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Syamuの部屋 - ホラー無職
「Syamuって知ってる?」
隣の席の同僚が突然そう言った。お昼休みの雑談の流れで、急にネットの話題になったのだ。Syamu…その名前には聞き覚えがあった。YouTubeやニコニコ動画で一世を風靡した、あのネットミームの人物だ。しかし、特に興味を持ったことはなかったし、彼の動画をまともに見たこともなかった。
「まあ、名前くらいはね。カツカレー炒飯とか、オフ会0人とかだろ?」
「そうそう、それ。最近さ、Syamu関連でちょっと気味の悪い話があるんだよ。」
「気味悪い?」
「うん。ある一部の動画を最後まで見た人が、奇妙な体験をするって噂なんだ。」
「そんなの、ただの都市伝説だろ?」
そう言って笑い飛ばしたけれど、その話はどこか引っかかっていた。家に帰ってからも、なぜか気になって仕方がなかった。俺は少しネットで検索してみることにした。「Syamu 都市伝説」と入力してみると、いくつか怪しいまとめサイトが出てきたが、特に具体的な情報はない。噂に過ぎないだろうと思いながら、ふと「Syamuの呪い」というキーワードが目に留まった。
「Syamuの呪い…か。」
どうせデタラメだろうと考えつつ、いくつかのリンクをクリックしてみる。中には「Syamuのある動画を見ると、奇妙な現象が起こる」という内容の書き込みがあった。動画に関する詳細は不明だが、「カツカレー炒飯」や「オフ会0人」などのミームが関連しているらしい。さらに、問題の動画は「ゾット帝国」というタイトルが付けられた小説と何かしら関わりがあると書かれていた。
「ゾット帝国?あのクソ小説か…」
確か、Syamuが一時期小説家を目指して投稿したファンタジー小説だったはずだ。内容は支離滅裂で、ネット上で散々な評価を受けていた。そんなものが呪いに繋がるなんて、馬鹿らしい話だ。
しかし、気になった俺は、結局その夜、YouTubeで「Syamu ゾット帝国」と検索してみた。いくつかの切り抜き動画やミーム動画が表示されたが、ひとつだけ異様に再生回数の少ない動画が混じっていた。タイトルは「ゾット帝国――未公開版」と書かれている。興味本位でクリックしてしまった。
動画が始まると、Syamu特有のぎこちない編集と、聞き覚えのある独特な口調が響いてきた。動画の内容自体は特に変わったものではなく、いつものように彼が小説の内容を説明しているだけだった。ところが、再生時間が10分を超えたあたりから、画面に異常が現れた。画質が突然荒くなり、音声もノイズ混じりになっていく。
「…これは、何かおかしいな…」
その瞬間、画面に異様な映像が映し出された。Syamuの部屋の様子が映っていたが、彼は一人ではなかった。背後にぼんやりと人影が見える。しかし、その人影は妙に不自然で、まるで生気がないように見えた。Syamuはそのことに全く気づいていないようで、話を続けている。
「…ゾット帝国は、俺が生み出した最高傑作だ…!」
次の瞬間、画面が急に暗転した。何も映らなくなり、ただSyamuのぼそぼそとした声だけが聞こえる。
「お前も…来るか?」
突然のフリーズ。何度も画面をクリックするが、反応がない。仕方なくブラウザを閉じようとするが、どういうわけか閉じることができない。焦ってキーボードを叩くも、画面は真っ暗なまま、何も映らない。
そして、スマホが突然鳴った。
「…オフ会に、来い。」
画面には「Syamu」からのメッセージが表示されていた。もちろん、彼とは一度も連絡を取ったことはない。混乱しながらスマホを手に取るが、指が震えてメッセージを閉じることができない。次々と通知が届く。
「ほならね、来てみろよ…」「カツカレー炒飯を用意してるぞ…」
次第に、文字が奇妙に歪んでいく。恐怖心がじわじわと襲ってきた。俺はスマホを放り投げ、部屋を見渡した。誰もいない…はずだった。
ふと、背後に気配を感じた。振り返ると、部屋の隅にぼんやりとした影が立っている。恐る恐る近づくと、その影は次第に形を取り始めた。
「俺だよ、Syamuだ。」
ぞっとするような冷たい声が耳元で囁いた。
その瞬間、全身が凍りついた。スマホの画面が勝手に点灯し、最後の通知が表示された。
「お前も0人目になるか?」