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英語が話せないのに。救急車に乗って外人さんの通訳をした話
実はコレ。
今現在働いている仕事場での出来事。
もう何年か前の話ですが。
とっても印象に残り、自分の何かが動き出した出来事です。
その日は、35度を超える炎天下でした。
毎日毎日、気温が高すぎてニュースでは
「外出は原則禁止」そんな警報までみかけるまでに。
そんな中、ワタシは出勤でした。
その日のお泊りの方で
ニュージーランド在住のある親子のお客様が宿泊されていました。
お母様もお嬢様もとってもフレンドリー。
でもテーマにもあるとおり、ワタシは一切英語が話せません。
そして逆に。
お客様も日本語が全く話せない方々でした。
何日か連泊をされている方でした。
でも、観光にきた割には。
海外からお越し頂いた割には。
「めちゃくちゃ荷物が少ない」そんな風に見えたお客様でした。
ボストンバック1人2個。
たったこれだけの荷物で日本に来たのです。
最初から、受付では不思議な方々だと
まあまあ話題になっていましたが
「接客してりゃいろんなお客様」がいらっしゃるわけで苦笑
みんなそこまで気にしてなかったのです。
ある日、お客様のお部屋から、内線電話が。
話は通じなくても、「かなり緊急」
そんな逼迫した空気が伝わってきました。
お客様は、必死に説明してくださっていましたが、申し訳ないことになにも分からず。
むろん、お客様自身もかなり動転していた様子でした。(パニックに近い)
「とにかく部屋に行こう」とお部屋に伺うことに。
ドアをノック。コンコン
「エクスキューズミー?」(これしか言えない)
「・・・・・。」(え?)
「エクスキューズミー??」(ちょっと強めにノック)
バタアアアアアン!!!!!!
3秒くらい、沈黙があり
突然ドアが勢いよく開きました。
ちょっとびっくり。
ここで、「言葉が通じないもどかしさ」を痛感しました。
「大丈夫ですか?」
「何がありましたか?」
そんな言葉すらかけてあげられない。
接客業をしていながらも
ワタシがまだまだ勉強不足で
「全てのお客様に満足していただく」には到底チカラ不足な出来事でした。
泣きながらワタシに抱きつくお母様。(ワタシも心細くてめっちゃ泣きたい・・のを我慢)
とりあえず、部屋に入ってみると、空の注射器とクスリの束。
ベッドには冷や汗をかきながら、苦しそうに嘔吐するお嬢様。
まだ入社したばかりのワタシには
経験なんてこれっぽっちもしてなくて。
どうしても状況を理解するのに時間が必要でした。
とにかく、状況が状況だったので、救急へ連絡。
すぐに来ていただきましたが
救急隊員の方もなんと英語が話せない様子でした。
不謹慎ですが。もうカオスです。
その場にいる誰もが
それぞれの立場でパニックになっていたとき。
当初流行って販売されていた「ポケトーク」という翻訳機を会社が買っていたことを思い出しました。
急いで取りにいき、必死でボタンを押しながら通訳。
救急の方の問診と
娘様の代わりに答えるお母様の通訳をしました。
結局、病院まで、「ポケトーク」(最強です・・)がないと誰も会話ができなかったため、ワタシも救急車に同伴。
そこからは、先生に事情を話して
経緯もお話し、ワタシはタクシーで戻りました。
でもその後。
部屋に荷物が残っているのと
私たちに謝罪するために、お母様が数時間後には戻られたんです。
ポケトークを使って、「はじめてまともに外人さんと会話」。
お母様が話してくださいました。
お嬢様は、糖尿病を患っていたこと。
小さい頃から、気管支も体も弱く軟弱体質であったこと。
大量の冷や汗も悪感も嘔吐も、糖尿病の一環であったこと。
部屋にあったクスリたちは全部治療のためだったこと。
日本の友人に会うために来たこと。
最後にたくさんいるスタッフの中で「いっしょについて来てくれた子、まだいるかしら?」と呼んでくださっていたようでした。
ワタシは、まだ病院からの帰宅中でしたが、到着後すぐにお部屋に伺いました。
清掃の係りが、掃除をしている最中でしたが
お母様は、そのひとりひとりに頭を下げては「Thank you」と「sorry」を申し訳なさそうに繰り返していました。
英語の話せない、掃除のおばちゃんは
「おばちゃん精神」でなのか。
明らかに年下の、外人さんママの手を握って
ガッツリ日本語で
「がんばってね」と声をかけていました。
お母様にはきっと、何て言っているのか伝わらなかっただろうけれど
手をぎゅっと握り返して「Thank you very much.(本当にありがとう)」と答えていました。
何も出来ずに
玄関先で突っ立っているワタシに気がつき
お母様が駆け寄ってきてくださり
ワタシが手に持っているポケトークを「私によこして」といわんばかりにひったくりました。
そしてポケトークに笑顔で話しかけ
ワタシに見せてくれました。
My daughter was saved thanks to you.Thank you.
表示されたのはこの英語。
その下にこんな文章が訳されていました。
あなたのおかげで娘が助かりました。ありがとう
ワタシの肩を
ポンポンとたたいてくださったのです。
もうどうなるかと思ったのに。
「こうゆうときどうしたら・・・」と
AEDを探そうかとも迷ってしまって
結局、体が動かなかったのに。
そんな「役立たず」なワタシに、「ありがとう」といってくださった。
ガマンできずに、情けないことに。お客様の前で泣いてしまいました。。
言葉が通じなくても、「助けたい」「どうにかしてあげたい」そんな気持ちは伝わってくれるんだなと。
ワタシのチカラではなくって
たまたま購入した「ポケトーク」があったこと。
救急隊員の方がいらっしゃったこと。
ワタシはその間に入って各々の口元にポケトークをかざすだけの役割でした。
本当は「ワタシ」がどうにか対応しなくてはいけなかったのに。
そんなワタシに、「ありがとう」と声をかけてくださったのです。
今の時期も含めて。ものすごく大変なこともありました。
辞めたいと思うことなんて何回もありました。
それでも、「辞めたくない」と矛盾する答えを抱えて
ここまでワタシを「接客スタッフ」として存在させてくれているのは
紛れもなくお客様です。
「接客以外の仕事ができない理由」
それは「誰かの役に立っている」
そう実感できる場面が、多かれ少なかれあるから。
キツイ、ツライ。
そんなことも含めた「やりがい」が。
今のワタシを生かしている。
そう思うからです。
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