Vol.7 メタバースの世界を、肌で感じる - エスノグラフィ的アプローチのすすめ
私は、昔から、自分が良いと思ったものを、他の人にも広めずにはいられない性分だ。お気に入りのガジェット、美味しい食べ物、とっておきの場所、そして、生活をちょっと便利にする裏技…。それらを熱心に語る私の姿は、周囲の人々から見れば、さぞかし「限界オタク」のように映っていることだろう。
しかし、どんなに熱を込めて語ったところで、相手が実際に体験してみなければ、その真価は伝わらない。どんなに美しい景色も、写真や映像だけでは、その場に身を置いた時の感動には敵わない。だからこそ、私は、常々「体験」の重要性を、強く感じてきた。
メタバースの世界に飛び込んで、3年。この間、私は、様々な場所で「メタバース体験会」を開催してきた。参加者にVRヘッドセットを装着してもらい、実際にメタバースの世界を体験してもらうのだ。そして、体験会を通じて、改めて確信したことがある。それは、「百聞は一見に如かず」ということだ。
どれだけ言葉を尽くしてメタバースの魅力を語ったところで、実際に体験してみなければ、その真髄は理解できない。しかし、一度でもVRヘッドセットを装着し、メタバースの世界に身を置けば、皆、口を揃えてこう言う。「思っていた以上だった」「これは、すごい」と。
それにもかかわらず、「メタバースで事業をしたい」「不登校支援に活用したい」と口にする人々の中に、実際にメタバースプラットフォームに日常的に身を置いている人が、驚くほど少ないことに、私は大きな違和感を覚えている。
例えば今、盛り上がりを見せているVRChat、Cluster、そしてResonite。これらのプラットフォームは、Zoomなどのビデオ会議ツールとは、全く異なる世界だ。そこには、ユーザーが創造した無数のアバターが存在し、ユーザー主催のイベントが日々開催され、独自の文化が形成されている。しかし、こうした「文化的な側面」について話すと、多くの人が驚きの表情を浮かべる。彼らは、メタバースを、単なる「ツール」の一つとしてしか、捉えていないのだ。
もし、あなたが、ビジネス、教育、福祉など、何らかの目的を持ってメタバースに関わろうとしているのなら、ぜひ、自らその世界に飛び込んでみてほしい。傍観者ではなく、当事者として、その世界を体験してみてほしいのだ。
学術の世界には、「エスノグラフィ(ethnography)」という研究手法がある。これは、特定の集団やコミュニティの中に長期間身を置き、彼らの生活や文化を、参与観察やインタビューなどを通じて、詳細に記録・分析する手法だ。元々は文化人類学の分野で発展してきた手法だが、近年では、ビジネスやデザインの分野でも、ユーザー理解を深めるための有効な手段として注目されている。
エスノグラフィでは、調査対象となる人々の生活の中に深く入り込み、共に時間を過ごすことが重要とされる。そうすることで、表面的な観察だけでは捉えきれない、人々の行動原理や価値観を、より深く理解することができるのだ。
これは、メタバースの世界を理解する上でも、非常に有効なアプローチだと、私は考えている。つまり、「メタバースエスノグラフィ」だ。事業者、研究者、そして、メタバースに少しでも興味を持っている全ての人々に、私は「メタバースエスノグラフィ」を実践することを強く推奨したい。
私自身、VRChatの初心者案内を、半ば趣味のように行っている。新たにメタバースの世界に飛び込もうとする人々をサポートすることに、大きな喜びを感じているのだ。もし、あなたが「メタバースの世界を体験してみたい」と思っているなら、ぜひ、私に声をかけてほしい。VRヘッドセットとパソコンの準備さえあれば、いつでも、あなたのメタバースへの第一歩を、全力でサポートさせていただく。
さあ、あなたも、私と一緒に、メタバースの世界を、肌で感じてみませんか?