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【コトリ会議】インタビュー企画⑤「三ヶ日晩」

どうも、劇団CLOUD9の小沢佑太です。
共同制作として関わっているコトリ会議という劇団の劇団員さんたちとの対談、個別インタビュー企画。いよいよ後半に差し掛かってきました。

1人1万字ということで、立ち止まってくださる方はそんなにいないのかなあと思っていたのですが…僕の想像をはるかに超える数の方々が読んでくださったり、感想を送ってくださったりしています。大感謝👏

コトリ会議
伊丹市立演劇ホール(AI・HALL)
12/5(木)〜9(月)
『おかえりなさせませんなさい』

今回は三ヶ日晩さんとお話させていただきました。三村るなという名義でも活動しています。あれ実はこの人が作ってたの!?みたいな発見もあるかも。ざっと読んでみていただけたら嬉しいです。

[左] 小沢佑太  [右] 三ヶ日晩さん

インタビュー企画⑤
「三ヶ日晩」

自己紹介

小沢:ざっくり自己紹介をお願いします。

三ヶ日:コトリ会議所属の、俳優とかweb制作とかやってる三ヶ日晩です。web制作のときは、名前を「三村るな」でやってます。

小沢:どっちで呼んだらいいとかありますか。結構みんな三村さんとか晩さんとかあっちこっち呼びはるじゃないですか。

三ヶ日:基本私は好きな方で呼んでくださいのスタンスで。割と「晩さん」呼びにしてくれる方が多いです。名前付ける前からの知り合いの人はやっぱ「三村」が多いんですけど、それ以降に知り合った人は「せっかくつけたんやから」って「晩ちゃん」とか「晩さん」とかで呼んでくれる人もいます。

小沢:じゃあ晩さんかな。さんがにち、ばんさん。

三ヶ日:みっかびって呼ばれることがあるんですけど、さんがにち、です。

名前

小沢:三ヶ日っていう名前の由来はなんですか?

三ヶ日:これは山本さんにつけてもらって、時期はちょっと忘れちゃったんですけど、「芸名をつけたいです」みたいな話をしたときがあって。

小沢:コトリ会議でつけられた名前だったんですね。

三ヶ日:入団したからつけたわけではないんですけど。最初の公演とかは「三村」でやってて、どっかのタイミングにつけたいって思って、山本さんに考えてもらって、候補が三つぐらいあったんですけど。ほんまは「さんがにち」って漢字で「三賀日」で、お正月の3日の夜みたいな、もうちょっとで休みが終わっちゃうみたいな、そういう感じの名前やったんですけど。漢字がゴツいなと思って、「三ヶ日」の方にしました。

小沢:なるほど。俳優の活動はそっちの名前でやってるんですね。

三ヶ日:そうですね。名前つけてもらってすぐ変えたわけでなくて、ずっと「三村るな」でやってたんですけど、「俳優、全然頑張られへんな」みたいな時期があって。でも「今後も俳優やるし、踏ん切りや」って名前を変えたっていう。

演劇との出会い

小沢:演劇を始めたのはいつからですか?

三ヶ日:高校の演劇部からです。って言っても1年しか入ってなくて。大阪の工芸高校ってとこ出身で、そこが割と強豪校で。私は全然知らずに入ってたんですけど。2年上がるときに部長に指名されたものの「できない」みたいな。うわーってなっちゃって辞めるという。そんときの同期と、今、小骨座をやってます。

小沢:ああ、そこからの繋がりなんですね。

三ヶ日:だから、あの2人には演劇部時代には結構迷惑をかけたのに、辞めたのに、一緒にやってるっていう感じの。

小沢:じゃあ今はコトリ会議と小骨座と二つ所属しているということですね。最初は小骨座の方で活動を始めたんですか?

三ヶ日:そうですね。小骨座も紆余曲折あって、1回解散してるんです。高校卒業してすぐに若旦那さんがやってた短編学生大阪演劇祭って企画があったんですけど、それの第0回に参加することになって。出場するのに団体名がいるなって。演劇部で出すのは無しやなって感じで「小骨座」って名前になりました。その後もみんな学生だったんで活動できてたんですけど、卒業するときに就職していくじゃないですか。そのタイミングでちょっと続けるのはムズいよねってなって、一旦解散したんです。その後、今のメンバー3人は大阪残ってるし、やりたいねって、もう1回やり直すぞって結成し直したんです。実はコトリ会議に入ったタイミングと、小骨座をもう1回結成したのはほぼ同じタイミングでした。

小沢:最初高校で始めたときは俳優で?

三ヶ日:うちの学校は俳優だけすることはなくて、スタッフの部署にも所属しないといけなくて、そのときは照明の部署にいました。一応。

小沢:その後2年ぐらいブランクがあって、卒業してからまた演劇を再開したってことですか?

三ヶ日:実は2年も空いてなくて。ややこしいな私。演劇部をやめたから外部活動ができるぞってなって、そんときにちょうど突劇金魚さんが20歳以下向けのオーディションをやってて、それで出演するとかはやってました。オーディション受けに行ったとき観たことなかったしそれも伝えたので、受かるとは思ってなかったんですけど、受かったんで「なんかこれ演劇続けろって言われてるんや」みたいな気持ちでやってましたね。

小沢:めちゃくちゃ早くから外に出て行ってたんですね。

三ヶ日:そう思うとそうですね。とはいえそれぐらいしか別にやってなくて。一度小骨座を解散した後は学生演劇祭に一緒に出てた団体とかからお誘いを受けて出演したりとか。

挫折しかけた時期

小沢:さっきの、挫折しそうやったっていうのは演劇始めて何年目ぐらいなんですか?

三ヶ日:それはコトリ会議入った後ですね。「私芝居を何もわからんとやりすぎてる」みたいな感じで。

小沢:コトリ会議の舞台に立ってるときに、実はしんどかったんですか?

三ヶ日:そうです。「やめたい…」ってなって、劇団員にはわかられてるかもしれんし、知らないかもしれないしって感じですけど。

小沢:最近ですか?

三ヶ日:最近でもないんかな、私的には。何年前やろぐらいの感じの感覚です。

コトリ会議との出会い

小沢:コトリ会議に入られたのは?

三ヶ日:2017年にオーディション公演でツアーがあったんですけど、それに出て、その翌年に入ってるんで2018年ですね。だから6年前。そこまでほんまにめちゃくちゃふわふわしながら演劇やってたので。

小沢:それまでは楽しいって感じだったんですか?

三ヶ日:割と「楽しい」だけでやってました。いや、何か苦労してるのもあると思うんですけど、全然もっと技術があることすら認識してない、高校からやってるわりには、俳優をするときにメソッドとか技術とかがあるっていうのをまずわかってないシーズンが長かったんで。

小沢:それが見えたタイミングだったんですね。

三ヶ日:そうですそうです。「私なんもできてへんやん」みたいな感じがあって。

小沢:それを経て1回頑張ろうっていう区切りのタイミングで、「三ヶ日晩」になったっていう。

三ヶ日:webデザインの仕事のことも、演劇の延長線上でやってたんですけど、もっとしっかりやりたいってなったときに、名義を分けた方が絶対いいってなったっていうのもありますね。

webデザインの仕事との両立

小沢:お仕事としてもwebデザインをフリーでやられてるんですか?

三ヶ日:いや、会社勤めでやってて。フリーでもたまにやってます。そっちは演劇関連のことばっかりですね。

小沢:両立ってできるものなんですか?

三ヶ日:コトリ会議は社会人しながらしてる人が多いので、そういう時間で動かしてもらってるのと、勤めてる会社がめちゃくちゃ理解あるっていう。会社の人もめちゃくちゃ観に来てくれるから。

小沢:職場の人が観に来てくれるのめっちゃいい。

三ヶ日:そうですね。一緒のチームの人は前の「雨降りのヌエ」のときもみんなで来てくれて。

小沢:関西では演劇とは別でお仕事をしながら演劇してる人が多いじゃないですか。いや学生とか20代前半とかってなると、どうするって時期だと思うんで。大学卒業とかのタイミングでそのままそこで就職されたんですか?

三ヶ日:私大学じゃなくて専門学校だったんですけど、今働いてるところは学生のときに一瞬バイトで入ってた会社で、でも「就職するんで」って辞めて別の会社に勤めてたけど、なんやかんやで今の会社に戻ってきたって感じなんで、学生のときから演劇やってるのをうっすら知ってもらってたっていうのもある。

演劇を始めた理由

小沢:ちょっと戻るんですけど、演劇を始めたのは、そもそも何でなんですか。

三ヶ日:ちっちゃい頃からミュージカル、劇団四季を観に行く機会があって。小学生とかぐらいのとき、お母さんの友達に劇団四季の、四季の会に入ってる人がいてて、「良かったら」みたいな感じで連れてってくれて。誕生日に何か観に行くのをプレゼントしてくれるような人だったんです。そういう人が身近にいてて。それで割と演劇というか舞台自体に興味がずっとあって、高校に入ってこの学校演劇部あるんやって思って。小骨座で一緒にやってる伊達さんが、同じクラスだったんですけど、ちょっと見に行こうって誘って

小沢:伊達さんって小道具で今回も関わってもらってますよね。

三ヶ日:そうです。その伊達さんを誘って、演劇部見に行って、一緒に入って、私が先に辞めて…笑

小沢:笑 なるほど。ミュージカルを観てて、憧れとか興味とか。

三ヶ日:憧れなんかな。なんなんやろ。でも観てるときのワー!っていう高揚感はめっちゃ覚えてるんですよね。

小沢:ね。今やってはる小骨座もコトリ会議もだいぶ、舞台っていうくくりではあれど、ミュージカルとは対極にあるような作風ですもんね。

三ヶ日:やるのと見るのが違うっていう感じは多分、高校生のときに結構感じてたんじゃないですかね。

観る面白さ・創る面白さ

小沢:観るのはミュージカルがお好きなんですか?

三ヶ日:最近、どうやろう。結構何でも楽しく観てる感じですかね。コトリ会議を観て面白いと思って入ってるので、もちろんそういう感じの、喋ってるやつも好きやし、歌って踊ってみたいなって世界観を作ってみたいなやつも好きやしって感じですかね。なんか、あんまりそこ偏ってない、偏ってるかもしんないですけど自覚がないって感じですかね。

小沢:自分が出るってなったら?

三ヶ日:そうですね。私は歌ったり踊ったりできないので。「自分ができる面白いことをやるならば」と「観て面白いな」は、私の中では別な感じですね。

小沢:僕も結構そっちタイプで作るなら静かな感じで作りたいけど、観るのは全然いろんなの観に行くよって。若旦那さんとこの前も劇場で会って「意外やな」とか言われて、僕も意外やなと思うんですけど、全然観ますよって。

三ヶ日:私、その高校がものづくりの学校やったんですけど。インテリアデザイン学科で、家具とか作ってて、設計図面引いて自分で木工したりみたいなことをしてたんですけど。当時、人が作ってて「かっけ!」って思うやつと、自分がやりたいことは別って感じて。クラスで彫刻がめっちゃうまい子がいたんですけど、自分がそれやりたいかって言われると、、、彫刻をやったこともあるんですけど、自分ができることと違うかもってなって。もっと私は図面引いてどこに何を置くかって考える方が得意かなって。

小沢:空間デザインみたいなことですか?

三ヶ日:そうですね。インテリアデザイン学科なので、インテリアの配置も考えるし、家具自体も作るしって感じだったんです。レストランの内装考えたりとか、そういう勉強してたんですけど。私はそっちの方が好きで。

小沢:高校でそれをやってたってことはもっと前から、ものづくりに興味があったってことですか?

「ものづくり」への入口

三ヶ日:それはそうかも。私、父親が図面を引く仕事をして、家にドラフターって、でっかい図面書く用の机があって、定規が動くやつ、あれがある家で、だからうっすら身近にはあった。しかも父親もそれやったし、おじいちゃんが鉄工所やってたんですよ。家が町工場で、そんな洒落た感じではないんですけど。ただ、家に帰ったらずっと機械が動いてて、なんか鉄の型抜きしててみてみたいな。何かものが出来上がっていくのは結構当たり前だったかなって思いますね。

小沢:それでそんな別に特別感もなく工芸高校行くかって。

三ヶ日:そうですね。なんか、勉強嫌いだったんですよ。座学みたいなのが。苦手とかじゃなくて嫌いですね。点数が悪いとかじゃなくて、

小沢:いやもうね本当に学校とかマジでね。

三ヶ日:先生やってる人に言うのもあれやけど。

小沢:でも、三角関数とか使わないですか?

三ヶ日:使いますね、図面引くときとか。モーメントとか考えますから。

小沢:数Ⅲや。

三ヶ日:やってたんですけど、あんまり座学をせんでいい学校にいきたいなっていうのが結構あって。その中で、できれば公立がいいとかあるじゃないですか。で、公立で行けるところが工芸高校と、甲南造形ってところが大阪にあって。どっちってなったときに、私の体感だと甲南造形の方がアート寄り、工芸高校の方がよりデザインというか、もっと実用的な印象があって。どっちの方が好きかって言われたら私は実用的な方が好きみたいな感じで、そっちにしましたね。あと校舎がかっこよくて笑 校舎かっこいいんですよ、中庭がウッドデッキになってて。大阪市の文化財に登録されてる。

小沢:そうなんですね。見てみます。その、実用的な方向に進んだけど、今比較的アート寄りじゃないですか。そこの変化みたいなのって、どっかであったんですか?

「実用」と「アート」のバランス

三ヶ日:多分演劇は実用的でないっていうか余白みたいな、それでいくとwebデザインの仕事は実用的な方に乗ってて、私の中ではバランスが取れてる、なんかこっち(演劇)だけやっててもこっち(webデザイン)だけやっててもみたいな感じがあって。

小沢:実用的な方ばっかりやったら、それはそれでしんどいですか?

三ヶ日:しんどいと私は思いますね。なんかそんなに自分が、いわゆる「社会」みたいなものに適応していくのが楽なタイプではないって思ってて。

小沢:めっちゃいい表現ですね。多分できはる方なんじゃないかなと勝手に思っていたので。

三ヶ日:多分その、振る舞おうと思ったら頑張って振る舞っていけなくはないんかなと思うんですけど、それやり過ぎたら絶対しんどくなるっていうのがあって。難しいな、どれも別に本当の自分ではあるんですけど、自分を多面的でおらせるために多分バランスが必要だと思う。思ってるっていうとあれですけど、なんかある程度その方が自分が生きやすいなって思ってて。

小沢:逆にアート寄りな演劇の方は晩さんのなかではどういう部分なんですか?

三ヶ日:演劇やってるといろんな人おるって、めちゃくちゃ思いやすくないですか? 社会っていうか、勤めてる会社になっちゃうとは思うんですけど、そういうところだと、そこに勤めてるっていう時点で、だいぶもう、なんていうんですか、近いコミュニティの人たち、

小沢:ある程度ね、常識的感覚みたいなのも同じような人たちやし。

三ヶ日:近い人たちの中で生きてて、その中でもそれぞれのズレみたいなの絶対あるんですけど、会社にいる時間って、それ全部みんな調整してるから、なんか急に自分だけズレてるって勝手に思っちゃうときがあって。みんな調整してそこに合わせてるだけやとは思うんですけど、自分が勝手に調整するのがしんどいときにそう思っちゃうとかがあって。でもそれを演劇の場におると、あれ、私よりぶっ飛んでる人おるなって。それで自分もいてられるってのがあって。そう思うと、やっぱ会社の人らというか、普通に生活してる人の中にも、多分ぶっ飛んだ部分があるけど、それを見せずに過ごしてるだけじゃないかなっていう想像ができるようになるじゃないですか。想像できると、人と向き合うときに自分がしんどくない、みたいな感じです。人生に何か指標を持って生きてるわけじゃないんで、なんかうっすら、そういうバランスが大事やんなって思いながらやってるっていうだけです。

小沢:どっちの方がより自分らしいとかはあるんですか? 

三ヶ日:どっちでも私は結構自分のやりたいことをやってると思います。

小沢:素敵。昔からそうなんですか?

三ヶ日:多分あんまり嘘つけなくて。嘘つけないっていうとポジティブな感じがしますけど、社交辞令ができないみたいな感じで、それって終わってるじゃないですか、社会人として。

小沢:そうなんですかね笑 僕は無理して社交辞令やってしんどくなってやめた側です。

三ヶ日:私は結構社交辞令も必要やと思ってて、別にみんな喧嘩したいわけじゃない、嫌いなわけじゃないじゃないですか。その中で、コミュニケーションの型としてそれをやることで「同士ですよね」みたいな「仲間ですよね」みたいな、確認作業じゃないですか。それってめっちゃ便利というか、いいことやとは思ってて。でも、そこで我を出したくなるし、我ってなんやねんって感じですけど。なんかそうですね、会社とかで「いやこれやっぱ可愛くないっすよ」「このデザイン良くないです」とかって、あんまバッて言い過ぎるのは良くないじゃないですか。そういうのを頑張って遠巻きにするみたいなことを頑張ってるって感じで。言わないっていうことはもうできないので。でも、いかに相手に対して、これは悪意があってやってるわけじゃなくて、制作物を良くしたいから言ってるのであって、あなたの仕事自体を評価してないわけではないので、というのをうまく伝えたい。

小沢:めっちゃいいじゃないですか。

三ヶ日:でもうまくできてるかわかんないんじゃないすかそれって。

小沢:相手にもよりますしね。

三ヶ日:そう、そう受け取ってくれる人かどうかみたいな。

小沢:コトリ会議でもそうなんですか? それともコトリ会議では気にせず、剛速球を投げてるんですか?

コトリ会議での立ち位置

三ヶ日:いやコトリ会議の方が気遣ってるかも。年齢幅が広いじゃないですか、だから言葉が多分結構違うくて、

小沢:一番下が川端さん(=川端真奈)で、

三ヶ日:上が誰や、丈太郎さん(=大石丈太郎)かな。多分そうやと思うんですけど、いくつかあんまりわかってないけど。40代ですよね。

小沢:確かに一回り以上違うってことですもんね。

三ヶ日:干支一周以上したらね、

小沢:干支一周ってすごいな、同じ干支の人がいる可能性があるんですよね。

三ヶ日:そうですね笑 だから感覚違う前提で喋った方がよくて。私と若旦那さんで20歳違うとか、子供でもおかしくないから。もうみんな多分いろいろ気を遣い合いながらやってるんやろうなって思いますね。なんで、剛速球で投げるというよりは、作品に関しては、本当にみんなめちゃくちゃ熱いなって思うんで、それでいくと私は結構引き気味に見てるかもですね。

小沢:俯瞰的にというか、遠目から見てるというか。

三ヶ日:そうですね。あとやっぱ圧倒的に、原さん(=原竹志)とか顕著ですけど、みんな自分より経験値高いじゃないですか。当たり前に年齢が上なんで。なんかその人らの感覚を割と信じているというか、そういうところはあるかもしれないです。経験値の差をフラットにするのはめっちゃムズいんで、フラットにするのはちょっと置いといて、そういうのも前提とした上で「こうですよね」っていうのが喋れるとすごく良い気がしますけどね。でもまだ模索中です。

小沢:ちょっと話戻ると、コトリ会議に入ったのは舞台を観て良かったからなんですか?

三ヶ日:コトリ会議が3劇団でツアーを回る対ゲキってやってて。

小沢:やっぱ皆さん、そこが窓口になってるんですね。

三ヶ日:そうそう。私は、その公演でなぜかゲネを観させてもらったんですよね。若旦那さんが神戸大学のはちの巣座っていう演劇サークル出身なんですけど、そこ出身の人たちの劇団によく出てた時期があったんで、そこからのつながりで「ゲネを観に来ませんか」って案内をくれて。観に行って、めっちゃ面白くて、これ私無料で見せてもらったんやと思って。申し訳なくて、ちゃんとチケット代払おうと思って、しかも学生料金やし。みたいな感じでもう一回観に行って。次コトリ会議の本公演あったら絶対見に行くって思ってたんですよ。そう思ってたら、そこから1年間本公演なくて、「ないな」って思ってたら、急に「オーディション募集!」「ツアー公演します!」って。めっちゃ悩んだんですけど、本公演見てない奴が応募していいんかなとか思いながら、応募しましたね。それがきっかけです。

小沢:そこで、出演して?

三ヶ日:そうです、そうです。そのときは客演で出て、ツアー公演で仙台に行ってたんですけど、仙台の10-boxの打ち上げの時間に若旦那さんにめちゃくちゃ勧誘を受けるっていう。当時、今もかな、若旦那さんが「コトリ会議は同じ客演を連続して使わない」みたいなことを言ってて「でも三村は何かまた出たらいいと思うねん」「やから入ってほしい」みたいな感じで言われて、うーんって悩んでたら、まえさん(=まえかつと)が先に入ったんですよ笑 気づいたらまえさんが先に入ってて、「私も入ります」って言って劇団員の人と喋って入りました。私の中でまえさんはめちゃくちゃ同期って感じ。年齢的には二つ上とか、そんなんですけど、劇団内の感じでいくとめっちゃ同期ですね。

コトリ会議について

小沢:何か入ってから変わったこととかありますか? ご自身の変化と、入る前と入った後のコトリ会議のイメージとか。

三ヶ日:コトリ会議のイメージか…。何やろうな。思ったより山本さんって苦労して台本書いてんねんなって。もちろんオーディション公演で回ってたときも苦労して書いてはると思うんですけど、なんかそこの部分あんまり感じてなかったので、なんかめちゃくちゃ頑張って書いてねんなみたいな印象を受けたかもですね。

小沢:確かに、今回覗かせてもらってて、めっちゃ感じます。

三ヶ日:そうですね。しかも当時より今の方がいろんな人がいろいろ口出す状況で、なんかそれがいいか悪いかはまだ掴めてないですけど、私的には「いいんじゃね」って思ってるんですけど。今もそうだと思うんですけど、当時はもっと1人の戦いみたいな、負担がすごかったんで、特に演出も最近はコトリ会議みたいに変えてるんで、何とかして全員演出みたいな心持ちで向き合おうっていう感じなんですけど。昔はもっと山本さんが責任を背負ってやってたなと思うんです。大変そうやなって思ったと思います。

小沢:演出をみんなで頑張ろうみたいなとか、山本さんが苦労して脚本を書いてねやというのは、外から見ててわからんかったことやと思うんですけど、何か入ってみて自分が結構大変なこととか、逆に、これは良いなみたいなこととかありますか?

見えなかったことが見えてきて

三ヶ日:なんやろう、自分が大変なこと、実はそんなにないんかな。いや、勝手に私が追い込まれてるときありますけど笑 

小沢:ホームページとかですか?

三ヶ日:ホームページとかですね。そういう制作周りのことは、多分私が入って、やれることの幅は広がったけど、結局回ってないなという印象です。私も別に制作じゃないんで、ガワだけちょっとできまっせみたいな感じで、手伝ったりするときがありますけど、ほとんどのところはやってないので結局。ただ業務量だけ把握はしてる感じになってきた気がしますけど。

小沢:若旦那さんが両手がふさがって溢れているなみたいな状態は把握できるけど。

三ヶ日:あ、だからそれが入る前はマジで見えないんですよ。「実はこれやってくれてたんや」みたいなのが入った後もわからん期間が結構あって。スタッフさんのやり取りとかも、若旦那さんが実は前々から働きかけてたりとか。正式にオファーする前にもっと仮仮押さえみたいな感じで声かけておくとかは若旦那さんの手腕だと思うんですけど。なんかそういうことを考えると「めっちゃいろんなことやってんねんな」というのが笑 制作のひとって稽古場に来なかったりするじゃないですか。だから見えないんですよね。

小沢:確かにね、何もやってへんのちゃうかぐらい思われそうですよね。

三ヶ日:見えないってのが結構でかくて、それが今できるだけ劇団員も見えるところでやりましょうかっていう流れに。

小沢:確かに、制作とかプロデュース、舞監もそうやと思うんですけど、仕事が見えない方が勝ちみたいなゲームで、仕事をやってる感が見えない方がいいみたいな感じですもんね。

三ヶ日:なので私ものうのうと俳優だけやってると、そういうの分からんままでいたやろなって。客演だけしてると見えないんですよね。しかも、まず自分が小骨座って団体もやってるので、何かこっちの運営の関わり方とだいぶ違うくて。小骨座って3人しかいないんで、割と全員で動かないとどうしようもないって感じなんですけど、コトリ会議だと、若旦那さんと山本さんが一旦動けたらまあ始まるみたいな。稽古始まるまでに何とか帳尻合わせるみたいな感じが結構あるんですけど、そういうのをやってると、小骨座で発生してるこの作業を、山本さんか若旦那さんがやってるなって。

小沢:団体に二つ入ってるからこそ、より鮮明にわかるんですね。逆に他も知ってるがゆえに、コトリ会議の特有の良さみたいなのってあります?

三ヶ日:小骨座と比べると、だいぶ私は俳優に集中できてると思います。小骨座はなんか「各々が負担し合ってやろうね」みたいな感じですけど、コトリ会議は結構もうその辺、若旦那さんが結構面倒をみてくれていて、山本さんが多分何かしてたりとかあると思うんですけど。コトリ会議ではだいぶ俳優のことだけしててもいい感じがするなって思います。逆に言うと、俳優のスキルがめちゃくちゃ必要になるなって思いますね。小骨座のときって運営に関わってたりするから、俳優の動きじゃない部分で演出つけれたりするというか、なんかせこい言い方やけど。そんな感じがちょっとするんですけど、コトリ会議には俳優として立たなあかんという意識がめちゃくちゃある。

小沢:なるほど。で、壁にぶち当たったタイミングがあって。

三ヶ日:そうです。俳優とか演技にめちゃくちゃ向き合ってるのは多分コトリ会議のとき。客演先でそんな無茶させられることないじゃないですか。よその俳優に何か足りてなくてもそこまで詰めるとかないじゃないですか。

小沢:ああ、「お前あんまりできてないぞ」みたいな笑

三ヶ日:直接的じゃないにしても、あんまり言われへんよなって。

小沢:コトリ会議にはそういう部分での厳しさがあるんですか?

三ヶ日:私が入った当初よりは全然キツくないと思います。入ったときは厳しかったし、私も訳わかってないから、言われるところいっぱいあったしって感じでしたね。私もなめた態度やったんで。

小沢:へえ、そうなんや。僕的にはすごい温和なおじさんたちの空気感じてますけど、そんな感じじゃなかったんですか?

三ヶ日:いや温和な稽古ももちろんあるんですけど、そうですね、詰まってくると、山本さんが稽古を見ながらこうやって頭を抱えてるみたいな。今も頭は抱えるんですけど笑 そのアウトプットの仕方は変わってると思います。

小沢:常に新しいことをやり続けてますもんね、コトリ会議って。

三ヶ日:あんまり私の中では新しいことってわかってなくて。結構変わらんテーマって思いながらやってるかもです。外側の形式が変わってるんですかね。それは若旦那さんにやりたいことがいっぱいあるんやなっていう感じ。

小沢:舞台に立ち続けている中で、今回の「おかえりなさせませんなさい」、ようやく脚本が上がりみたいな段階だとは思うんですけど、何か思うところってありますか? 感じてることとか。

今作『おかえりなさせませんなさい』について

三ヶ日:台本が第1稿から変わって、私はめちゃくちゃ面白くなったなって思ってるんです。さっきテーマが変わらないって言ったんすけど「人と別れる」「居場所」みたいなこととか、「その人がいなくなること」とかをずっとやり続けてるんやなっていう感じがあるんです。『おかえりなさせませんなさい』は「どうしても家族っていう形が壊れていく」っていう話だと思ってて。私がやる役は自分から実家を出て、家族の形を壊してる人。壊してるっていう言い方がすごいマイナスなイメージもつきそうですけど、家族側から言うと形が変わるきっかけになった人をやってるんで。でもめちゃくちゃこれ私は実感があって、私はもう既に実家出てる人なんですけど、誰かが家を出るっていうの結構でかめなきっかけじゃないですか。人生の、しかも大部分を過ごす家みたいなところの空きがでるみたいな、でも空きが出たところでその家はずっとそのままあり続けてたりするんですけど。みたいなところが結構描かれてるかなと思ってて、でもそうなっても寂しくないようになるといいなみたいな願いが込められてるかなと思ってて、私は。なんかそれがいいところになるんじゃないかなと思ってます。ちょっとまだ見通しが甘い気はしますけど。

小沢:めっちゃいいっすね。

三ヶ日:最近、私個人として、実は家族のことめちゃくちゃ大事だと思ってるんやっていう発見があって。

小沢:それは今回の作品づくりを通してですか?

三ヶ日:別に関係なく、そのタイミングがあって、元々別に家族仲は悪くはない方だと思うんですけど、ものづくりの学校とか行ってたし演劇もやってたから、さっき言ってた、いわゆる普通の社会みたいなとこに行ってない人間なんで、そういうときに親と衝突するとかあるじゃないですか。なんかそういうのがあったので、距離を取ろうとしたときがあったんですけど、今の年齢的に一周回って、一周っていうか、実家出たし、お互いが何かちゃんと他人になれた感じがしてて、結構それが故に大事な気がするって最近思ってるので、なんかそういう話やなって思ってる私は笑 私が今そう思ってるからそう解釈しちゃうんやけど、自分がやるからそういう感じになるかな、どうかな。

小沢:いやあ、なんか今聞いてて思ったのがコトリ会議の作品ってそういう余白があるなと思って。観に行った私が今こういう気持ちだから、この作品はこう見えたみたいなのが、ものすごく肯定されるような気がして、やっぱ作ってる側もね、そういう各々の柱がありながらなんですね。

三ヶ日:確かにそうですね。

小沢:楽しみだ、1ヶ月後ですね。

三ヶ日:そうですね。ちょうど1ヶ月後か。今日、完本するのめっちゃ楽しみ。(11月4日時点)

未来のコトリ会議について

小沢:もうちょっと先の話をしてもいいですか。コトリ会議を続けていくとして、未来のコトリ会議、理想のコトリ会議について、どうなっていたいとか、何がしたいとか、もしあれば。

三ヶ日:割とずっと言ってますけど、海外公演したいですね。

小沢:コトリ会議は海外では公演したことないですか?

三ヶ日:ないですないです。基本ツアーなので、それが海外まで行けたら嬉しい。私がただ行きたいだけですけど。

小沢:若旦那さんに予算を笑

三ヶ日:北海道も行きたいです。

小沢:北海道! いいですね。

三ヶ日:行きたいってふわふわ若旦那さんに言ってるんですけど。

小沢:海外と北海道。ぜひ。何年以内にとかありますか?

三ヶ日:え、全然それないかもな。でもパスポートを更新したんで。

小沢:準備はできてる。

三ヶ日:10年以内で。

個人としての未来

小沢:だそうです、若旦那さん。はい。ありがとうございます。晩さん個人として、何か理想の暮らしというか、今後の野望ってあったりしますか? 

三ヶ日:そうですね。ないな、でかい目標、ないな。でも基本、私は楽しく生きたいね、うまく生きたいねと、ちゃんとコトリ会議とか演劇が人生の彩りの一部になり続けてるのがいいのかなと思いますね。

小沢:今は楽しく?

三ヶ日:楽しくやってますね。

小沢:素敵だ。楽しいが続いていきますように。

三ヶ日:でも変化はあるんで、いろいろ受け入れながら。

小沢:自分の楽しみがあり続けたらってことですね。

三ヶ日:そうですね。

小沢:ありがとうございます。めっちゃ喋りましたよ、50分喋ってました。

三ヶ日:すごい。

あなたにとってコトリ会議とは?

小沢:最後ひとつ聞いてもいいですか。あなたにとってコトリ会議とは?

三ヶ日:今ので言ったら、「彩り」ですよね。彩りを与えてくれるかな、居場所の一つやなとは思ってますね。そんな感じです。

小沢:ありがとうございます。

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小沢佑太|劇団CLOUD9
最後まで読んでくださってありがとうございます♪ 現在は日々の気づきを毎日綴っています。 2022年に劇団を立ち上げ、その運営を行う中での気づきや成長日記にすることを目指しています。 もしよろしければ、今後の活動をサポートしていただければ幸いです☺️

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