(プレイしたゲーム)Inverted Angel (ネタバレなし)
Inverted Angel
突然訪ねてきた恋人を自称する見知らぬ女性。
彼女となんとなーく話を合わせながら、彼女が何者か、ただの自称恋人ストーカーなのか、実は本当に恋人なのか、それともほかの何者かなのか…を推理していく。
ただし彼女の正体は、プレイヤー自身の推理や想像、それによって導かれていく話の展開によって変わってきます。
本当に彼女であるかもしれないし、ただの危険なストーカーであることもある。
「たったひとつの真実」があって、そのゴールを目指すゲームではありません。
最近プレイしたゲームの中ではトップクラスに面白かったので紹介します。(後日、感想も追記するか、別記事を作る予定)
いろんな結末があるって意味では「かまいたちの夜」に近いのかなあ?
AIを利用した自由入力でプレイヤーの想像力に働きかける
話を進めていくと、最初にプレイヤーが話に介入できるのは「彼女が何者か」についての想像です。
この時では彼女の正体について確定できる十分な情報は全くなく、あくまで推測であり、こうかもしれないな、こういう可能性も考えられるなという想像になります。
自由入力(キーボード入力)なので、発想は完全に自由です。
ここ、たしかわざわざプレイヤーが入力するんだから「彼女」とか、「ストーカー」とかじゃなくてちょっとひねってあるんだろうなと思って、自分は初回「妹」って入力した気がします。
これを見たらわかる通り、プレイヤーの入力をAIが解釈してゲーム側で用意してある選択肢に誘導してくれる感じ。
「妹」なら「義理の姉妹」、「宗教の勧誘」なら「強引な勧誘や訪問販売など悪人」、「彼女」なら「自分の恋人」として受け付けてくれます。
なので自由入力とはいえなんでもOKではなく、さすがに「昨日助けたツル」とかはダメですね。突飛な入力に対してAIがそれに対応したお話を作ってくれるゲームではないです。あー、でもツルはギリギリありそうじゃない?
AIを利用してプレイヤーの入力をうまく解釈できるようにすることで、選択肢を提示せず、プレイヤーの想像力に働きかけることに成功していると思います。話を進めるためには必ず何かを考える必要がある。
また、自由入力で解答するゲームはたくさんあると思いますが、入力面で一字一句全てあってないとダメとか、そうでなくとも多少のストレスがあったと思います。
このゲームでは「ガールフレンド」でも「愛人」でも「自分の恋人」として判定します。
まあこの例だとあんまりピンとこない感じですけど、ゲーム後半、ストーリーが進んできて、「○○が○○したのはなぜ?」みたいなもっと複雑な入力が求められても推理内容やニュアンスの方向性さえ合っていればいい感じに判定してくれます。(どちらかというと、難易度の問題もあって後半はちょっとゆるくなってしまってますが)
どうしてもわかんないから攻略サイト見たら、「それは考えてたのに言い方が違うだけじゃん!」みたいな理不尽さは感じにくいです。もちろん、ある程度は言い換えとか伝え方を変えて試す必要がありましたが、エンディングリスト埋めるまでに「推理はあってたのにどう頑張っても正答にしてもらえなかった」と感じた場面はありませんでした。
このあたり、ゲームをどこまで信頼するかという問題でもあって、場合によってはギブアップして答え見てもこんなの分かるはずないと感じてしまうゲームもあります。
その点、このゲームは信頼してよいと思っています。上に書いた通りAIの判定がほどよく緩いですし、それ以外も丁寧に作られている印象。
途中詰まる場面でも、頑張ってみることをおすすめします。
自分はなんとか全てのエンディングを自力で埋めましたが、攻略情報見たら絶対に後悔してました。
多彩なエンディングとそこに至るために試される発想力
見知らぬ女性をひとまず本当に恋人かもと考えてみるか、いやどう考えてもストーカーでしょと決めつけるか、またはそれ以外の何かと等プレイヤーがどう考えるかでストーリーが分岐していきます。(想像パート)
分岐点では自由入力が求められますから、正答パターンは自分で発見していく必要があります。(ちなみに選択肢を明示して提示される場面もあります。)
序盤は情報が少なく、ほぼ勘というか決めつけ。序盤以降では情報が増えてきているのでこうかも?というところや、多少の誘導も入ってきます。
この場面では推理というよりは想像力が試されるところ。少しひねくれた想像をしてもゲームが答えを用意してあったりします。
このあたりはこのゲームの本当にいいところで、丁寧に作られているなと感じたところでもあります。
さすがにこんな解答想定してなくない?→想定済みかよ! というのがプレイ中の楽しみの一つでした。想像力をかきたてるいい仕組みになっています。
明らかにされない選択肢を探り当てることは人によってはストレスを感じ得る部分だと思いますが、それ故に見つけたときの嬉しさも大きいわけで、そこはどうしてもトレードオフになってしまいますね。
しかし新しい分岐を発見した時の興奮は忘れられないゲーム体験になったので、私個人としては何も見ずにエンディングを探し回ることをおすすめします。
ただし、どこで分岐が発生するかすら分からないし、長くプレイしてると考えが凝り固まったりするので覚悟が必要かもしれません…。
というかハマりまくって攻略後半は新しいエンディング1個探すだけで数時間ペースだった。みんながどこでハマったとかすごく気になる。
想像パートを続けていくとストーリーの分岐が進み推理パートに移行します。
ここでは、想像力と言うよりは推理力で解答を求めることになります。
しかし、バックログにそれらしい答えがあったり、それらしい解答をすればヒントが返ってきたりするので、ちょうどいい難易度になっています。
国語のテストがめちゃくちゃ苦手だったとかそういう記憶がなければ大丈夫。
推理パートを進めていくと、当然何かしらのエンディングに到達するわけですが、特筆すべきはそのバリエーションの多彩さですね!
ネタバレになってしまうのであまり書きたくありませんが、結末の振れ幅の大きさは本当にすごい。始まりはいっしょなのにね。
また、結末の違いの割に設定の破綻がほとんどなく、すごく丁寧に作られている印象。
自分は正直最初ナメてて、マルチエンディングだからちょっとくらい違和感あっても気にせず見逃してたらちゃんと意味があったりしたね!
理屈っぽい割に感情的な彼女、あるいはただひたすらにめんどくさい女
このゲームを紹介したいなら忘れずに書いておきたいのがこの訪問者(知らない女性、自称彼女)兼ヒロインの存在。
彼女を好きになれるかどうかでゲームの評価が大きく変わるはず。
本当に最初だけ、自分に対して愛情が深く(ヤンデレあるいはストーカー)、おしゃべりで、あーそういう感じね、って感じなんですが、別の意味でおもしれー女、つまり「変なやつ」であることがわかると思います。
インターフォン越しに会話するというシチュエーション、たしかにチューリングテストじみてはいますし、もちろんそういう流れの話ではありますが⋯
ちょっと哲学的なことも話してきます。
全編を通して彼女は常にこんな感じで、小難しいこと、よくわからない話、それでありながら間接的に関係のある話を話しながら、真意や真実を匂わせ、いきなり声を張り上げたり、時にはドアをパンプスで蹴り上げたりします。
ちなみに一番下の選択肢(さっき見た夢の話について聞く)を選ぶとホタテの採苗器の話が聞けます。
また、こういう感じだと、テキストの読みやすさも気になるところですが、かなり読みやすい部類に入ると思います。
ただし、書いたとおり彼女が躊躇なく難しい話をしてくるのは確かなので、結構頭を使うことになります。
賢い彼女のペースは独特でついていくのは大変ですが、丁寧に説明してくれるタイプなので、ゆっくり読み進めればちゃんと理解できる。
おしゃべりだけどいい子なんですよ。
クリアを目指すというよりは、案外彼女との会話を楽しむのがメインかもしれません。
2個くらいエンディング見たらあなたも彼女の可愛さに気付いてくれるはず。
全部クリアし終えたらもう恋していることでしょう。
また、彼女自身の話とは離れますけど、全体的にメルヘンで、詩的な部分もあります。
各エンディングで全貌が明らかになったあと、謎が解けてすっきりしつつ、それ以外にさみしさやら切なさ愛しさみたいな感情を残してくるのもよいところです。あと一部バッドエンドの鋭さ。
面白さもそうですが、ぜひみんなにプレイして欲しいゲームです。