Microsoft de:code2020で学べるITの入り口
まず前提に、この記事はMicrosoft de:codeというイベントをご存知、または参加されたことがある人には物足りない内容となります。対象となる目的は、普段ExcelやWordを使って事務仕事をしている人向けや、その人を支援する人向けです。
また、多くは基調講演の中で語られていますが、技術者にとっては「ほうほう」という話でもITにあまり触れていない人にとっては何言ってるんだかさっぱりだ・・自分はどこを見ればいいのか分からない、といった人向けになります。
Microsoft de:codeとは何か
まずイベントページの入り口です。イベントページから参加登録をしてください。
参加登録には、microsoftアカウントが必要ですが、個人の登録をしたい場合はGmailなどでフリーアドレスを作成してそれで登録してください。出来ます。
また、サインインなどの為にスマートフォンにMicrosoft Authenticaterのアプリを入れておくと良いです。
(オーセンティケータとはサインイン時の認証を行うアプリで、随時発行されるワンタイムパスワードのようなものです。)
https://www.microsoft.com/ja-jp/events/decode/2020/default.aspx
de:code(デコード)とはWindowsの製造元であるMicrosoftが主催するイベントで、去年までは毎年この時期に東京で開催されていたマイクロソフトの技術イベントです。
主な参加者は、SIer(システムインテグレータ)やIT業界を始め、各業界のIT部門やCxO(最高○○責任者)、システム導入や開発のマネージャやエンジニアが参加していて、そもそも参加料に一般でで6万円余りの参加料が必要でした。
また、開催場所が東京で、しかも2~3日にわたり様々なセッションが開催されるため、地方の企業に属する方や技術に貪欲なエンジニアや学生などには参加しづらいイベントでもありました。
セッションの内容も、技術性の高いものや、費用をかけてマイクロソフトと一緒になって実現した事例などが紹介され、一部分(基調講演など)はマイクロソフト公式やマイクロソフト社員の発信で得ることができましたが、やはりその場に行かないと得られない情報は多々ありましたし、人気のあるサービスのセッションはそもそもすぐにチケットが売切れたり、会場内に入れない、といったこともありました。
専門的である、ということは普段ExcelやWord、PowerPointなどOffice機能を「使う」ことしか知らない人にとっては未知の世界。
そんな遠い世界、でした。ITを知っている人、decodeを知っているけど参加したことがない人にとっては触れられないことが悔しい人もいます、自分がそうでした。
コロナで変わったイベントの在り方
de;codeを開催する前に、毎年アメリカではMicrosoft Build というこちらも技術イベントが開催されます。
Microsoftの社員を始め、Microsoft MVPの受賞者、その他IT企業のエンジニアなどMicrosoft社員から招待を受けた人などが参加できる一大イベントです。Appleでも9月、ちょうどiPhoneなど新型が発表になるイベントが9月の2週目などにあって、その翌週に新型デバイスが発売される、というように恒例行事になっていますね。
今年はコロナウィルスによって様々な物理イベントを中止せざるを得ませんでした。
MS Buildも例外ではなく、また本国であるアメリカはパンデミックとなり、日本以上に外出に対する厳しい体制が取られています。
マイクロソフトも例に漏れることなく、そんな中で物理開催も出来ず、オンライン開催となりました。
de:code2020も例外ではなく、オンライン開催となり、まず場所の制約がなくなりました。
また、オンライン開催でも有料チケット制とすることは可能です。バウチャーを購入した人だけが参加できるという仕組みは普通に存在していますが、今回は無料公開、しかもリアルタイムで見る必要がなく、オンデマンド配信が実施されることで、参加者への負担を減らすという素晴らしい考慮がされています。
加えて、decode夏まつり、といったコミュニティイベントが開催され、Microsoft MVPの方々によるdecodeの見どころ紹介といったイベントなども開催されています。
今年のde:codeの大きな変化
技術系イベント、しかもマイクロソフト主催のイベントなのでマイクロソフト製品の紹介やIT用語、IT技術のサービス説明などは当然多く含まれます。
そんな中、世の中で新しい働き方・生活様式と騒がれているように、マイクロソフトもリモートにかなり注力している部分が多くあります。
リモートワークをする、ということは同じオフィス内で業務をしていた状態から変わり、エンドユーザー(営業や事務、物流や製造など一般社員と呼ばれる人たち)間のコミュニケーションが大きく様相を変えます。
それらに対応するために各企業の情シスなどはあたふたと対応していますし、それらの方を助けるサービス紹介も多々あります。
しかしながら、今回のイベントで多く見受けられるのが「OfficeやPowerPlatform」を用いた市民開発者へのアプローチです。
市民開発者とは
市民開発者とは、今までで言うと「プログラミング」「ビルド」「デプロイ」といったことをしているシステムエンジニア・プログラマのようなことをしておらず、「VBA」「マクロ」「関数」といったExcelやGoogleスプレッドシートなどで日々の業務をその状況に合わせて改修していた人たちを指します。
正しいプログラミング知識はないけれど、簡単なマクロの記録などで提携作業を楽にしていた人たちを市民開発者と言います。
なぜ市民開発者へアプローチしているのか
プロの開発者やITサービスを取り込むIT部門など会社としての動きによるシステム開発は、開発に十分な人員やその人たちの給料、システムパッケージの購入費用、サーバーや開発環境の構築・維持のための多くの費用投入が必要で、また完璧に近いシステムではなければいけない為、緻密な設計が必要でした。
しかし、年々世の中の動きはスピードを求められており、コロナ禍の現在においてはその変化のスピードは企業の生死を左右しています。
そんな中で悠長に完璧を求めるより、如何にスピーディに改善する人達が活躍することが求められています。
ですが、現場で仕事をしている人たちは技術者じゃないのでプログラムなんてほとんど分かりません。
そんな人たちの為に、GUI(グラフィックユーザーインターフェース)とよばれる「画面でオブジェクト(図形やリストなど)を配置して、そこに入力する、ユーザー情報を取得するなどの処理を加える」というものを用意したのがPowerPlatformで、それらにプログラミングは必要ありません(変数を変える、関数を書く、といった作業は発生します)。
簡単な申請機能や報告、スケジュールへの登録、メール通知など今まで手でやっていたことを、自動化することが簡単になりました。
日々業務をやっていれば、例えば「時間を記入する」「氏名を記入する」、「記入したら○○さんへ渡す」「記入漏れがあったら差し戻す」といった業務フローや判断、帳票や「書かれた内容をExcelにまとめて出力する」といった業務が存在していると思います。
重ねてになりますが、それらを簡単に作れてしまうのがPowerPlatform(PowerApps(アプリ)、PowerBI(ビジネスインテリジェンス)、PowerAutomate(自動処理:RPAといわれるもの)、PowerVirtualAgent(チャットボット))です。
見るといいセッション
PowerPlatformの話を主にしましたが、普段使うOffice(Excel,PowerPoint,docs)なども紹介されています。
なので、分け隔てなく入門者向けのセッションを紹介したいと思います。
セッションリストはこちら。
https://www.microsoft.com/ja-jp/events/decode/2020session/search.aspx
1.基調講演(K01)
35:30あたりからPowerPlatformの紹介があります。
2.時短に役立つOfficeの最新機能(M03)
一番おなじみのOfficeの知られざる機能(といっても表示はされているけれど、今までの感覚からすると使ったことが無いであろう機能)を色々紹介してくれています。
もうちょっと踏み込んで紹介してくれているとよかったんですけれど、まぁそこまでは求めすぎでもあるので、この動画を見て色んな機能に触れてもらうきっかけになるといいのかな、と思います。
3.Microsoft Teamsアプリケーション開発入門(M01)
アプリ開発者向けなので自分で作る、ということになるかどうか微妙な部分ではありますが、採用手続きの進捗などを把握できるBotづくりに関して説明してたりするので、例えば同じケースや、見積依頼→顧客発注までの流れなどをTeamsで管理したい人には参考になると思います。
また、実際作るのは社内の開発チームに依頼することになりますが、こんな例でこういうカスタマイズをしてほしいです!という話の材料になるでしょうし、普段皆さんが依頼している社内SEの方やIT部門の方は、こういうところを考えて実装している、という「相手がどういう仕事をしているか」を知るいい機会になるかもしれません。
・・・・っとまぁ挙げ出すときりがなくなってきたのと、自分が見切れなくなってきた(見たいセッションが多数ある)ので他にどのように見ればいいかというと、業務改善系だと主にModernWorkplaceのグループ(Mxxで表記されるセッション)かBusinessApplicationsのグループ(Bxxで表記されるセッション)で、Teams/Power○○に関連するセッションをかるーく流して見てみてください。その中で気になったものをちゃんと見てみればよいかと思います(投げやりですみません)
ちなみに、ツイッターで#decode20 を検索すると、今回のdecodeに関するツイートが確認できます。公式ハッシュタグですね。
さいごに
あまり紹介、という紹介にはならなかったかもしれませんが、decodeって何?って人には参考にはなったのかな、と思います。
今の世の中は、あるものを組み合わせるだけで、シンプルなものごとは比較的簡単に便利なものが出来上がる時代です。
自分もシステム設計やお客さんに対して導入のお手伝いをしている身ですが、プログラミング自体はしません。
また、導入や設計、というところではどちらかというと聞いてそれを纏め、文章や図形、フォーマットにすることが主な仕事で、フローを描いたりパターンを考えたりすることがほとんどです。
そういう意味では自分もローコード(簡単なコードでシステムが出来る)、ノーコード(プログラムを書かずに自動化が出来る)にかなりの可能性を見ていますし、市民開発者としてマイクロソフト、Googleのクラウドサービスには多数助けられています。
大規模なものはピタゴラスイッチみたいに複雑に出来ていますが、ピタゴラスイッチも元はテコの原理や振り子の原理、遠心力、慣性の法則など物理の法則を組み合わせただけのように、分解すればこれとこれをこうして、は普段から考えていることだと思います。
それがITの力でどうにか出来るものならやればいいし、ITに拘る必要もありません。紙の方が早いなら紙でやるのもいいでしょう、なんでもペーパーレスにする必要はないんです。ハンコ文化も同じ。
目的が達成できて、それが最適解なら変に手を入れる必要はありません。
ただ、それが常に今の最適解か、を疑う必要はあります。
「ITで何が出来るか分からないからそんな発想が出来ない」のであれば、このセッションを見て「簡単にできそうだしやってみよ」とチャレンジしてみたり「ねぇ、こういうことできないの?」と話題に上がることで仕事のやり方は簡単に変わっていく場合もあります。
(ちなみにOffice365やPowerPlatformといった昨今のマイクロソフトのクラウドサービスは当然会社が契約していることが前提で、尚且つ契約しているプランによって使える機能が制限されています。全社的にやっていない場合は、同僚や上司にこういうことしたいんですけど、と提案してみるのもありでしょう。1部署から使い始める、は出来ますけれど、情シスやIT部門は全社で入れることを望んでいます。個別パターンが増えることは管理が煩雑になり大変なので)
そうやって、少しでもテクノロジーに対するアレルギーを無くし、話し合える優しい世界になれば、と思います。
Pay it Forward、恩送り、という言葉があります。↓に書くコミュニティでも掲げられている思想で、自分が受けた恩を、与えてくれた人に返すのではなく、他に人に対して広げていくことで世の中をよりよくしていきましょう、というお話です。この記事もその一つです。
今回、コロナの影響が出る前からPowerAutomateは活用していましたが、コミュニティに入ったことでコミュニティ内の一部機能を関数組んだりSlack連携したりとしたことで自分への学びにもなりました。
それらの恩送りとしてこの記事が読者のみなさんの役に立てばと思います。
また、自分の仕事とは一切関係ないですが、自分もコロナ対策エンジニア(@COVID19ENGR)のコミュニティメンバーの末席に身を置いているので、ここらへんの質問あれば真摯にお答えさせていただきます。
おしまい