バッハ シンフォニア第3番【解説】 BWV789
主題と2つの対位主題が織りなすフーガ3声の習作。旋律が3声に渡って同時に流れている為、音価(音の長さ)を厳格に守り、注意深く音を聴く必要がある。また、3度や6度のハーモニーが魅せる、明るく美しい響きは印象的。躍動感をもつ音型にも注目。
三つの主題
主題は冒頭の右手の部分、2小節半に渡る旋律です。
主題に続いて、対位旋律(=対旋律)が2つ出てきます。
赤色で示したものが主題、黄色が対位主題1、青色が対位主題2です。(念のため青色はソ♯からスタートです)
基本的にはこの3つの旋律が上へ下へと入れ替えをして
3小節目、6小節目、10小節目、19小節目、21小節目、23小節目の計6回全て違う組み合わせで出現します。
他の部分はゼクエンツやストレッタが駆使された間奏という扱いで大丈夫です。
ストレッタ
曲の途中で出てくる唯一のカデンツァ(=終止形)は14小節目の2、3拍目です。その3拍目から4小節かけてストレッタを使用した一番華やかな間奏が始まります。
ストレッタとは、主題が完結する前に矢継ぎ早に次なる主題が現れ、緊迫感を生む手法のことです。
ここでは模倣(=カノン)が使われ、喜びに満ちた掛け合いになっています。喜びが抑えきれないといった雰囲気でしょうか。
この後、曲中で一番長い全音符のベースが響いた後に、第3提示部(19小節目)に突入します。
2つの対旋律を携えた主題の登場です。旋律の入れ替えの通り、色の配置が変わります。
妙なるハーモニー
これだけフーガが重なれば不協和音の嵐になりそうなものですが、以外に美しい和音が多いです。
例えば5小節目の3度の下降形、18小節目の3度の上降形、19、21小節目にみられる6度の上降形等です。
12小節目から始まるゼクエンツの部分もとても感動的で美しい和声の移り変わり方をしています。この美しさを感じられれば、ここの部分は大成功です。
赤丸をして黄色で塗ったところは縦の線がとても美しいです。これは、タイで延ばされた音を感じることがとても大切です。
赤丸をした青色で塗ったところは横の線が美しいです。
個人的にはここの2小節間が一番美しく感じる箇所です。
3つの主題によるポリフォニックな動きが特徴の曲ですが、魅力的な場面は意外に間奏に詰まっているところが面白いですね。
構成
第一提示部(主調・二長調)1~8小節目
間奏1
第二提示部(平行調・ロ短調)10~12小節目
間奏2
間奏3(ストレッタ付き)
第三提示部(下属調・ト長調を経て主調・二長調へ)19~25小節目
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