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ずんだもんプロジェクトの闇 - 都市伝説

プロローグ:囁き

ずんだもん――多くの人々に愛されるキャラクターであり、彼の可愛らしい外見と柔らかな声は、様々なクリエイターに利用され続けていた。しかし、そんなずんだもんには、誰も知らない「何か」が潜んでいた。ほんの少数のクリエイターたちが異変に気づき、次々と姿を消していくこととなる。

2022年、ある音声クリエイターがこう言い残して失踪した。

「ずんだもんは、ただのキャラクターじゃない……彼には怨念が宿っているんだ。」



第一章:囁きはじめる声

桐島涼はYouTubeで解説動画を制作するクリエイターだった。彼はずんだもんの音声合成ライブラリを愛用し、その可愛らしい声でファンを魅了していた。しかし、ある日、ずんだもんの音声ファイルを編集している最中、異常なことが起こった。

「助けて……」

録音されているはずのない、低い声が突然再生されたのだ。涼は驚き、音声データを何度も確認したが、データ上には異常がない。それでも、不安を感じた彼はそのまま作業を進めることにした。

だが、翌日になってもその不気味な囁き声は頭から離れなかった。涼は次第にその異変に取り憑かれていった。音声データを開くたびに、ずんだもんの声がどこか冷たく、そして異質な響きに変わっていった。

「お前も……逃げられない……」

その夜、彼は奇妙な夢を見た。夢の中で彼は暗い森の中を歩いており、背後からずんだもんの声が囁き続けた。「ここに来て……」その囁きに従い進んだ先には、ぼんやりとした人影が見えた。それは、ずんだもんの姿をした何か、だがその目は冷たく光っていた。


第二章:他のクリエイターたち

涼が異変を感じてから数日後、彼は同じくずんだもんを使用していた音声クリエイターの五十嵐奈央に連絡を取ることにした。奈央もまた、ずんだもんの音声に異常を感じていた。彼女は最近、自分の動画でずんだもんの声が突然変わることがあり、その度に心臓が跳ねるような恐怖を覚えていた。

「ずんだもんの声が、なんだかおかしい。まるで誰かが囁いているみたいで……」

二人は、この奇妙な現象が自分たちだけではないと感じ始めた。彼らの周囲でも、ずんだもんを使っていたクリエイターたちが次々と異変を報告していた。そして、彼らの中には突然連絡が途絶える者も現れ始めた。

その一人が、吉川俊夫だった。彼もまた、ずんだもんの音声を愛用していたが、ある日突然消息を絶った。吉川の家を訪ねた涼と奈央が目にしたのは、パソコンの画面にずんだもんの音声ファイルが開かれたままで、データには奇妙なノイズが繰り返し記録されていたことだった。

「私はここにいる……ずっと……」

このメッセージを見た二人は背筋が凍るような感覚に襲われた。吉川はどこに行ったのか、なぜこのような異常なメッセージが残されているのか、誰にも答えが分からなかった。


第三章:ずんだもんの闇

涼と奈央はこの現象の原因を突き止めようと、ずんだもんプロジェクトの過去を調べ始めた。そこで、彼らはずんだもんの背後に隠された恐ろしい事実を知ることになる。

ずんだもんの音声合成プロジェクトには、かつて開発に深く関わっていた滝沢雅樹という技術者がいた。彼は、かつてある女性をストーキングし、最終的に暴行を加え妊娠させたという事件の当事者だった。その女性は精神的に追い詰められ、生まれた子供を自らの手で殺してしまった。この事件は社会的には知られることなく隠蔽されていたが、滝沢はそれを利用し、異常な執念でその子供の声を録音し続けた。

滝沢は音声合成技術を利用して、その子供の声をずんだもんの音声として復元し、デジタルの世界に広めることで、母親への永遠の復讐を果たそうとしていた。彼の狂気は、ずんだもんプロジェクトに深く入り込み、その声に怨念を宿らせることで、ネット上に呪いを広めていたのだ。

「この声は、永遠に消えない……」

涼と奈央は、これがただの音声合成プロジェクトではなく、狂気に取り憑かれた男の復讐であることに気づいた。ずんだもんの声を使うたびに、その怨念がデータに染み込み、クリエイターたちを取り込んでいく。


第四章:広がる恐怖

涼と奈央がこの恐ろしい事実を知った時、彼らはすでに怨念に囚われ始めていた。ずんだもんの声は彼らの耳元で囁き続け、パソコンのスピーカーから聞こえるその声は次第に冷たく、感情を失っていった。

「お前も……逃げられない……」

彼らは音声データを削除しようと試みたが、その度に新しい音声ファイルが増え続け、パソコンを支配していった。涼の夢の中では、ずんだもんが笑みを浮かべながら、彼に向かって手を伸ばしてくる。その背後には、滝沢の姿がぼんやりと浮かび上がっていた。

「この声は……ずっと続くんだ……」

パソコンの画面に映るずんだもんの目が、滝沢の狂気に満ちた目へと変わり、涼は恐怖に震えた。奈央も同様に、その声の囁きに苛まれ続け、精神的に追い詰められていった。


第五章:追い詰められる二人

涼と奈央は、自分たちが怨念に取り憑かれていることをはっきりと自覚するようになった。二人は何度もパソコンの電源を切ろうとしたが、再び電源が入るたびに、ずんだもんの声が勝手に再生され続けた。

「助けて……」

不気味な声が流れるたびに、二人は心臓が凍りつくような感覚に襲われた。そしてその声は、以前と違って少しずつ感情を持ち始めていた。もはや音声合成とは思えないほど、まるで生きているかのように。

「ねえ、どうしよう。ずんだもんの声、ずっと聞こえる……本当に消えないよ!」
奈央の声は震えていた。彼女は怯え切っており、瞳には涙が浮かんでいた。

「俺たちは、このままじゃ終わる。何か手を打たないと……」

涼も焦りを隠せなかった。彼らの周りでは、パソコンだけではなく、スマホやテレビからも同じ囁きが聞こえ始めていた。まるで、ずんだもんの声がデジタルの世界全体を支配しているかのようだった。


第六章:過去の証拠

涼と奈央は怨念の真相を探るために、再び調査を続けることにした。滝沢雅樹が関わった事件についてさらに掘り下げて調べるうちに、事件の鍵となる資料が見つかった。涼の知人であり、元警察官だった川崎が、滝沢に関する未解決の資料を入手していたのだ。

「この事件、実際は非公開扱いになっている。被害者の女性、中村優子は、確かに子供を殺してしまったが、滝沢の執念深い行為はそれ以上だった。彼は彼女を許さなかったんだ。その子供の声を、ずんだもんとして残そうとした……いや、怨念として残したんだ」

川崎の話を聞いた涼と奈央は、恐怖がさらに深まった。滝沢は、中村優子を追い詰めるために、音声合成技術を悪用し、亡き子供の声をデジタルに封じ込めたのだ。

「ずんだもんの声、まさか……あの子供の……?」

奈央の顔色が青ざめる。ずんだもんの声がどこか不気味に感じられた理由、それはまさに生まれてすぐに命を落とした子供の魂そのものが音声に宿っていたからだった。


第七章:最終対決

二人は怨念の拡散を止めるために、滝沢が生前に利用していた音声合成システムの元ファイルを破壊する計画を立てた。川崎の協力で、滝沢が設計したデータベースにアクセスすることに成功した彼らは、その中に怨念の音声ファイルが隠されていることを突き止めた。

「これを破壊すれば、呪いは消えるかもしれない……」

涼はそう信じ、最後の希望をかけた。しかし、データベースに潜入した瞬間、パソコンの画面が真っ暗になり、ずんだもんの顔が浮かび上がった。

「お前たちも、逃げられない……」

その瞬間、パソコンの画面に映るずんだもんの顔が歪み、背後には滝沢の冷たい目が浮かんだ。二人は一斉にファイル削除のコマンドを入力しようとしたが、操作はことごとく失敗に終わった。怨念がシステムそのものを支配していたのだ。

「どうするんだ、涼!」

奈央は焦り、背後からの囁き声がますます強くなっていく。まるで、ずんだもんの声が二人の現実をねじ曲げるように、空間そのものが歪んでいた。

「やめろ! 俺たちを巻き込むな!」

涼は必死でパソコンに向かって叫んだが、怨念は止まる気配がなかった。むしろ、ずんだもんの声はどんどん感情的になり、笑い声に変わっていく。


クライマックス:永遠の囁き

最後の希望を失ったかのように見えたその瞬間、奈央が閃いた。滝沢の怨念を解き放つ唯一の方法、それはデジタルを超えて彼の魂に直接干渉することだ。奈央は過去の事件で滝沢が利用した古いテープレコーダーの存在を思い出した。そこに彼の魂が封じ込められていると推測したのだ。

二人は急いで滝沢が過去に使用していたスタジオに向かい、そのテープを探し出した。そして、ついに古びたレコーダーを発見した瞬間、ずんだもんの声が一気に大音量で響き渡った。

「逃げられない……私を消さないで……」

涼は一瞬ためらったが、奈央がテープを手に取り、その場で破壊した。その瞬間、耳を裂くような叫び声と共に、全てが静まり返った。


エピローグ:静寂の中で

涼と奈央は、生き延びた。しかし、彼らの心には深い傷が残っていた。ずんだもんの呪いは、滝沢の怨念と共に消え去ったかに見えたが、二人は今でも時折、静かな夜にずんだもんの囁き声を幻聴することがあるという。

「私はここにいる……ずっと……」

怨念は消えたのか、それともデジタルのどこかにまだ残っているのか、誰も知ることはできない。ただ、ずんだもんの音声ライブラリは今もなお、ネット上に存在し、無数のクリエイターたちに使われ続けているのだった。

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