アンダースローは人生に似ている気がする~チバリヨー與座海人投手!~
※この文章は文春野球フレッシュオールスター2020に投稿した作品です。
パナソニック・與座健人投手の弟さんは・・・・?
2019年7月22日。
私は東京ドームで都市対抗野球大会を観ていた。
第3試合はパナソニック対JFE東日本。母方の伯父が松下電器時代にパナソニックに勤務していたことと巨漢のロマン枠・片山勢三選手を追いかけたくて三塁側のパナソニックを応援。
しかし、この年の優勝チームのJFE東日本に押されて劣勢気味。ご贔屓の片山選手の打棒も不調。それでもチアのフォーメーションダンスも伝統あるチームらしくしっかりしていて、応援団の河内音頭も楽しかったので退屈しなかった。
先発ピッチャーがノックアウトされてからピッチャーが次々と交代。ニチダイから補強選手で入っていた元カープの西原圭大投手も登板。
この試合で投げたパナソニックのピッチャーの中で、與座健人投手に興味を持った。
どこにどう惹かれたのかは一年以上経過した今では具体的には思い出せないが、あまり大柄ではない身体で150km台の球を投げてメリハリがある投球をしていたのと自分の仕事を飄々とこなしている感じが気に入った記憶がある。
この試合はかなり前の席で観ていた。
抑えてベンチに戻り、選手や首脳陣に迎えられた與座健人投手に妙な既視感を覚え、帰宅中の電車の中で調べた。
やはり、與座健人投手は埼玉西武ライオンズの與座海人投手のお兄様だった。
與座海人投手についてと私が応援する理由
與座海人投手は沖縄県浦添市出身。沖縄尚学高校から岐阜経済大学(現・岐阜協立大学)に進学。2017年のドラフトで埼玉西武ライオンズから5位で指名されて入団した右投右打のアンダースロー投手。
2018年オフに以前から状態が良くなかった右ひじのトミー・ジョン手術を受け、2019年は育成選手として契約。この年のシーズンオフに支配下に復帰し、2020年シーズンのライオンズの秘密兵器としてマスコミに取り上げられる機会が増えた。
私は3年前に西武新宿線沿線に引っ越した。それ以降、郷に入れば郷に従えでライオンズにより興味を持つようになった。また、子どもの頃から今に至るまで何故かスター選手にあまり興味を持たないタイプで、興味深い経歴だったり陽のあたらない場所で努力を重ねてきた人間が好き。
與座投手がドラフトで指名された時にアルバイト先のコンビニエンスストアに、「当店のアルバイトの與座海人投手が埼玉西武ライオンズにドラフト指名されました」という張り紙かPOPが貼られたというツイートがRTでタイムラインに流れてきた。
大学野球界では無名の大学出身、コンビニでアルバイトをしながら大学に通い野球をしている。私のストライクゾーンにぴったり当てはまった。また、昔からアンダースローの投手が好きなことも大きい。
與座投手の右ひじの調子が良くないことはスポーツ新聞を読んで把握していた。トミー・ジョン手術後に育成契約になったとの記事を見た時は、支配下にまた戻ってきてほしいと気にかけていた。
なので、支配下に復帰した時は安堵し、今年の7月23日のマリーンズ戦でプロ初勝利を挙げた時は自分のことのようにうれしかった。
アンダースローは人生に似ている気がする
私は2007年夏、心身のバランスを酷く崩した。
当時名古屋市内で一人暮らしをしていたが、日常生活も困難になり三重県の実家に戻った。はっきり言うと廃人同然。そんな中でも少しでも外の空気を吸おう体力をつけようと実家から徒歩10分ほどの場所にある、私の母校でもある小学校まで散歩をしていた。実家は田舎にあるのでこの時代でも普通に校門をくぐって校庭に入ることができた。
ご多分にもれず少子化の影響で児童数は激減していたため、校庭の半分が野球場になっていた。しっかりと造られたマウンドもあった。散歩に行くたびにマウンドに登ってアンダースローのフォームでシャドーピッチングを続けた。
何故そのようなことをしたのかわからない。
しかし、アンダースローのフォームは下半身の粘りや強さが必要で、もしかしたら一番難しい投球フォームではないかと気づいたことは今でもしっかり覚えている。アンダースローのプロ野球選手が少数派だという理由が理解できた気がした。
何度も何度もずっこけた。
それでも懲りずにマウンド上でアンダースローでのシャドーピッチングをくり返した。
ある時、派手にずっこけた。
情けなさとずっこけ方の滑稽さに泣きながら笑った。
まるで私の人生のようだと思った。
それからずっこけることが怖くなくなった。ずっこけ上等とすら思うようになった。そして、しっかりと地に足をつけて生きられる大人になろうと思った。
しかし、13年経った今も残念ながらそうなれていない。
時にはしょうもないプライドが邪魔してずっこけることに必要以上に恥ずかしさを覚えたり、不甲斐ない自分自身への腹立たしさを感じながら生きている。
それでも、生きていてそれなりに楽しい。
あの時、小学校の校庭のマウンドでアンダースローのフォームでシャドーピッチングを続けたことが、お世辞にも順調とはいえない人生を楽しみながら乗り越えている基礎になっていると今にして思う。
與座投手は8月13日の東北楽天戦に先発したものの2回1/3で降板。チームは7連敗という不本意な結果に。
難易度が高いアンダースローに大学入学後に転向してわずか数年でプロ入りした與座投手なら、また浮かび上がってこれるはず。そう願っている。
ずっこけることをくり返して、地に足をつけることの大切さを学習する。
アンダースローは人生に似ている気がする。
チバリヨー與座海人投手!
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【後記(9/1)】
いやはやお恥ずかしい・・・・
いつもにも増して酷い。
出場された方のコラムを拝見しても、在校生の皆さんが応募された原稿を拝見しても、自分自身の考えの甘さと準備不足を恥じるばかり。
今年はNPBのフレッシュオールスターが中止になったので、文春野球フレッシュオールスターも開催されないと思っていて、自主休学中の身なのでゆっくり心と身体を休めようと考えていた。
自分自身の考えの甘さと能力の低さと準備不足が、この惨状を引き起こした。
しかし、心身ともに酷い状態の中で原稿を書き上げた自分を少しでも自分でほめないと、これから前へ進めない気がするのでほめる。
GJ!自分。
持病の身体醜形障害の発作が原因の自傷行為で右手の親指と人差し指をやけどしたことによる激痛でキーボードを打つことが大変で、ロキソニンを服用しながら第一稿を完成させたのが8月13日の午前5時。義父危篤の連絡が来たのが14日の午前0時半頃。これから1週間は身動きが取れなくなると考えて、主人とこれからのことを話し合った後に2時前にパソコンに向かって推敲
開始。4時前に応募原稿を送信。その後、義父が4時半に亡くなったと連絡を受けた。
この4時間が24時間以上に感じた。
時間に余裕があれば・・・・という言い訳はしない。
これが私の今の力だということだ。
もっと書く地力がつくように努力していく。
余談だが、8月22日にBS-TBSの『裸のアスリート2』という番組で與座海人投手の特集が放送された。録画したものを何度も観ている。與座投手のことにより興味を持つようになった。
今シーズン中にまた與座投手の一軍でのピッチングを見たい。
【追記(9/4)】
文春野球フレッシュオールスター2020でこんな酷い出来の作品に努力賞をいただいた。
恐縮を感謝が入り混じった心境。
心身ともにどん底の状態だったので努力賞の欄に私のペンネームを見つけた時は、「生きていていいんだ。」という気持ちに心からなることができてうれし泣きをした。
この原稿を拾っていただいたことを感謝して、心身の状態がいい時に書き直すことに決めた。
完成はいつになるかわからないが。
文春野球学校の関係者のみ閲覧可能なサイトにこの原稿をアップした際にありがたいことに在校生の方々からいただいたコメントをヒントに、もう少し拡がりを持てる内容に書き直したい。