Syamu 真夜中のオフ会 - ホラー無職
仕事から帰ってきて、いつものようにスマホをいじりながらソファに横たわった。疲れが溜まっていたが、SNSや動画をチェックするのは日課になっている。すると、突然スマホに通知が届いた。差出人は見覚えのない名前だったが、そこにはこう書かれていた。
「オフ会に来ませんか?場所はイオンシネマです。」
「なんだこれ…?」と思いつつも、どこか既視感があった。メッセージには続けて、「Syamuです」と署名があったのだ。まさか…冗談だろうと思ったが、気になってそのまま検索をかけてみた。
Syamuとは、かつてネットで有名になったYouTuber。彼の「オフ会0人」や「カツカレー炒飯」といった逸話はミーム化され、今でも語り草だ。ネットの片隅に残る伝説。だが、その本人からメッセージが届いたなんて信じがたい。もしかしたらイタズラか、単なるファンイベントの告知だろうと考えたが、メッセージには詳細な集合場所や時間が書かれていた。
「夜10時、イオンシネマのロビーで待ってるで。誰も来ないかもしれんけど、来てくれるのを楽しみにしてるで!」
その文面がどこか哀愁を帯びている気がした。普通なら無視するところだが、何かが俺を突き動かしていた。ネット上の「Syamu」という存在を直接見ることなんて、滅多にない機会だ。翌日も休みだし、少し遊び感覚で行ってみようと思った。
夜10時、指定されたイオンシネマに到着した。シネマのロビーは薄暗く、映画の上映もほとんど終了していて、人の気配はほとんどない。俺は少し緊張しながらロビーのベンチに腰を下ろし、辺りを見渡した。時計はもうすぐ10時を指していたが、誰も来ない。
スマホを取り出し、メッセージを確認しようとしたが、その時、背後から声が聞こえた。
「ウィイイイイイッス!どうも〜Syamuで〜す。」
振り向くと、そこには一人の男が立っていた。あの独特のイントネーション、まさに彼だった。いや、彼「らしき人物」だと言った方が正しいだろう。暗いロビーの中で、Syamuの特徴的な姿がぼんやりと浮かび上がっていた。
彼は笑顔でこちらを見ていたが、その目には何か異様なものを感じた。表情はどこかぎこちなく、まるで生気を失っているかのようだ。
「今日は…来てくれてありがとうなぁ…でも…誰も…来なかったんや…」
その言葉に一瞬、胸が痛んだ。かつて彼が体験したオフ会0人の出来事が頭をよぎる。しかし、その痛みはすぐに恐怖に変わった。彼の声が次第におかしくなり、息が詰まるような音が混ざってきた。
「せやけど…今日は一人は来たやんか…お前やで…ほんでぇ、カツカレー炒飯作って一緒に食べよか…」
その言葉を聞いた瞬間、全身に寒気が走った。周りの空気が一気に冷たくなったように感じた。彼が手にしていたのは、見るからに不気味なカツカレー炒飯だった。それは、動画で見たものとまるで同じ。だが、焦げた匂いが立ち込め、その姿は腐敗したようにも見える。
「おい、待てよ…何が起きてるんだ…?」
恐怖で声が震えた。Syamuがゆっくりとこちらに近づいてくる。彼の目はどこか虚ろで、まるで人形のようだった。
「お前も…0人目になれよ…。ほならね、お前が次は作る番やろ…?」
その瞬間、スマホが震え、メッセージが届いた。
「次はお前がオフ会0人を開催する番や。」
恐怖で足がすくんで動けなかった。周囲の空気がどんどん重くなり、逃げることもできないまま、Syamuが目の前まで迫ってきた。
「お前も…オフ会で誰も来んかったやろ…だから、俺と同じや…一緒やで…」
彼の手が俺の肩に触れた瞬間、意識が遠のき、全身に暗闇が広がっていった。
気がつくと、俺は再びイオンシネマのロビーにいた。しかし、周りには誰もいない。まるで時間が止まったかのような静けさ。スマホを確認すると、画面には一つの通知が表示されていた。
「お前も、オフ会を0人で開催するんやで。誰も来んかもしれんけど、お前はもう一人やない。」
震える手でスマホを落とし、辺りを見回す。しかし、誰もいないはずのロビーで、どこかにSyamuの姿が潜んでいる気配がした。