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物書きとマジシャン#43

 まさか、彼らが同じ商団の仲間になるとは。

 正確にはザルツさんが今作っている契約書にサインをするまではわからないが、それにしても何がどう転ぶかわからない世界だ。

 ザルツさんにその思考をぜひ聞いてみたい。

「これでうちの商団にも新しい知識が加わるな。
まあ、まだこれにサインをもらうまではわからんが。」

 よく彼らの素性を確かめずに踏み切りましたね。

「それはこれからわかるだろうさ。少なくとも話に矛盾が無く、あれだけの資金を持っているのはただ物じゃない。」

 確かに、実力は明らかですね。

「彼らはこのままイリスに向かう。
ここに来るまで彼らは資金しか持っていなかったが、出資分の権利と商団の名が使えるようになるんだ。」

 もし、悪い人間ならどうします?

「お前は変わってるよな。ここまで彼らと話をして、取引をしてもなお、根本的な何かに焦点を当てている。まあ、そこが良いところでもあるが。」

 ええ、性分でしょうか。
何か落ち着かないんですよね。

「その時は除名したうえで、商団の名に傷をつけた責任を取ってもらう。
まさにそれを契約書にしたためているところさ。この辺はメル、お前さんにとっても同じ条件だろう?」

 ええ、そのとおりですね。

「うちの商団に入りたい連中なんて山ほどいるんだ。だが今回はそういう流れじゃない。どちらかと言えば、どこかの商団に入られる方が困る。」

 そうか…。
サウスの内情を知っている人物はほとんどいませんからね。

「サウスだけじゃないさ、きっとノスの事情にも明るいはず。彼らはその知識を当たり前だと思い、おそらくはその価値を自覚していない。」

 なるほど。

「信用はカネでは買えない。
ならば信用で買うしかない。」

 ぼくにはまだ出来ない領域ですね。

「そうか?お前さんの店での範囲なら可能だろ。
俺は俺の役割りの範囲で出来ることをやっているだけだからな。」

 役割、ですか。

「そうさ、役割だ。
俺にはイナホの両替は出来んよ。」


 さて、彼らが荷物を宿に置いて帰ってきたようだ。

「やあ、お待たせしました。
契約書を拝見したいのですが。」

「ああ、ちょうどいいところに。
では詳しく話をしましょうか。」

 じゃあ、ぼくたちは店に戻りますね。

「ああ、そうだな。」

「メルさん、ありがとう。」

 アレクはすっかり部屋の端で話を聞くだけに徹していたようだ。

 アレク、戻ろうか。


※この物語はフィクションです。登場する人物や団体は架空であり、実在する人物や団体とは一切関係がありません。


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