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Vol.19「会う前」から始まる、メタバースの第一印象 - 見た目、名前、SNS… 全てがメッセージ

はじめに


「第一印象はとても大切」
というのは、現実世界では誰もが感じていることだ。一説には「最初の印象が半年続く」といわれることもある(厳密な学術データというより経験則に近いかもしれないが)。心理学の研究でも、ほんの数秒の接触で形づくられた印象が、その後の評価に強く影響すると示唆されている。

では、メタバース上ではどうなのだろうか。
アバターの見た目や名前を自由に変えられる分、第一印象を意図的に操作できるのがメタバースの特徴とも言える。しかし、その自由ゆえに「期待しすぎて知るほどギャップが大きくなる」など、新たな問題も生じやすいと感じる人は少なくない。

今回は、私やフレンド数人の意見をもとに、「メタバース上の第一印象」について考えてみたい。具体的には「見た目」「名前」「プロフィール(自己紹介欄)」「SNS連携」といった、“会う前からでも分かる情報”が相手に与える影響と、実際に会って話す段階で見える要素を取り上げてみる。


1.見た目という“制約のない”第一印象

1-1. 自由すぎるアバターのメリット・デメリット

現実世界であれば、顔や体型などはそう簡単に変えられない。しかし、メタバースではアバターを自在に設定できるため、見た目による第一印象を大幅に操作できる。可愛らしい美少女アバターから、動物系のデフォルメアバターまで、バリエーションは無数に存在する。

  • 「かわいいアバターを使っている人は話しかけやすい」
    私自身もフレンドに聞いてみたところ、やはりデフォルメ感のあるアバター美少女アバターは、柔らかい印象を与えやすいとの声が多かった。

  • 逆に、リアルすぎるアバターやロボット系などは取っつきにくいと感じる人が一定数いるようだ。もっと言えば、デフォルトのロボットアバターのままだと、初心者らしさも相まって「どんな人かイメージしにくい」という意見もあった。

こうした好みが強く働くため、相手が使うアバターによって 「勝手に期待しすぎて、知るほどギャップが大きくなる」 こともある。もちろん、そういった理想やイメージを押し付けられる側からすれば迷惑かもしれないが、メタバースに慣れていないと、意外と「見た目=その人のキャラクター」と思いこんでしまうのだ。

1-2. 著作権やモラルの問題

メタバース上でのアバター選びは自由度が高いが、リッピングアバター版権物の無断改変など、著作権やモラルに反する行為は印象を悪くする。

  • 「あのアニメ作品のキャラそのまま」のアバターを堂々と使う人もいるが、違法リッピングの可能性が高い場合、「この人とはあまり関わりたくない」と思われるかもしれない。

  • ネタアバターや極端に下品なアバターも好き嫌いが分かれやすく、第一印象を悪くしやすいとの意見が私の周りでも多かった。

アバターは、ある意味で“その人が公に見せたい姿”を象徴する。だからこそ、アバターの選択には、それなりに慎重になったほうが良いかもしれない。


2.名前の意外なインパクト

2-1. ハンドルネームが全ての入口

メタバースでは「名前(ハンドルネーム)」が第一接触の窓口になる。

  • 「ぴーなっつ_523」「オレンジ39」「ふりかけ@…」など、ポップな名前だと、初対面でも話しかけやすい印象を受ける。

  • 「水瀬ゆず」のように姓+名っぽいVTuber風の名義も、やはり見慣れている人が多く、好意的に受け止められやすいようだ。

一方で、他人を中傷するような表現卑猥・暴力的な要素を含む名前は、どうしても敬遠されがちである。

  • たとえば「APEX最強まじ卍」「クソゴミ人間3号」「ヤリモク@命懸け」など、ネガティブ or 過激すぎるHNには近寄りづらさを感じる人も多い。

  • これは私個人の体験と、周囲のフレンド数人からの意見を総合したものだが、「名前=一番最初に目に入る情報」という点は現実とまったく変わらないのだ。


3.プロフィール欄が語るもの

3-1. 「書いていない」のも情報のうち

多くのメタバースプラットフォームでは、ユーザープロフィール欄に自由に自己紹介を書ける。

  • 何も書いていない場合は、「始めたばかりの初心者さん?」「設定するのが面倒なのかも?」と推測されることが多い。

  • また、あえてプロフィールを埋めない人もいるが、その場合は「プライベートをあまり開示したくない」あるいは「印象を持たれたくない or めんどくさがりかも?」という印象を周囲に与えうる。

3-2. 丁寧に書き込む人はどう思われる?

  • 逆に、やたらと詳しく書いている人は、「マメな性格」「フレンドリーに交流を求めている」という印象がある。

  • 「撫でる行為は苦手」「フレンド申請は一度会話してから」など、自分なりのルールやマナーを明示する人もいる。そこまで書かれていると、こちらとしては接しやすいし、お断り事項を知っておけるのはありがたい。

プロフィール欄の書き方や言葉遣いからは、年代や文化圏もある程度想像できる。「笑」を多用するのか「w」を使うのかなど、小さな表記ゆれが印象を左右することもある。こうした情報は、“会う前”からすでに相手をイメージする手がかりになっている。


4.SNSリンクから見える“もう一つの顔”

4-1. 多くのVRChatユーザーがTwitter(X)を利用?

VRChatをはじめ、多くのソーシャルVRユーザーはTwitter(X)などのSNSアカウントを連携していることが少なくない。

  • プロフィール欄にSNSリンクがあれば、そこから「どんなツイートをしているか」をチェックし、相手の人柄を垣間見る人も多いだろう。

  • ポジティブな発信が多いのか、やたらとネガティブなのか、RTばかりなのか――こうした点も第一印象の補強材料になる。

4-2. 鍵アカやビジネス活用アカウント

  • 鍵垢であれば、あまりオープンに公開する気がない人かもしれない。あるいは裏垢である可能性もある。

  • 本名・実名で運用しているアカウントなら、VRChatをビジネス利用しているタイプの人かもしれないし、現実とメタバースを積極的につなげようとしている場合もある。

どちらにせよ、「SNSリンクがある=相手の“もう一つの顔”を覗ける」という点であり、そこから得られる情報量は意外と大きい。


5.実際に会って話すフェーズへ

ここまでは、「インスタンスに入ってきた瞬間」や「会う前から分かる情報」を中心に見てきた。ここまででもわかる情報は沢山ある。しかし、メタバースでも結局、“直接会って話す”段階で分かることが格段に増える。

  • 声の印象:地声かボイスチェンジャーか、あるいはテキストチャットのみか。

  • ジェスチャーや仕草:アバターを動かす人は動かしまくるし、全く動かない人もいる。

  • コミュニケーションマナー:無言で近づく人や、いきなり体を触るようなモーションをしてくる人に戸惑うことも少なくない。

メタバースといっても、相手は生身の人間だ。見た目や名前が自由に変えられるからといって、実際のやり取り次第では第一印象がガラリと変わるし、それまでの期待が裏切られることもある。

なお、ここから先は現実でのコミュニケーションに近い要素が多いので、今回はあまり深く触れないが、“第一印象”が大事なのは現実でも仮想でも一緒だということを改めて感じる。


結論:メタバースだからこそ意識しておきたい“見られている”感覚

メタバース上の第一印象が重要なのは、「自由だからこそ余計に見られている」面があるからだと思う。

  • アバターは「自分が見せたい姿」「有りたい姿」であり、そこにモラルセンスが色濃く反映される。

  • 名前も自己表現の一部であり、内容次第で相手を遠ざけることもできる。

  • プロフィールやSNSリンクは、実はかなり多くの情報を与えている。相手がどんなツイートをしているか、どんな人柄かを事前に想像できてしまうからだ。

もちろん、かわいいアバターを使ったりポップな名前にしたりすれば必ず好印象とは限らないし、ギャップを感じさせすぎると相手が戸惑うケースもある。とはいえ、少なくとも「どう見られたいか」をある程度考えるだけで、メタバースでの交流はスムーズになりやすいのではないだろうか。

“会う前”からすでに始まっているのが、メタバースの第一印象である。現実世界のように「顔や体型を変えられない」わけでもなく、名前を変えるにも手間がかからない世界だからこそ、自由に試行錯誤して自分に合った見せ方を見つけてほしい。ほんの少し意識するだけで、あなたのメタバースライフがより楽しく、豊かなものになるかもしれない。


参考文献

  • Willis, J. & Todorov, A. (2006). First Impressions: Making Up Your Mind After a 100-Ms Exposure to a Face. Psychological Science, 17(7), 592–598.
    (※「数秒で印象が決まる」といった説を補足する研究。ただし、「半年続く」という具体的期間を示すわけではない)

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