物書きとマジシャン#33
「東はともかく、北寄りはリスクがありますね。」
遠征なんかあったら荒らされちゃうしなあ。
「僕は知らないんですが、
まだあるんですか?そういう事。」
今じゃすぐにはないはずだけど、ノスが儲かってないのはみんな知ってるから、心配はどこか常にあると思うよ。
「よく知りませんが、どんな国なんですか?」
一言でいえば秘密主義、閉鎖的な国かな。
「民族的な特徴なんでしょうか。」
ああ、やっぱり年中寒いからほとんど籠ってる生活でコミュニケーションが取りにくい分、代々何かと疑心暗鬼になる性分なのかなあ。
「南はどちらかと言えば開放的だって聞きますもんね。」
そう考えると案外その通りなのかも。
相手の事を多少見知っててもさ、長い事コミュニケーションを取らないと、周囲からの根拠のない言葉だって耳に入ってきちゃうからね。
「それがまた国家間にも言えるんなら厄介ですね。」
東のサウスとは仲がいいらしいからね。
「へえ、また何故なんでしょうか。」
皇帝が滅びちゃまた新たな皇帝が現れてって繰り返すもんだから、クーデターや民衆蜂起に相当気を遣ってるはずだしね、強権的な意味で相性がいいんじゃないかなあ。
「なんか納得しちゃいました。」
うん。だからもしノスやサウスに行ったならさ、下手なことを口にしたら帰って来れなくなると思った方が良いよ。
「そんなにですか?脅しでもなく?」
そう。第一、誰も助けてくれないって。
「もし、そうなったらどうすればいいんでしょうか。」
さあね。
行商人のラナフさんでさえ滅多に出入りしないからよっぽどだよ。
でも、賄賂が効くらしい。
「賄賂って?」
「…なるほど。
でもそんなんじゃ、中途半端な商人では利益なんか出せませんね。」
そうだね。
逆に言えば、向こうにとって貴重な存在にさえなってしまえば、むしろめちゃくちゃ稼げるんじゃないかな。
「貴重な存在ですか。」
そう。例えば僕からでしか絶対に手に入れることが出来ないものを取引できるとか、皇帝に簡単に会えるようになるとか。
「うわあ、頭がどうにかなりそうです。」
あはは、情報の横流しとかしてる人間なんかそうなんじゃないかなあ。
「ああ、そういうことですか。」
そう。そもそも国の成り立ちや事情がこちら側と全く違うからね。
相容れるわけないじゃん。
「その結果がそういう動きになると。」
時代や場所が違っても、結局やってることは同じじゃないかなあ。
※この物語はフィクションです。登場する人物や団体は架空であり、実在する人物や団体とは一切関係がありません。