【コトリ会議】インタビュー企画⑧「花屋敷鴨」
どうも、劇団CLOUD9の小沢佑太です。
昨日(2024/12/02)からアイホール(伊丹市立演劇ホール)に劇場入りしました。公演本番が間近に迫っています。
コトリ会議劇団員インタビューも残すはあと2人。8人目は花屋敷鴨さんとオンラインでお話させていただきました。個人的に結構貴重ではないかと思っております。もちろん今回も1万字越えです。ごゆっくりお楽しみください。
インタビュー企画⑧
「花屋敷鴨」
自己紹介
小沢:さっそく自己紹介をお願いします。
花屋敷:コトリ会議で役者とチラシのイラストをしています、花屋敷鴨と申します。実は劇団に入ってから名前を一度改名していて、元々牛嶋千佳の名前でやっていました。花屋敷鴨になったときにそんなに周知したわけでもなかったので、皆さんにあんまり知られてないかもしれませんが…。花屋敷鴨という名前で今はやらせていただいてます。
小沢:なんてお呼びするのがいいですか?
花屋敷:鴨さんって呼んでくださる人もいますし、お付き合い長い方は牛島さんが多いですね。
小沢:じゃあ鴨さんでいきますね。
花屋敷:はい、よろしくお願いします。
小沢:僕的にコトリ会議で鴨さんが一番謎が多いなって思ってて。
花屋敷:そうですよね、多分あんまり外部に出てないと思うので私。
小沢:そうなんですね。お芝居を始められたのはいつからなんですか?
花屋敷:笑 だいぶ昔の話になってしまうんですけど。ちなみにコトリ会議入ってからも、結構年月が経ってしまったので、劇団員の中でもアダルトな方に入ってしまうのですが、山本さんが劇団を立ち上げて、その次が多分私です。若旦那さんよりも前からいてます。めちゃくちゃ古い劇団員でして。
小沢:最初から出演とイラストをされてたんですか?
イラストについて
花屋敷:そうですね、若旦那さんが入られる前は、チラシのデザインはイラストも含めて別の方にお願いをしていたんですけど、若旦那さんが入られたタイミングで、ちょうどチラシのデザインをお願いする方が変わって、そのタイミングから私もイラストを描かせてもらってます。
小沢:僕の画面の後ろに微妙に映ってるんですけど、すごく独特でかわいいです。
花屋敷:ありがとうございます。
小沢:ヒューマンツバメを描いてくださったんですよね。
花屋敷:そうですね、小沢さんの後ろにいる木のちょっと上のところに、ヒューマンツバメがいるんですけど、
小沢:これを読んでくださってる方はですね、チラシを見ていただけたら、
花屋敷:ヒューマンツバメのイメージ図みたいな感じで描いた感じですね。
小沢:イラストとか絵は結構やってはったんですか?
花屋敷:いや、私は本当にもう恥ずかしいんですけど、全然素人でして。美大とかでね、専門的に絵を学んだとかっていうのはなくて、昔から絵を描くのは好きだったのでちょこちょこ描くのがずっと続いててっていう、本当にそれだけです。
小沢:すごいコトリ会議の空気感にマッチしてる気がしてるんですよ。
花屋敷:ありがとうございます。でもそれは多分、今回チラシデザインをしてくださった小泉俊さんという方がいらっしゃるんですけど、小泉さんが私のイラストにすごく素敵に色つけてくださって。
小沢:アナログで描いてるんですか?
花屋敷:はい。私アナログで描いてるんですよ。デジタルが使いこなせなくて恥ずかしいんですけど。この木もアナログですね。
小沢:だから木と留まっている鳥を描いてそれを小泉さんにお渡しして、
花屋敷:そうです。これは木と、木に留まってるヒューマンツバメの1枚絵をお渡ししてます。私は残念ながらデジタルで絵を描くのがあまり上手じゃなくて、時々勉強するんですけど、これはアナログのやつです本当に。恥ずかしいですね笑
小沢:チラシ用の絵を描くタイミングっていつなんですか?
花屋敷:絵を描くタイミングは台本ができる前だと思います。でもざっくりこういう話をつくりたいとか、プロットはお聞きしてるので、キーになるものとかイメージとかっていうのを相談させてもらいながら、今回はこういう絵を描いてもらえないかっていう提案をいただいたり、逆にどうですかっていう提案をさせていただいたりとかで描くことが多いですね。台本が出来てからのときもあります。直近のだと「全部あったかいものは」(2022)っていう作品がありまして。あのときのチラシは元々「全部あったかいものは」を初演で1回やってるっていうのがあるので(初演,2019)(菅本注:私がコトリ会議に出会った作品ですね)、何となくイメージもありますし、
小沢:再演のときは台本も書き直してるんですか?
花屋敷:書き直してますね。だいぶ違うんですけど、今日何かチラシとか持ってくればよかったですね、こういうのですみたいなのをできたらよかったんですけど、(菅本:どっちも観ましたが本当にびっくりするくらい変わってました)
演劇との出会いとMD
小沢:演劇は元々どこかで習ったとかですか?
花屋敷:全然そんなのも本当にないです。お芝居は一応高校演劇からやってるんですけど、高校演劇のときはほとんど役者はやってなくて。役者をやっていたこともありますけど、高校演劇をやっていたら大会があるので、そういう大きな大会に出場するときはだいたい音響をやってました。それで音とか録りに行ってました。なんていうか、あの、ごめんなさいね、小沢さんわかりますかね、当時MDっていうのがあってですね。
小沢:わかりますよ。父親の車にはMD入ります。
花屋敷:笑 ちょうど私が高校のときにMDを、もうちょっと年代がばれちゃって恥ずかしいんですけど、まあいいんですけど、
小沢:いやいや、僕らも使ってましたよ。僕は高校演劇出身じゃないけど高校の文化祭をやるときとかはMDでした。
花屋敷:そうですか、本当ですか?
小沢:全然高校で使ってましたし、家にありましたし、録音の仕方もわかりますし。(菅本注:私も大学演劇部時代の音響チームはMDも使ってました)
花屋敷:もう使い倒して、自分で頭出ししつつとか、曲を入れ替えたりとか。あとは効果音大全集みたいなCDがあるんですけどね、当時欲しい音がなくて、自分で音を録りに行ったりしてました。でも全然大したことなくて、
小沢:今はスマホで簡単に録音できるけど、当時は難しかったんじゃないですか?
花屋敷:学生でお金がないから笑 百均で買ったすごい安いマイクをMDウォークマンにくっつけて、録りに行ったりしてたんですけど、もう音も音質も悪いし、みたいな思い出がある感じで、音響をやってました。
小沢:役者はいつ頃から本格的に始めたんですか?
花屋敷:大学の同級生の子が社会人劇団に入っていて、その社会人劇団で「ちょっと役者を探してるんだけど演劇興味ない?」っていうので、元々演劇部っていうのもあって、そこで社会人劇団に入って、役者をやり始めたっていう感じですね。そこで山本さん(=山本正典)が同じ劇団に入ってたんですよ。山本さんとはそこでお会いして、その後はしばらくフリーでやってたんですけど、コトリ会議が始まる前に、山本さんが立ち上げた「のび劇団のび」というユニットに私も出演して、その繋がりでコトリ会議が始まって。私は立ち上げメンバーではないんですけど、第一回めの公演からちょっとお手伝いで関わらせてもらってて、2回めで役者で参加、3回め公演のときに入団したという経緯です。
コトリ会議入団
小沢:なんで入ろうと思ったんですか?
花屋敷:うーん、私の考え方ですけど、フリーでずっとやるよりかは、どこかに所属して役者をやった方が、継続して自分を観てくれる人が1人いてくれるなって思ったというのがありました。あと、コトリ会議は元々、今はちょっともう辞めていなくなりましたけど、山本さん以外の立ち上げメンバーの皆さんともそれぞれ繋がりがちょっとあった方たちで、お付き合いしやすいというか、演劇やりやすい環境かなっていうのもあって入団しました。
小沢:入ってからは外部にはあんまり出演してないんですか?
花屋敷:客演で出てた時期もあったんですけど、最近はちょっと、そうですね、ちょっと私生活との兼ね合いで、あんまり外には出ないというか、役者自体をちょっとセーブしてるのもあって、ただコトリ会議の本公演があるときは出るという感じでさせていただいてます。
小沢:1年に1回、2回とかですよね。
花屋敷:そうですね、そのときだけちょっと参加させてもらってるっていう感じですね。
小沢:読みとか参加させてもらって、勝手に感動してました。
花屋敷:いやいや、小沢さんに読んでいただいたときに思ったんですけど、やっぱり私コトリ会議にいて長いので、山本さんの台本とも割とお付き合いが長いんですね。なので、なんとなくこう読む、みたいなのとかがわかったりとか、もちろんわからないこともあるんですけど、これはすごくいい意味で、やっぱり小沢さんは新鮮に読んでくださるから、ものすごく発見がたくさんあって、私はちょっと毒されてるなという風に思ったりとか笑
小沢:僕はマルとテンがない、やばいわからん、と思いながら…笑
花屋敷:そうなんですよ。マルとテンがないことに慣れちゃってるから、小沢さんはこんなふうに読むんやなとか、こうやって感じはるんやなとか、ものすごい本当にめちゃくちゃ発見がありました。小沢さんもしかしたら苦戦してはったりしたかもしれないんですけど、私はもうすごくあの、今回の作品づくりにすごく活かせられるなと思うところがありました。
小沢:めっちゃ楽しかったです。
花屋敷:本当ですか。楽しく読んでもらえるとすごく私も嬉しいです。ありがとうございます。本当に新たな気づきを教えてくださいまして本当にありがとうございます。
小沢:コトリ会議の最初期からいらっしゃるってことですよね。
花屋敷:そうですね。なので、なんていうんですか、うぞうぞしてた時期を知ってるのは多分私だけじゃないかなと思います。なんですかね、最近は東京行かせてもらったりとか、若旦那さんが制作としてすごい動いてくださってて、劇団も大きく動いてるんですけど、昔は全然大きく動けなくて、もう全然鳴かず飛ばずでみたいな時期も過ごしてたなって思いますね、本当に。
小沢:若旦那さんが入ってから変わったんですか?
花屋敷:そうですね。偉そうにすみませんが、山本さんの方も成長してるなと。やっぱりたくさん書けば書くほど味も出てくるんだなと感じます。そういうのもひっくるめて、何か劇団がいい方向に動いてたんじゃないかなと思います。
小沢:若旦那さんが入ってツアーをするようになったっていうことですか?
花屋敷:そうですね、若旦那さんがそういう企画を持ってきてくださるというか。
変化
小沢:今いる劇団員が入ってきてコトリ会議の雰囲気が変わったなって思うこともありますか?
花屋敷:そうですね、雰囲気はやっぱり変わります。最初のときと比べたらやっぱり全然違いますし、でも別にそれがいいとか悪いとかはなくて、人だけじゃなくて、場所、団体っていうのも動いていくものなんだなっていうのをすごい感じますね。
小沢:どんなふうに変わったとかありますか?
花屋敷:難しいですね。どんなふうに変わったかな。なんかでも、やっぱり何て言うんですか、東京とかいろんな都市に出たことで、関西以外に出ずにやってるよりかは、単純に観てくださる方の数がわっと増えたなと思うし、菅本さんも福岡の方ですし、大阪だけやってたらやっぱ菅本さんとお会いすることはなかったでしょうから(菅本:本当に感謝です)。
だから劇団が変わったっていう話とはちょっと違いますけど、やっぱり観てくださってる方が変わりましたし、あと、公演回数も増えますし、そうすると私たちもどうお客様にアプローチしようか、っていうのは公演を重ねることで変わったりしますよね。うまくは言えないんですけど、劇場も変わりますし、どう舞台に取り組もうかみたいなのも変わるなとは思います。
あと、身近すぎて失念していたのですが、劇団員の大石丈太郎さんとか川端真奈さんなんて本当に東京の方ですし、関西だけで芝居をしていたら出会うことなかったですよねって話ですね。まさにお2人は東京で私たちが演劇させてもらって、それを観て興味を持ってくださって今は劇団員に、という感じなので、人の繋がりはだいぶ変わりましたよね。
今作『おかえりなさせませんなさい』
小沢:劇団員歴が一番長くて、山本さんの脚本にも一番触れてるじゃないですか。今回の作品について、何か教えてもらってもいいですか?
花屋敷:今回の作品について、そうですね。今回「おかえりなさせませんなさい」っていうタイトルじゃないですか。おかえりなさいにまつわる何かかなって思うと思うんですけど、やっぱり「場所」でしょうか。「居場所」って言い方は個人的にはあまり好きじゃないので、「場所」と言うのですが。
さっきちょっとお話しましたけど、人だったり時代だったりそのときの流行とか、自分が属しているコミュニティとか雰囲気って、人が変わったとか流行り物が変わることで目指すものが変わったり、コトリ会議っていうひとつの名前だったとしても、やっぱり中身は変わっていくじゃないですか。
今回の「おかえりなさせませんなさい」って家族の話なので、例えば「何々家」っていうおうちがあったとしても、時間だったり何か小さな事件があったりとか、周りの環境だったりとかでやっぱり変わっていくっていうのを、そういう今話したことをすごく感じながら、私はこの台本を今読んでます。
変わっていくものだなって思うこととか、変わらないものって何だろうとかとか、そういうことをちょっと思ったりしてるんですけど、どこまで話していいのかなっていうところもちょっとありましてですね。難しいですね。大事にしてるものを、私は忘れる/忘れないっていうところをすごく軸に考えてて、私の役柄が忘れるとか忘れないとかっていうところに結構関わってくる役柄をやっているからというのもあります。
ちょっと取り留めない話になりますけど、ちょうど今日祖母に会ってきたんですけど、かなりの高齢で。久しぶりに会ったので、結構な年だし、私のこと覚えてないんじゃないかなとか思いながら、覚えてるとか覚えてないとか、忘れてるとか忘れられてるとか、そういうことを思ったりしながら、祖母の見舞いに行ってきたんですけど。自分の取り組んでいる役がそういう役なんで、人は何を最後の瞬間に覚えているんだろうとか、どういうことを忘れたくないって思って忘れていくんだろうとか、そういうことを考えたりしつつ、今回の台本もそんな感じのことを考えながらやってます。あれだったらカットしてください、ごめんなさい。(菅本注:全然カットしなくていいと思います!)
小沢:確かに「〇〇家」っていう名前は同じなのに中身が変わっていくこと、コトリ会議っていう名前はずっと看板としてあるけどメンバーが変わっていって雰囲気が変わっていって、動きが変わっていく、家族もそうだよねっていう話だったと思うんですけど、僕は父方の祖父と母方の祖母が一昨年から1年おきに亡くなっていて、タイミングよく弟も就職して、それが直接の原因ではないんでしょうけど、うちの家族も家族としての体裁は同じでも中身が変わっていって、それぞれいろいろなことを考えながら帰ってくるんですけど、「ただいま」と「おかえり」は言い合えるんですけど、でもなんかもう確かに違うものだよなと思いながら。
花屋敷:そうですね。年を重ねていけばいくほど、親との関係性もちょっと変わってきたりしますね。私もすごくそう思います。
小沢:稽古場で、こういう内容に関する話はしますか?
花屋敷:してるんかな。私自身はあんまりせんけど、みんなしてるかもしれない。今の話みたいに「だからこうです」っていう答えの出ない話はすると思います。だけど何か自分の実体験を交えてって話はしてないんじゃないかな。いや、してるかも、私はしてないですけど。タイミングがなくて。
DM「ふとん号」
小沢:ちょっとデザインの話戻るんですけど、DMもやってくださってるじゃないですか。
花屋敷:「ふとん号」ですね。つい最近、今回送る分ができたやつですね。
小沢:「ふとん号」ってなんですか?
花屋敷:そうですよね、急にLINEで「ふとん号書いてください」みたいな言われても何のことですかと思われたかと…本当にすみません。
小沢:とりあえず500字書いてって言われました。
花屋敷:ごめんなさい、書いていただいてありがとうございました。「ふとん号」って名前の由来は特にないです。多分ただの響きだけです、何もないです。ないんですけど、多分当時の劇団員が何かノリでつけた感じだと思いますよ。山本さんかもしれません。山本さんですわ。山本さんのセンスですよね「ふとん号」なんて。山本さんですわ。(菅本注:「ふとんがふっとんだ」をモジって、全国へふっとんでいく=送られていくのだと真面目に解釈してました…)
特に由来はなくて、私が入団してから始まってると思うので、コトリ会議の第3回公演ぐらいのときに公演案内のお便りを送ろうかってなって。
ただ、チラシと、公演案内のちょっとした文章とかだけだとちょっと寂しいよねってなって、なんかちょっとこう、人から公演に寄せたコメントいただいたりとか、実際出てる人がこんなことを考えているとか、作家がこういうことを考えましたとかっていう、ちょっとした記事をいただいて、新聞じゃないんですけどちっちゃい読み物みたいなものをつけたらいいんじゃないかなっていうのを、当時の制作さんが提案してくださって、ちょっとやってみましょうかっていうので始まったのが「ふとん号」です。
小沢:サイズはハガキですか?
花屋敷:あれはA4を4つ折りにして入れていってます。コトリ会議、DMにちょっと変なこだわりがありまして、長型の封筒ではなく洋型の封筒で、ザ・お手紙という感じを出したくてですね。白い紙ではなくてクラフト紙に表面裏面と印刷して、折って、ちょっとかわいい感じの切手を、郵便局から買ってきて貼って送るっていう、ちょっとした手間をかけてる、ちょっとこだわりがあるというですね。
小沢:それってどうやったらもらえるんですか?
花屋敷:かわいい切手ですか?
小沢:あ、いや、「ふとん号」です。(菅本:小沢さんがかわいい切手をほしがっていると思う鴨さん大好き)
花屋敷:アンケートに「DMを希望されますか?」っていうのがあるんです。
小沢:なるほど。僕ずっとDMってハガキだと思ってたんですよ。でも文量的におかしいと思って。
花屋敷:ハガキやったら字がちっちゃくてお客様もう見えへんわ、もう読んでられへんわってなっちゃう。ちゃんとA4サイズで作ってます。
小沢:でもなんかそれやったらDMめっちゃ欲しいっすね。メールで済ましちゃうところが多いと思うんです。
花屋敷:でもメールは手軽でやっぱりいいなと思いますけどね、コストもかからないですし。もらう方も気軽にもらえますから。
小沢:でもあれが届いたらちょっと楽しみになります。3回目ぐらいからやられてるんですよね。いまってちなみに何回目の公演なんですか?
第何回公演?
花屋敷:それがね、劇団でもこの間その話になったんですけど、もうちょっとわからなくて、途中からカウントしてないんですよね、すいません、10回ぐらいとかってしましょうかね
小沢:1回でどれぐらい送ってるんですか?
花屋敷:どれぐらいやろ、そんなに送ってないと思いますけどね。多くても500ぐらいじゃないですかね。
小沢:作成にもめっちゃ時間かかるじゃないですか。文章の締切遅れてごめんなさい。
花屋敷:全然大丈夫です、若旦那さんも遅れたんで笑
小沢:笑 イラストの仕事が終わったら次「ふとん号」を作って、と思えばセリフはめっちゃ多いし、結構忙しいですよね。
イラストデザインと役者の両立
花屋敷:そうですね、そうかもしれませんね、でも今回はまだ大丈夫です。こんなんは良くないんですけど、やっぱり絵を描くとか何かを書くときに気持ちが乗らないときってあってですね。気持ちが乗らないときはもう「すいません」って謝り倒して原稿が死ぬほど遅れるときもありますし、過去にね。チラシのデザインも絵を描くのが遅れて、完成が死ぬほど遅れたことがあります。最近はちゃんと締切を守れてるんじゃないだろうかって思ってるんですけど、前はそういうこともあったりして、
小沢:波があるのって絵だけですか?
花屋敷:やる気の波ですか。でも、絵に限らないんじゃないですかね。やっぱりなにか物をつくるときは、役者もそうですけど、単純に体調が悪いときって自分の状態がね、あんまり良くないから人の台詞の聞こえ方が変わることもありますし、これ最大限なんですけどって思ってても、いつもの半分ぐらいしかパワー出てないとかありますし。なんかちょっとね、結構自分が持ってるバランス感覚がズレるときもあるじゃないですか。調子によって変わるっていうのは多分絵だけじゃないかなという気がします。
小沢:波を整えるというか、やる気の源みたいなものはありますか?
花屋敷:チラシのイラストに関しては、もう締切ですね。締切がここだって思ったら、過ぎるときもあるんですけど、「やらないと駄目だ」みたいな感じに「やらないと殺される」みたいな感じに、私のせいで渋滞を起こしてますねみたいな気持ちにやっぱりなるから。
今いちばん楽しいこと
小沢:そうですよね。わかります。個人的な質問なんですけど、いま一番楽しいことは何ですか?
花屋敷:今一番面白いことは、月並みですけど、多分漫画を読むことだと思います。漫画は元々好きなんですけど、絵を見ているのがやっぱり好きだったりもするので、コマ割とか見てるの楽しいですよね、面白くないですか、
小沢:思ってた「楽しい」とちょっと違って笑
花屋敷:でも単純にコミックスの表紙が色付いてたりするじゃないですか。あんなの見てるの楽しいですよね。色使いとか。こんな色で飾るんだなみたいな。
小沢:デザインの楽しさなんですか?
花屋敷:でも私はそこまでデザインは勉強してないのであれですけど、単純にそういうものを見ているのが好きというか。最近面白かったのは、おすすめの漫画の話になっちゃいますけど、和山やまさんの『女の園の星』という漫画ですね。これはとても面白くて、笑いのセンスと独特の余白があってたまりません。あと私がもうずっと好きなのは諸星大二郎さんの本なんですけど、お勧めしたい作品しかないのですが「自選短編集『彼方より』をぜひ読んで欲しいです。あと、結構いいお年なんでとっても心配です。ずっと作品を描き続けてほしいと思ってるので。ちょっとレジェンドの方々が心配なんですけど、楳図かずおさんとかもこないだお亡くなりになりましたね。もしよかったら、今おすすめした漫画はちょっと偏りすぎてるかもしれないんですけど、ご興味があれば検索してみてください。
小沢:わかりました。コトリ会議の話に戻りますけど、コトリ会議に長くいて良かったなっていうこととしんどいなっていうことを教えてください。
コトリ会議について
花屋敷:長くいて良かったこと、これはもう若旦那さんのおかげですけど、いろんな都市で演劇をさせていただけたっていうのは本当にいい経験だったなと思ってます。やっぱり若旦那さんがいてくださらなかったら出来へんかったことやなと思うので。
あとは私は山本さんの作品が好きでこの劇団に入っているので、山本さんの新作をね、すぐ「なんでこんな台詞になったんですか」とか「すごくやりにくいです」って思うことももちろんあるんですけど、すぐ新作が読めてすぐやれるっていうのは私としてはすごくありがたいなと思って。
あとは大変だった思い出話になりますけど、今はもう舞台監督さん、制作さん、音響さん、照明さん、衣装さん、小道具さんが、いろんな方がお力を貸してくださって、役者に専念してやらせていただいてありがたいんですけど、昔はですね、いろいろ兼任してました。私が衣装を縫ってたときもありましたし、小道具を自分で作ってたときもありましたし。例えば朝8時とかに河原に集合して、舞台美術叩いて、ほんで河原から倉庫みたいなとこに運んで、ほんで夜まで稽古するみたいな、今思うとアホなんちゃうかみたいな、よう体力もったなみたいなことしてたんで、もうだいぶ昔、めちゃくちゃ初期の頃ですけど、そういうことをやってた時期とかは大変でしたね。そうですね、なんというかしんどすぎて家帰って泣く、泣きながらDM作業する、みたいな時期もありましたけど、だいぶ昔ですね。お金がなかったからっていうのもありますし。
コトリ会議の今後
小沢:コトリ会議は今後どうなっていきたいですか?
花屋敷:どうなっていきたいかな。コトリ会議を知らない方もやっぱりいっぱいいらっしゃいますし、だから観てない方にぜひ観てほしいなっていうのももちろん、もっと観てもらえる劇団になってほしいなっていうのもありますし。あとは、そうですね、なんて言ったらいいんですかね、なんかうちの劇団、必然的に平均年齢が上がっていってるんで、
小沢:年齢幅もすごいですよね。二回りくらい違うとか。
花屋敷:そうですね、人によっては二回り違う人もいると思います。なので年代ごとに触れてきた文化が違うと思っていて、それは自分にもすごく思いますけど、新しい文化、知らない文化って受け入れるのはやっぱり怖かったりもしますし、ついていけなかったりもしますから。お互いの経験してきたものがいい方向に交じっていけたら、作品づくりに生かせたらいいなと、ちょっと抽象的な話ですけど、どこかだけに偏らない感じでできたらいいよねっていう。でも難しいなと思ったりはします。やっぱり自分が生きてきたものとか感じてきたものを覆されるというのは、誰でもなかなか怖いことだと思うので。私達もそうだし、若い世代の人たちもそうだし、
小沢:全然相手にそんな気なくても、自分は否定された気になることもありますね。
花屋敷:やっぱりね、そんなつもりがなかったとしても受け入れるのが怖いっていうこともあると思うんですけど、何かうまいことできたらいいなっていう感じです。
個人でやってみたいこと
小沢:個人でやってみたいこととか将来像ってあったりしますか。
花屋敷:個人でやってみたい活動、イラストは継続してやれる機会があるならぜひやりたいなっていう感じですけど、今後コトリ会議が、例えば若い子がプロデュース公演を、若い子って言い方も良くないけど、劇団員の誰かがプロデュース公演とかするとかっていうときに、もしイラストがほしいって依頼していただけたら「もちろん」っていう感じでもあります。全然、好きな人使ってくださいっていう感じなんですけど、イラスト描く人はたくさんいますしねぇ、でも機会があれば描きたいなという感じです。あとはまた機会があれば、ちょっと自分のタイミングもありますけど、役者もできるタイミングがあればちょっとしたいなという感じです。なかなか難しいですけど。
小沢:ありがとうございます。最後どうしても気になったことがあって。「居場所」って言葉が嫌いって言われてましたけど、なんでですか?
「居場所」
花屋敷:なんて言ったらいいんですかね、イメージですけど。まとまらなかったらすいません。何か「居場所」って言い方って、内に籠ってる感じがしませんか。そんなことないですかね。外に開いてない感じがちょっとしていて。「場所」って言い方をすると、別に誰がいてもいいじゃないですか。実際の「ロケーション」っていう意味だったりとか、それこそ「時間」とか「時代」もそうですし、いろんな意味で捉えられますけど、「居場所」ってそれよりもちょっと狭まりますよね。意味が限定されちゃうというか。
私は、多分そういう世代なんだと思うんですけど、自分という人間は今どこに所属していて、周りからどういうふうに見られてるんだとか、何かちょっと自分のことを世界と対比するみたいな、そういう音楽とか文化に触れてきたなっていう感覚なんですよ。だから、その流行りに自分が乗っかっちゃうのは単純にちょっと面白くないと思っちゃったというか。何て言ったらいいんだろう、何か単純に独りよがりになってないだろうか…っていう感じがするからです。でもあくまで私のイメージなので「居場所」という単語に私がそういうイメージを持っちゃってるから好きじゃないっていうだけで、全然そんなことないイメージがあるなら、ぜひ聞きたいっていう感じです。
小沢:内向きっていうのはすごい納得で、確かに「場所」と「居場所」って言われたら居場所の方がキュってしてる感じがしますし、ガチガチで扉が閉じてるというイメージよりは籠ってる感じは確かにあるなって思いますね。
花屋敷:うん、そうですね、そういうところになんか嵌めちゃうというか、うまく言えないんだけど、私はその「居場所」っていう単語から「自分がいる場所」対「外の世界」みたいな感じの構図が湧いちゃうんですけど、この構図があまり好きじゃないんですよね。なんであなたは自分と世界を敵対させてるのっていう感じがするからっていう感じです。世界に自分も含まれてるわけじゃないですか。なんか別に敵対する必要がないんじゃないかって感じです。そういうのを自分から使っちゃうのが好きじゃないっていうだけです。
小沢:確かに「居場所」って守られてるみたいなイメージもあるんですよね。「安心」という意味を付随させて使いたくなったりするけど、それは裏を返すと、外側にある居場所ではない場所は自分に敵対している場所って言われたら、確かにそうかもしれないですね。
花屋敷:そうですね。なんかそれが個人的にはあんまり。
小沢:「居場所」ていう単語がたった1文字入ってるか入ってないかだけでイメージが変わるって、戯曲を読むとか演じるとかセリフを言うところに繋がってくるような気がしてて、無意識に使ってる言葉だったりするから、いま話聞けて良かったなと思います。
花屋敷:そうですか、すいません、いらない個人的なこだわりだと思っています。いい意味もあると思うんです。私の個人的な感覚です。恐縮です。
あなたにとってコトリ会議とは?
小沢:最後ひとことだけでいいんですけど、そんな鴨さんにとってコトリ会議とは何ですか?
花屋敷:本当に難しいな、なんですかね、そうですね、ちなみに他の方になんて言ってたかって聞いてもいいですか。
小沢:この流れの中で言うとあれですけど「居場所」って言ってる人はいますよ。
花屋敷:あ、ごめん、マジでごめん、ほんまごめん。そういうことじゃないです。人がね認識してる分には全然私はいいんです。私が「居場所」って使っちゃうのが、自分の人から見られてるイメージと掛け合わさってちょっと嫌だなっていうだけなんです。私が使うとちょっと面白くないっていうだけの話でしてね。
小沢:あとは「地下闘技場」とか
花屋敷:それは山本さんでしょうか…?そうですね。私がさっきパッと思い浮かんだのは「厄介な親友」です。なんていうんですか、家族ほど親密ではないけど、でも繋がりが絶対に切れないというか、お友達、だけど厄介、面倒くさいけどほっとけないとかね。違う違う、違うんですよ、劇団員が厄介っていうことではないんですよ。違いますよ、コトリ会議っていうものを例えたらですよ、擬人化するとこういう感じですっていう。コトリ会議に産んでもらったわけじゃないから、産んでもらったって言い方もおかしいですけど、そういう家族とかっていう関わり方ではないんですけど、コトリ会議という人がいたとしたらっていう感じですかね。なんか嫌やな、みんなに誤解されたらめっちゃ嫌やな。コトリ会議を人みたいな感じで例えて「厄介な親友」っていう感じです。
小沢:ありがとうございます。