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「キース・ヘリング展 アートをストリートへ」感想
先日ネットサーファインをしていたら見つけたキース・へリング展。
友達と行ってきた。
まだ一人では美術館へ行けないような小さな子どもたちにもぜひ見に行ってほしいと思った。
■キース・ヘリング展 アートをストリートへ※一部撮影可
会期:2023年12月9日(土)~2024年2月25日(日)
会場:森アーツセンターギャラリー(六本木ヒルズ森タワー52階)
開館時間:10:00-19:00
※金曜日・土曜日は20:00まで
住所:東京都港区六本木6丁目10−1
アクセス:https://art-view.roppongihills.com/common/download/info/index/TCV_access_JP160606re.pdf
展覧所要時間:1時間
URL:https://kh2023-25.exhibit.jp/
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ごあいさつ
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キース・ヘリングは「アートはみんなのために」という信念のもと、ニューヨークを中心に地下鉄やストリート、つまり日常にアートを拡散させ、誰もがアクセスできる機会を生み出しました。また、SNSが存在しない時代に、作品を通じて混沌とする社会への強いメッセージを発信することで、アートを通じた人々との対話という可能性を広げた先駆者のひとりと言えるでしょう。ヘリングが駆け抜けた31年間の生涯のうち、創作活動の期間は10年程ですが、シンプルで力強い筆致に特徴づけられる印象的な作品は今もなお世界中で愛され、様々なジャンルでコラボレーションを生み続けています。
本展は、ヘリングの名を馳せるきっかけとなった「サブウェイ・ドローイング」から6メートルに及ぶ大型作品、また日本とヘリングの特別な縁を示す大変貴重な資料まで、日本初公開を含む約150点が一堂に会するまたとない機会です。社会に潜む暴力や不平等、HIV・エイズに対する偏見と支援不足に対して最後まで闘い続けたヘリングのアートは、時空を超えて現代社会に生きる私たちの心をも揺さぶることでしょう。
キースヘリングのアートはTシャツの柄などでなんとなく見覚えがあったけれど、
誰が書いているのか、なんで有名なのか、どんな想いを込めて描いているのかはこれまで知らなかった。
明るく楽しいイメージがあったので社会に潜む不平等やHIVがテーマだったことに驚いた。
1.公共のアート
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1978年、20歳のヘリングは故郷のペンシルベニア州からニューヨークへ移ります。マンハッタンにあるスクール・オブ・ビジュアル・アーツに入学すると、絵画だけでなく映像やインスタレーションなど多様な美術表現を学びながらも、美術館やギャラリーといった限られた人が訪れる空間から、公共の場でアートを展開する方法を模索しました。なかでも、人種や階級、性別、職業に関係なく、もっとも多くの人が利用する地下鉄に着目。「ここに描けばあらゆる人が自分の作品を見てくれる」と考えたヘリングは、地下鉄駅構内の空いている広告板に貼られた黒い紙にチョークでドローイングをし始めました。シンプルに素早く描かれた光り輝く赤ん坊、吠える犬、光線を出す宇宙船など、生み出された数々のモチーフは多くのニューヨーカーの心と記憶に刷り込まれました。この「サブウェイ・ドローイング」と呼ばれるプロジェクトはインターネットやSNSが普及しない時代に、多くの人とのコミュニケーションを可能にし、誰もが分け隔てなくアートにアクセスすることができる画期的な手法だったのです。
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地下鉄の広告版に描いたアートからすべてが始まったことを初めて知った。
あらゆる階級のみんなに見てもらえるように地下鉄を選んだというところがNYらしい自由な感じでいいなと思った。日本だったら難しかったんじゃないかな。
サブウェイ・ドローイング
キース・ヘリングは1980-85年の約5年のあいだに、ニューヨークを中心とした地下鉄駅構内で作品を制作しました。いわゆる「サブウェイ・ドローイング」と呼ばれ、1日40点近く描かれたこともあったと言われています。
ヘリングは80年の終わり頃、空いた広告板に貼られた黒い光沢のない紙にチョークで描くアイデアが咄嗟にひらめき、すぐさま一番近くの文房具店に飛び込みチョークを買って描いたことがサブウェイ・ドローイングの始まりだと語っています。
アルバイト先への通勤途中に始められたドローイングは、多くの人の目に留まり、次第に地下鉄の乗客たちに声をかけられるようになります。
以来、作品を描くために空き広告板を見つけては描くということが制作における重要なプロジェクトになり、ほぼ日課のようになりました。そうしてヘリングは、シンプルなモチーフをリズミカルに素早く描く、という技に磨きをかけていったのです。
また、ヘリングは美術界から認められるよりも、時のグラフィティライターから認められたいという気持ちがあり、それが地下鉄の駅で制作した理由のひとつだったとも語っています。本展では、本邦初公開で特別出品されるニューヨークの個人コレクターによる所蔵作品5点を含む7点を展示しています。
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動物が人間に祭り上げられているという皮肉。
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アメリカが戦争をすればするほどお金がなくなり、人が亡くなるということを描いている?
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キースへリングのアートでよくみる動物はこのころからあったんだなあ。
2.生と迷路
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生と迷路
1980年代当時のニューヨークは、ペンシルベニア州ピッツバーグから移ってきたヘリングにとって、新しい文化が勃興しゲイカルチャーも華やく自由で刺数的な場所でした。しかし、HIVの変延が社会に暗い影を落とし始めていました。混沌と希望に溢れるこの街で解放されたヘリングは、生の喜びと死への恐特を背負い、「エイズ」によるコミュニティへの偏見と聞いながら約10年間という限られた時間に自らのエネルギーを惜しむことなく注ぎ込みました。
ヘリングは、アーティストのジャン・デュビュッフェやビエール・アレシンスキー、作家ウィリアム・S・バロウズの作風や生き方、そしてアーティストの独立性を主張したアメリカの画家ロバート・ヘンライの代表的な著作「アート・スピリット」に大きな影響を受けつつ、独自の表現を推し進める中で、アフリカの芸術から着想を得た表現なども確立していきます。
HIVで亡くなり、芸術活動はたった10年だったんだ。
たった10年で認められて国境を越えて愛される作品たちを生み出したことに感動した。
今まではアートのシンプルさ、キャッチーさだけしか知らなかったけど、時を超えてそのアートの意味を知れる機会を得られたことがうれしい。
記憶に残りやすいアートだからこそ後から知れる機会があったんだと思うし、キースへリングもそれを狙っていたのかな。
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晩年近くの作品。おしべとめしべがHIVを象徴としている。
背景を何も知らなければただの花の絵として見てしまっていただろうな
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キースへリングでいままで見たことのあるアートと比較してもかなり抽象的に感じた。心の不安定さも感じる。鮮やかに描いているのは生の喜びを表しているのかな。
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あー!見たことがある。これキースへリングだったんだ…となった。
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左下に人がかがんだ姿が描かれているけれど、男性なのはキースへリングがゲイだったからかな。仲間がいるから、ゲイカルチャーが華やぐ場所に移ったことは幸せだっただろうな。
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この辺りは展示空間自体が薄暗く、作品が発行していて闇に浮かび上がっているように見えて楽しかった。
妊婦さんが楽しそうに踊っている姿が生の喜びを表しているよう。
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チーズみたいで可愛かった。
3.ポップアートとカルチャー
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ポップアートとカルチャー
80年代のニューヨークは、不況の影響で現在以上に犯罪が多発する都市として知られており、ドラッグや暴力、貧困が蔓延
していました。一方でクラブ・シーンは盛り上がり、ストリートアートが隆盛を極めるなど、街もカルチャーも人々もパワーに溢れていました。
歌手のマドンナ、ジャン=ミシェル・バスキアの作品も同時代にニューヨークから誕生しています。それはアートや音楽界だけにとどまらず、アンディ・ウォーホルや作家のバロウズや詩人、活動家のアレン・ギンズバーグも、トップモデルもほかの著名人も、皆クラブに通い、若いアーティストはギャラリーやシアター以外の場所で才能を試すことに必死でした。
特に「パラダイス・ガラージ」はヘリングがもっとも愛したクラブであり、D」の神様といわれたラリー・レヴァンのプレイと踊りに酔いしれるだけではなく、創作のアイデアが湧き出る神聖な場所でもありました。文化が混ざり合う時代と場所で、ヘリングはポップアートだけでなく、舞台芸術や広告、音楽などと関わりながら制作の場を広げていくことになります。
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ミッキーマウスが好きだったらしい。青年が好きそうな感じに見えるのは、青年に向けたアートだからというのもあるのかな。
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さっきの花の絵に比べるとだいぶ大衆向けに作られている。
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よく知ってるやつ!
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ダンスの舞台背景のために作った作品。壁一面がこのアートで迫力がすごかった。私も踊ってみたくなった。
4.アート・アクティビズム
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アート・アクティビズム
ヘリングは大衆にダイレクトにメッセージを伝えるため、ポスターという多くの部数を制作することができ、高い流通性により誰もが目にすることができる媒体を選びました。題材は、反アパルトヘイト、「エイズ」予防や、性的マイノリティの人々のカミングアウトを祝福する記念日「ナショナル・カミングアウト・デー」などの社会的なものから、アプソルート・ウォッカやスウォッチなどとのコラボレーション広告といった商業的なものまで、100点以上にも及びます。
とりわけ、ヘリングは社会へのメッセージを発信したポスターを数多く制作しました。1982年に初めて制作したポスターは、核放棄を題材にしたものでした。ヘリングは自費で2万部を印刷し、セントラル・パークで行われた大規模な反核デモで自ら無料配布したのです。
アートの力は人の心を動かし世界を平和にできるものだと信じていたへ
リングは、ポスターだけでなく、世界の多くの都市で建物の内外に壁画を描いたり、子どもたちとのワークショップを行うなど多くの手段を使ってメッセージを送り続けました。
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この展示会で一番好きだった作品。
本作は、社会の無関心に対して警鐘を鳴らすために制作されました。タイトルはエイズ予防啓発運動団体ACT UP (AIDS Coalition to Unleash Power)が制作したポスターのキャッチコピーから転用されたもの。ピンクの三角形は、ナチスの強制収容所で同性愛者の男性につけられたピンクの逆三角形のマークがもとになっており、これを同性愛差別に対する抵抗として上向きの三角形に図案化したものです。ヘリングはこの図案を作品に取り入れることでLGBTQ+コミュニティを祝福するとともに、偏見により命を落とした人々への追悼を示しました。
当時の「悪を見ず、悪を語らず、悪を聞かない」のレーガン政権に対して、この三角形は「エイズ」の可視化を訴えています。
分かりやすくて、キャプションを読んだときになるほど!となった。意味を知る前と後では作品の愛着が全然違うことを改めて感じた。
一番痺れたキャプションの一文
「ナチスの強制収容所で同性愛者の男性につけられたピンクの逆三角形のマークがもとになっており、これを同性愛差別に対する抵抗として上向きの三角形に図案化したもの」
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この作品の前で二人組のおねえさんが「かわいい~」と言っていた。私は作品もお姉さんもかわいいとおもった。
最初はメッセージに興味がなくともアートに興味を持ってもらえれば万々歳だよね。アートを知ってからその深い意味を知る、スヌーピーと同じだ。
5.アートはみんなのために
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アートはみんなのために
アートを一部の知識人や富裕層にだけではなく、多くの人に届けたいと考えたヘリング。ストリートや地下鉄での展開に始まり、自身がデザインした商品を手に取りやすい価格帯で販売した「ポップショップ」といったアート活動を通して、大衆が身近にアートと親しむことを可能にしてきました。本章で紹介される(赤と青の物語)は、絵画の連なりからひとつのストーリーを想像することを促しています。
子どもだけでなく大人にも訴えかける視覚言語が用いられた、ヘリングの代表的な作品のひとつです。
また、赤、黄、青といった色を使い、平面の形を立体に立ち上げた刻作品は、万人とコミュニケーションできるアートといえるでしょう。さらにヘリングは世界の都市数十か所での刻や壁画などパブリックアートを制作しています。その多くは子どもたちがアートに触れる機会を増やすために、小児病院や孤児院、公園に設置されました。ほかにも数々の絵本が出版され、ヘリングが発信したアートは現在も大衆に向けて届けられ、生き続けているのです。
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赤と青の物語。キャッチーなアートは人の心に残り続ける。小さなときに好きだったアートの意味を大人になってから知るというのも趣深い気がする。
キースヘリングの子供達への思いやり?をすごく感じたアートたちだった。
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確かに公園にありそう〜!アスレチックみたいで見てるだけで楽しかった。
6.現在から未来へ
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現在から未来へ
本章で展示する17点の連作くブループリント・ドローイング)は「ニューヨークでのはじまりを啓示するタイムカプセル」だとヘリングは書き残しています。1点ごとには解説は付けられていませんが、資本主義に翻弄され不平等さや争いがはびこる社会や、テクノロジーが人間を支配するような未来が、モノクロームでコミックのように淡々と描写されています。ヘリングの多くの作品がそうであるように、ここでも鑑賞者が作品と向き合い、個々の現実に照らし合わせ、意味を考えることを作品が促しているのです。
ニューヨークでの最後の個展に出品された三角形の変形キャンバスを用いた大作く無題>も、キュビズムの影響が垣間見えるくペルシダ)も、世界中で愛される、光輝く赤ん坊、通称「ラディアント・ベイビー」をはじめとしたモチーフが描かれるハイコンズ)も、鑑賞する人の数だけ意味が生まれていきます。
現在を未来として描き、未来を現在として描いたヘリングの思いは、没後
30年以上経った今でも歴史と共に巡っています。
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椅子があるので座りながら鑑賞できる。
展示スペース自体の雰囲気がまた少し違っていてアトラクションのようで楽しかった。
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コマ割りで描かれているアートの解釈を30分くらい考えてたように思う。
テーマが社会問題についてだからか、少し内容が暗かった。ただ漫画になっているので大人も子供も楽しめそうだった。
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トピック:キースへリングと日本
ここのゾーンが一番面白かった!
日本に住んでいるから興味をひいたのかな。実際の交流の写真などもあってキースヘリングを少し近く感じられた。(ぜひ展覧会でみてほしい)
子どものころに出会っていて良かった。
アンパンマンやミッフィー、スヌーピーなど
子どものころは「キャッチーで、なんとなく面白い」から見ていた作品たちを
大人になってからもう一度よく見てみる。
すると、今更ながら深いコンセプトに気づき、感動し、時に救われて、
ますます作品を好きになったりする。
(星の王子さまとかも)
大人になって改めて気づくからすごく心の奥深くに響くのだろうし、
こういう感動の積み重ねはきっと、大人の感性を磨くことにも一役かってるに違いない。
というわけで
まだ一人では美術館へ行けないような小さな子どもたちにもぜひ見に行ってほしいと思った。