ライオンズはまた強くなる!~ライオンズ人財開発担当部門の試み~
※1年ぶりのご無沙汰です。
ここ最近はnoteが文春野球フレッシュオールスター応募原稿をアップする場だけのようになってしまっていて反省しています。
今回アップする文章は文春野球フレッシュオールスター2024で文春野球審査員奨励賞をいただきました。
精神疾患の悪化で思考力が低下した中で2018年の初投稿以来一番苦しんで書いて応募した作品です。
なので素晴らしい賞をいただいてうれしいです。
選考してくださった文春野球運営の皆さん、文春オンラインの関係者の皆さんありがとうございました。
そして、応募された皆さんお疲れ様でした。
今回の応募原稿の内容に強い拒否反応を示される方もいらっしゃるのではと書いている段階から悩み、ここにアップすることも悩みました。
でも苦しい中素敵な賞をいただいた文章に誇りを持とうと腹を決めました。
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埼玉西武ライオンズ人財開発担当部門の試み
ほとんどの人間は生きていく上で、「自分が置かれている状況や感情や経験を言語化する。」作業を避けて通ることはできない。もしかしたらそれは予想以上に難易度が高いものかもしれない。
街の中でもいい大人がしょうもないことでキレ散らかして周囲の人間に迷惑をかけている光景を目にする。
かくいう私も「自分が置かれている状況や感情や経験を言語化する。」ことの難しさを痛感している。父からたびたび、「自らに起きたことを言語化できない人間は問題点や物事の本質を理解していない。それは問題解決能力が低いことにつながる。つまり馬鹿だ。」と言われて育った。これ以上取り返しがつかない馬鹿にならないようにしていくにはどうすればいいかを日々考えて生きている。
そんなある日、パ・リーグインサイトに海老原悠さんが書かれた興味深い記事をX経由で目にした。
「埼玉西武ライオンズ人財開発担当部門が、主にファームの若手選手に「主体的に行動できる能力」、「高い言語化能力」を身に着けさせる指導をしている。」
との内容。
人財開発担当部門には選手出身ではない、伊藤悠一さんという方が在籍されている。NHKでドキュメンタリー番組のディレクターを務めたのち、公募制の監督トライアウト制度でプロ野球独立リーグのベースボール・チャレンジ・リーグ(BCリーグ)・茨城アストロプラネッツの監督に就任し1年の任期後に埼玉西武ライオンズに転職した異色の経歴の持ち主。以前からプレーヤー出身ではないからこそ持つことができる新鮮な視点に感心していた。
今回の記事で一番印象に残った伊藤さんの言葉は、
「一軍経験がない若手選手は抽象的に質問するケースが多く、一軍の選手は自分自身の問題点を具体的に説明し質問をする。言語化能力が高いと、それだけコーチもアドバイスしやすくなる。自分の感覚をしっかり言葉に出せることで、コーチは適切な指導ができ、その選手が成長していく起点になると思います(要約)」
だった。
思い起こせば、埼玉県にあるテレビ局・テレ玉で放送されているライオンズ応援情報番組『LIONS CHANNEL』のインタビューを観ても自分自身の現状を把握し言語化してしっかり伝えることができる選手が増えてきた気がする。
頼もしい。
言語化能力を高めることの大切さ
私は火薬庫のように人間だった。
物事が思うようにいかないと癇癪を起こしたり、話しかけてくれた人を馬鹿にしてくると思い込んで突然殴りかかったりしていた。常にイライラしているような感じだった。もちろんまともな社会生活を送ることができるわけがない。
そんなある日、警察沙汰一歩手前のトラブルを起こした。このままでは刑務所に入るかも知れないと自分自身が怖くなり、自らを省みるに至った。ノートに問題点を書き出しはじめた。「何故癇癪を起こすのか?」、「何故他人に馬鹿にされると思うのか?」、「何故殴りかかったりするのか?」等。最初は答えが出ず苦しんだ。しばらくして、「他人に助けてと言えない。」、「それ以前に他人に系統立てて言語化して伝えることが苦手。」という特徴に気がついた。言語化能力を高めるために、思い出し怒りが怖くて心の奥深くに封印していた今まで生きてきた中で辛かったこと、悲しかったこと、寂しかったこと、現状をどんどん書き出していった。どのような経験をしてどのような気持ちになってその時どうしたのかそしてこれからどうしていきたいのかを。ある程度出し切ったところで文章にまとめた。気持ちを整理してから話してもどうせ理解してもらえないと思い込んでいた、両親や周囲の人達に話したりメールを打ったりした。人間関係が少しづつ好転していき、対人トラブルを起こすことが減った。社会生活でもいい循環が生まれた。誰もわかってくれないと思い込んでいたのは、具体的に言語化することをせずに様々なことをすっ飛ばして怒りや悲しみだけをダイレクトにぶつけていたので周囲は何が何だかわからず対処に困っていたからだろう。
見捨てられていたわけではなかったのだ。
ライオンズはまた強くなる!
ノートに経験や感情等を書き出して言語化していく作業自体はそんなにしんどくなかった。一番しんどかったのは、「感情をコントロールしながら自分自身の弱さと向かい合うこと。」だった。
精神面が鍛えられた。
言語化能力を高めることが精神面の強化につながった。
第一線で活躍するアスリートを見ていても、感情をコントロールすることや精神面の強化の大切さを感じる。
ライオンズの1~2年目の選手達は試合や練習があったその日のうちにアプリで目標と今日よかったところ(Good)、悪かったところ(Bad)、次どうしていきたいか(Next)を書き込み、それらをスタッフとコーチの間で共有し、その日のうちにコーチや育成担当からフィードバックが書き込まれるという。
選手達は適切な指導を受け、フロントも首脳陣もしっかり考えて動いている。
ライオンズはまた強くなる!
そう信じている。