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遠距離通学の僕等の朝は早い。 白さの密度が随分と濃い息を吐きながら、幼馴染の聖と駅のホームへ駆け込む。彼女はマフラーをかきあげ、息を整えながら、僕と並んで列車を待つ。 しばらくの沈黙。 ふと、何かに気付いた彼女は肘で僕を突き、マフラー越しのくぐもった声で僕に問う。 「あすこのさ、椅子に座ってるおじさんさ?」 「ん?あのおじさん?」 「色おかしくない?」 その視線の先、向いのホームには、ぐだんぐだんの酔っ払いが堅い椅子に引っかかってる。顔色は青ざめ、予断を許さぬ感じだ。
「ついさっき、失恋したんですよ。そこの角で」 まるで、ぽろりと落し物でもしたみたいに 彼女は困ったように笑って言った。 僕はただ、「あぁそうですか」と頷いて。 「そんで、慰めてくれる人大募集中!なんですが」 なんですが、って。 ねぇ? 僕はただのしがないよっぱらいで。 一昨日振られたばかりのよっぱらいで。 ここでこうやって大の字になって歩道にねっころがって。 誰かに構って欲しくって、しょうがないんですよ。 そんな僕に、慰めろだなんて。 ねぇ? 「とりあえず、ちょっと起