット接続は、5Gなどのモバイル回線で自動的に行われ、アカウント登録も、指紋や虹彩などの生体認証で完了する。
もちろん、コントローラーは不要だ。手の動きや、視線、声などを使って、現実世界と同じように、直感的に操作できる。
そんな、誰にとっても「優しい」テクノロジーが実現すれば、メタバースは、高齢者にとって、孤独を癒し、新たな生きがいを見つけるための、希望の場所となるかもしれない。
年齢を重ねると、若い頃のように自由に出歩くことが難しくなる。遠方に住む家族や友人と、気軽に会うこともできない。しかし、メタバースなら、時間や場所の制約を超え、いつでも、どこでも、誰とでも、繋がることができる。
メタバースで再会した旧友と、思い出話に花を咲かせる。離れて暮らす孫と、一緒にゲームを楽しむ。趣味のサークルに参加し、新しい仲間と出会う。そんな、生き生きとしたシニアライフが、メタバースによって実現するかもしれないのだ。
もちろん、まだ課題は山積みだ。しかし、私は、メタバースが高齢者にとっての「優しい世界」となる未来を、諦めたくない。その実現に向けて、私自身、微力ながら貢献していきたいと、強く願っている。