![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/152318469/rectangle_large_type_2_0ada7439e94847a40df95f7d9bd66d96.png?width=1200)
物書きとマジシャン#11
「おお寒いな、おはよう。」
師匠、おはようございます。
「寒くないのか、お前。」
寒いですけど、この間奥さまからいただいたジャケットが暖かいです。
こんな良くしてもらっていいんですか?
「奴隷じゃないんだから、気にすんな。
サウスじゃあるまいし。」
サウス…。
「ああ、サウスはそんな時代もあったんだよ。
サウスだけじゃない、ほれ、この前話した東の王都だってそうさ。」
奴隷って聞くと心がざわざわします。
あまり気持ちのいいものじゃないですね。
「そうだな。
女子供は主に人身売買、あとは借金の形だな。」
僕もあのまま捕まってたらそうなってたんでしょうか。
「かもな。
気をつけろよ。」
早く、衛兵さんのような頼りになる人達が街に来てくれませんかね。
「まあな、俺も息子が心配だしなあ。
でもあれだぞ、仮に衛兵がついたとして絶対に安心だとは言えん。」
え?どういうことです?
「スパイが混じってたらどうする?
あと、悪いやつも中にはいるかもしれん。」
あ。
「衛兵の恰好で人身売買に関わっていてみろ。
まず、最初は誰も疑わんだろう。」
自分の身は自分で守るしかなさそうですね。
「結局そうなるんだが、無いよりはマシだな。
せめて身元が信用できる人間がほしいもんだがなあ。」
あれから、さすがに手つかずはどうなんだと声が上がった。
一番のきっかけになったのは、各国の要人がこの街を訪れた際、恨みを買っている人間がいたのか銃弾が撃ち込まれる暗殺未遂事件があった。
犯人は今だ見つかっていないのが余計に街の不安を煽り、さすがに警備兵くらいは置いた方がいいという話になったらしい。
結果、各商人団体が抱える私兵のうち、街に住んでおり、かつ身元も明らかな人間が、警備兵として各詰め所に勤務する形になったという。
各商人が商人団体に納める会費の一部が財源となった。
また、連盟に属する周辺国の拠出金も財源に充てられることとなって、このメイサの街もいよいよ新たな国のように変化するかもしれない。
「そうだ、メル。」
はい、師匠。
「警備兵もいることだし、これで少しくらいは治安も良くなるだろう。
そろそろ、扱う貨幣の種類くらい覚えてみろよ。」
ええ?いいんですか?
「まだ任せるには早いが、その方が手間も省けるし助かるだろう。」
お願いします。
「メイサの貨幣はわかるだろう?
知らないのは滅多に見ない金貨くらいか。」
はい、ほかのお金と違って多くはすり減って柄の境界線が曖昧です。
「そうだよな。
これじゃ型を取ろうにも、まともなものは出来ないだろう。」
この柄は何なのですか?
「元の王家の紋章だな。
あといかにも威厳を感じる空想の鳥獣が特徴さ。」
へえ、これは鳥獣の紋章だったのか。
「イリスも似たようなデザインだな。
もともと姉妹国家だというし、改めて見ると納得の見た目をしているな。」
金貨も見てみたいですね。
「そのうち手元に来たならな。」
楽しみです。
「商館に今度行ったときにでも見せてもらうか?」
あるんですか?
「そりゃあるさ。
街で一番安全な場所だからな。」
師匠の店のお金も預けてあるんでしたね。
「そうさ。
うちだけじゃなくて、みんな自分が属する商館に預けているからな。」
なるほど。
「強盗の類の話は聞かないだろう?
大きなお金は証書で取り引きするしな。」
言われてみればそうです。
「犯罪は起こさせない努力も必要なのさ。」
![](https://assets.st-note.com/img/1724868270603-oxVcK7bg7J.png?width=1200)
※この物語はフィクションです。登場する人物や団体は架空であり、実在する人物や団体とは一切関係がありません。