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【コトリ会議】インタビュー企画⑥「吉田凪詐」
どうも、劇団CLOUD9の小沢佑太です。
三日おきに新しいインタビュー記事を公開しているのにも関わらず、ビュー数がどんどん加速していて驚いています。興味を持って開いてくださってありがとうございます。
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伊丹市立演劇ホール(AI・HALL)
『おかえりなさせませんなさい』
2024年12月5日(木)〜9日(月)
本番までほぼ1週間前となる今回は吉田凪詐さんとzoom(オンライン)でお話させていただきました。今回も余裕の1万字超え。観劇の予約をしていただいて、インタビュー記事を読みながらワクワクしてお待ちいただけたら嬉しいです。
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インタビュー企画⑥
「吉田凪詐」
自己紹介
小沢:自己紹介をお願いします。
吉田:吉田凪詐です。主に俳優とかをやってます。
小沢:コトリ会議とうさぎの喘ギに所属してるんですよね?
吉田:そうですね。
コトリ会議入団について
吉田:入団の経緯を言うと『スーパーポチ』って作品があって、それに犬のぬいぐるみが出てきます。最初、若旦那さんが操作してたんですけど、神戸公演をした後、東京公演の前に、若旦那さんの業務も大変だっちゅうことで、誰かひとり呼ぼうってなって、僕が途中から参加して。その時、なんか1回ぐらい団体みたいなとこでやってみたいなと思ってたんで、普通にね「入っていいですか」って言ったら、「いいですよ」って言われました。
小沢:なんでコトリ会議に入ろうと思ったんですか?
吉田:元々『セミの空の空』っていう公演を見て、面白いなと思って。あんまり観たことないタイプの作品だし、今までやった事ない感じだな〜と思って。あでも、たまたま呼ばれたからっていうのはありますよね。
演劇との出会い
小沢:いつからお芝居をされてるんですか?
吉田:僕は高校演劇からですね。
小沢:じゃあ、15年目ぐらいですか。
吉田:そう、結構やってる。大学卒業した後、1年ぐらいなにも出演してないときもありましたけど、大体ずっと何かやったりしてますね。
小沢:基本的に役者をしてるんですか?
吉田:そうですね。
小沢:コトリ会議に出会う前にやってはったのが全然違うスタイルだったっていうのはどんな感じだったんですか?
吉田:普通のお芝居。物語あって、みたいのが大体多かったから。あと逆にテキストだけあるみたいなやつに出てて。コトリ会議はちょうどその中間ぐらいだなとか思いましたね。
小沢:コトリ会議に入ったのはいつごろですか?
吉田:わかんないけど3年前とかじゃないかな、コロナの後に。2〜3年前かな。
演劇を始めた理由
小沢:なんでそもそも演劇をやろうと思ったんですか?
吉田:それさ、みんなインタビュー受けるからこんなん聞かれるだろうなと思って、事前にちょっと考えてた。俺、演劇以前に音楽が好きで、親が好きでカーステで流してたTHE BLUE HEARTSとか自分でレンタル屋で見つけたNUMBER GIRLとか筋肉少女帯をずっと聞いてたんですね。でも田舎すぎて楽器買う場所がわからなかったから、音楽の代わりに演劇やってるって今まで人に吹聴して回ってたんだけど、もっと遡ったら中学校ぐらいにゲームとかアニメの影響でそん時は、意外にも声優になりたかったよなっていうのを思い出して。
小沢:声優さん!?
吉田:そう。でも声優は東京いかないとなれないんだなって分かってきて気付いたら忘れてた。で、僕はあの〜山口出身なんで、そういう「演じる」みたいなことがなくて、まず山口は舞台とかやってないから。小劇場とかないから笑 それにドラマとかも観てなかったんすよ。めっちゃドラマ流行ってたんすけど、子どものとき。ドラマはいつでも流行ってるか笑 思い返したらね、ゲーム・アニメの世界があって多分それが、高校演劇に繋がったのかなと思いましたね。次思い出す時は別の事を思い出すんだと思いますけど笑 演劇部も演劇やりたくて入ったわけじゃなくて、なんかやってるな、くらいの気持ちで勧誘の人に声かけたのがスタートです。演技のスタートはそれが初めてですね。
小沢:いつ山口から関西に来られたんですか?
吉田:それは大学進出ですね。
芸術(短期)大学、進学
小沢:で、そこでも大学演劇をしてたんですか?
吉田:いや僕、大阪芸術短期大学っていうところに2年いて、3年から大阪芸術大学に編入したんですよ。短大はめっちゃちっちゃいとこなんで大学に劇団は無かったです。
小沢:じゃあ演劇、演技の勉強をがっつりはじめたのは芸大ですか?
吉田:そうですね。あんまり行きませんでしたが。年2回授業の公演があってそれに出る感じ。でも、その頃から学外に出る人もいましたよ。
小沢:凪詐さんはどうだったんですか?
吉田:3回生のときに、同級生に高道屋沙姫って言う女優さんがいて、その人に今出てる舞台の出演者を探してるって言われて。それに出ました。末満健一さんっていう人がやってる劇団patchの舞台で。末満さんはあの〜、最近だと『刀剣乱舞』とかの舞台作ってる人ですね。で、僕が出たのはジャンプで連載してた『磯部磯兵衛物語』っていう漫画を舞台化したやつなんですけど。2.5次元の舞台ですよ。それのアンサンブルキャストで出てました。
小沢:結構がっつり、エンタメというか。
プロの現場での学び
吉田:そう。で、行ったらめっちゃストイックな現場で。ってか、まーあたりまえですよね。プロの世界なんで。なんか今、俺らの知ってる小劇場みたいな感じじゃなくて、ちゃんと事務所とかがやってるから、多分。まずマネージャーさんとかおるし、大人おるな〜みたいになって。で、なんか行ったら結構作品は出来上がってて、再演やったっちゅうのもあって。しかも、俺めっちゃ稽古の途中から参加だったっぽくて、振り付けとか歌がめっちゃできてたのに、何も教えられずに「ひとまず入って」とか言われて、「えー!やりますけど!」みたいな。いろいろ勉強になりました。やっぱり全然生ぬるくないっていう笑 末満さんが作品のクオリティをちゃんと保ちたい人だったんだと思うんですよ。原作のイメージも壊したくないし、良いものでお客さんに満足して欲しいって言う。大先輩ですけど。僕全然喋らなかったんですけど。すごいね、めっちゃ怒られました。「ちゃんとして」みたいなとか。「言い訳いいから今何がトラブルなのかを解明して、解決してくれる?」みたいな。言い訳してるつもりでもないのに笑 でもさ、かなりの圧をちゃんと乗り越えるっていうのを、そこで経験できましたよね。いろんな役をやらなくちゃいけなくて。歌ったり、踊ったり、忍者やったりとか笑 その忍者の衣装に着替えて、出ないといけないのに、体感15秒くらいしかなくて、ピットインぐらい急いで着替えて。衣装の前の方だけ完璧だけど、後ろ1個も紐結んでなくて気合いで体にひっかけとくみたいな感じで笑 でも「こうやったらうまくいくんだ」みたいな。「別にお客に関係ないしこっち(後ろ側)」みたいな。「なるほどね〜」みたいな。あと、「袖中は邪魔になるから奥まで早くハケないといけない」とか笑 なんかそういうのをそこでめっちゃ学びましたね。舞台上の動きを一通り勉強できましたよ。皆さん優しかったし。ほぼ誰とも仲良くなれなかったですけど笑 やっぱりみなさん違う世界の住人でしたね。あの世界にいられるのはすごいなと思いました。
小沢:じゃあ大学出てから、フリーでいろいろあちこち出るようになったってことですね。大学出るタイミングではお芝居を続けようと思っていたんですか?
高校演劇、全国大会優勝
吉田:僕、高校演劇で高一のときに優勝したんですよ。
小沢:大会ですか?
吉田:全国大会です。2011年度の。もうやめられなくなるじゃないですか。「優勝したぜ おい〜」みたいになって当たり前に高3ぐらいまでやって、それでちょっといろいろあって、大阪の芸大だったらいけるかみたいになって、就活とかもしてなかったから、別に他にやることないじゃないですか笑 もう当たり前のように「いや演劇か〜」って。最近ですよね。演劇以外に全然できることあるんじゃんって。気づかないんですよね、やってたらね。もう続けるぞってか勝手にやってるだけですよね、別にお金もらえるわけじゃないし。
小沢:結構いろいろ出てはるイメージもあったんですけど、
吉田:最近はあんまり呼ばれないですけどね。いっときは「出ます」って、知らん人にTwitterで自分からDMとか送ってたんですよ。それで誘ってくれたのがうさぎの喘ギの泉くん。あと劇団不労社の西田さんに送って、2人とも僕の事一切知らないのに公演を観に来てくれて、「吉田くん出てくれませんか」みたいな、なんかそういうので、なんちゅうの、サイコロ転がすみたいな、双六進めるみたいな感じで。
小沢:すごい。
繋がりをつくっていく
吉田:それぐらいしかやれる事なかったですからね。田舎から来て、学生劇団の経験もなかったから、横の繋がりも縦の繋がりも全くなくて。だから「学生劇団のやつクソ〜」みたいな笑 「こいつら何か生き生きやってるけど数多いだけじゃねーか」みたいな、失礼かもしれんけど、でもマジで羨ましいなと思ってましたよ。
小沢:確かに、ひとりと繋がったらずっと繋がっていくみたいな。
吉田:そんなん一切なかったから。繋がってもめっちゃ年上とかそんなんばっかりだったんですよ。
小沢:そうですよね。結構隠れファンは多い気がしていて「凪詐さんのお芝居が好きです」っていう人、結構僕の周りにいるんです。
吉田:やろ? 誰も言わんし、誰も言ってくれへんのよ。どうしたらいいん?
小沢:笑 僕も多分、初めてちゃんと観たのが、うさぎの喘ギの、なんだっけあれ、ヴィレヴァンみたいなやつ。
吉田:あれなんだっけ、ヴィレヴァンしか出てこん。あれなんだっけ。全て始まっているみたいな。「いつだって、はじまれる」(2023年)や! ありがとうございます。
小沢:超良かったです。僕はめっちゃ好きな芝居のスタイルというか、本当に凪詐さんがああいう人なのかなって思う感じ。舞台と客席との間に敷居がないというか、ああいう演じ方みたいなのって、もうずっとお芝居を始めた頃からのスタイルですか?
演技について
吉田:いや、そんなことないですね。最初はやっぱり高校演劇だから、めっちゃ練習して決まったことをめっちゃやるみたいな感じ。
小沢:そうですよね。偏見ですけど、高校演劇出身の人って結構そんな感じが強いというか。
吉田:笑 でも、それもめっちゃ大事なんですよ。高校のときとかはめっちゃ練習してちゃんと同じ事をやるのが大事。でもうさぎの喘ギは動線とかが決まってなかったり、このセリフだけ持って出るみたいなこととかが多かったから、自然とそんときに起きたことを取り入れながらやる事の練習、みたいなことが大事になるんですよ。
小沢:コトリ会議のときはこういうプランでいこうって練るときもあるんですか?
吉田:まあ、なんかまちまち。最近そんな山本さん(=山本正典)がこうしてくれとか言わないんで。
小沢:最初の方は言われてたんですか?
吉田:まあ『スーパーポチ』とか結構言われてましたよ。「こういうふうにしてほしい」みたいな。
小沢:演じる上で迷ったり、わからなくなったり、立ち止まったりすることはありますか?
吉田:いや、基本ないですよね。もうできるレベルはもうわかってるんで。だから、もう早くできる事をやって「じゃあ次これやろう」、「できなかったらこれやろう」だけですね。
小沢:それをセルフでやってくださってるからあんまり言われないのかもしれないですね。
吉田:そうかもしれない。本当は俺もっとね、作品のこと話したいタイプなんですよ。
小沢:稽古場でですか?
吉田:そうそうそう。
稽古場での会話
小沢:例えば「おかえりなさせませんなさい」だったら?
吉田:「ここいいな」みたいな笑 「ここいいな」だけを永遠に話しておきたい。音楽とか映画とかでも「あそこいいよな」みたいな、最近そういう話ができる人が減りましたね。なんか「あの芸能人のあの女優かわいいな」とかもね、もう言っても楽しくないですよね。いいやんそれでって。代わりにみんな「推す」に行ったんだろうな。
小沢:普段稽古ではどんな話をするんですか?
吉田:でも作品つくってる団体によってだいぶ喋ってることが違うんですよ。やっぱやることも変わるから。僕は自分の喋ってることが場所によって違うなって感じしますね。
小沢:じゃあ誰誰がかわいいみたいなことを喋ってる場もあるんですか?
吉田:うん。あんまりないけどね。なんかyoungerはそういうこと言ったら嫌な気分になるから。昔は映画見てそんな話ばっかりしてた「吉岡里帆かわいくね?」みたいな。
小沢:俳優さんとか女優さんとかで、こういう演技が好きだなとか、意識してる方はいますか?
吉田:ないかな〜。でも、昔は1日に3本くらい友達と映画観て「あそこいいな」って友達とずっと喋ったり真似したりしてました。なんでそのシーンを見たらそんな気持ちになるのかとか。どう作られてるのかとか。
小沢:最近はないですか?
吉田:最近そういう作り方をしないからなくなりましたよね。昔は映画見て、「この作品のこのシーンあれっぽいな」とか、「あんな感じだったこんな感じかな」みたいなんで演技を作ったりとかしたんですけど、さっき言うことをせんくなったんで、しろって言われたらやるんすけど。最近はもっぱら台本あるならセリフ書いた人間に聞いて「そうなんですか」と「じゃあこうしますね」だけですね。やっぱその書いた人間に聞くのが一番早いっちゅうね。
小沢:作家さんに聞いても出てこない時ないですか?
吉田:いや、それって何か目的とか聞くから変なことになるんであって。あの、人の夢の話を聞くときあるじゃないですか。「どんな感じやったん?」みたいな。「なんかこのセリフ書いたときってどんなでした?」みたいな。目的を聞くとさ、「こういうことを言ってほしいんだな」みたいなモードになられてダルいじゃないですか。「これって普通に何?」って聞いた方が早いっていう。全然わからんで書いてたなら「わからん」とか、なんか意外と書いた人しか知らないエピソードがあってそれちょっと思い浮かんでこれ書いたんだよねとか、こっちが聞かないと出てこない事ってあるじゃないですか。なんかそういうのを聞く。
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育ててるカマツカコケモモ(撮影:吉田)
コトリ会議でのお芝居
小沢:演出が「コトリ会議」という名義じゃないですか。そこに対してのアプローチとか、あるいは何か難しさとか。
吉田:でも難しいですね。やっぱり、僕は基本的に、誰かの名前で誰かが責任を負って作品つくった方がいいと思ってて、それが欲望の形ですよ、やっぱりある種。集団の名義でやると、やっぱ誰が何すんのってなってくるんですよ。その難しさがあるから、ちょっとね、どういいとか、どうムズいとかって、めっちゃくちゃケースバイケースで、例えば台本ない作品を集団で作るのは意外といけるんですよ。やってたら「こいつが主導してくんだな」みたいなのがやっぱ自然とできてくるし。台本あってみんなでやるってのは結構難しいっすね。やっぱ書いた人間の言葉と思って大事にする人もいるし、そんなん関係ねえよって言う人もいるから、基本的に方向性を見失いやすくなるんですよ。
今作『おかえりなさせませんなさい』について
小沢:なるほど。今回の作品について考えてることはありますか?
吉田:山本さんはやっぱり人間がどうやって生きてるかみたいな話をずっと書いてると思うんですよ。ふざけてるのも込みで。悲しいことも込みで。今回もまたそういうのが出てるなって思いますね。人間じゃないものとかが出てくるんですけど、結局やっぱ人間が大事なんだなっていう感じがしますね。その気持ちよくわかりますよ。そういう作品です。
将来的な理想
小沢:凪詐さん個人の、将来の理想、今後どうなっていきたいってありますか?
吉田:僕は芸術に関わる人が、もっと個人でいろんなものを作れるといいなって思いますね。プロダクトのサイズとか時流に流されないで「既に作ってる」って事に気づくと言うか。コロナ以降、アイデンティティやSNSのおかげで社会的な分断が凄いですよね。そうするとコロナ以降、やっぱり連帯とか、みんなで集まろうという方向に行ったなって思うんですよ。それはそれで大事なことなんですけど、なんかね、だんだんね、人がいっぱい集まったりとか、まあ他人がいないといろんなことはできないんですけど、他人がいないと芸術活動できないっていう方向になってるような気がしてて。なんか1人1人が、誰にも見つからず極まってるって言うのが大事にされないですよね。朝の起き抜け極まってる。けど誰も横にいない。時間経ったら自分すらもそれを忘れてる。みたいな。なんで、その1人になろうという気持ちですね今は。
小沢:なんか不思議な感じ。団体に所属しながらも1人でありたい。凪詐さん自身が個人で何かしたいとかっていう具体的なプランはありますか?
吉田:僕は作品を作りたいですね。もう元々ずっと1人だったんで、劇団に入った後も割と1人の感覚なんですよね。所属意識みたいなのがなくて、同じ劇団の人はみんな分かってると思うんですけど、「こいつ好き勝手しよるな」って。良くも悪くもね。
小沢:足並みを揃えることがいいときと、一個人としてちゃんと思ったことを言うことで全体が良い方向に動くというときとあると思います。
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ひとりで作品をつくる
小沢:作品をひとりで作るっていうのは?
吉田:例えば、なんで劇場で演劇やらなあかんのやろなとか、助成金を取らないと演劇はできんのかとか、そういうことを考えますよね。やっぱりあと、演劇だけ、ものすごいコストがかかるし、いろんなことが遅いっすよね。やっぱ音楽好きなんすけど、音楽はスタジオあったら自分でパッて作って、配信もできるわけじゃないすか。ラッパーだとパッと録ってパッと出せるみたいな、思ってること言えるみたいな、なんかその速さと強さみたいなのが、正直、演劇は負けてますね。同じことをしようとは思わないですけど、他の芸術のジャンル、現代美術とか音楽とかダンスと比べて、演劇だけあんまり個人の力をあてにしてないっていう感じが僕は結構しますね。
小沢:ひとりでも何かできるんじゃないかと。ひとりって本当にひとりってことですか? 演じるのも、光とか音とかも?
吉田:いや実際の上演形態のことじゃなくて、もっと心構え的な。全ての関係性より個人の力が本当は先にあるっていう実感がある。
小沢:そっか。人数がっていうよりかは、そのひと個人の力、その人の持ってるものをそのまま出すことがあんまりない、みたいなことですかね。
吉田:ああ、そうですね。それ結構気になる。例えば俳優は、作品ないと出番ないとか言いますよね? それ認められなくて。あなたは日頃、どこにいるんですかみたいな。生きてる時間があるわけじゃないですか。なんかね、そこの大事さっていうか、やっぱ舞台の方が本当で日頃はないみたいなのがあんまり好きじゃなくて。
小沢:凪詐さん的には日頃があって舞台があるっていうことですか?
吉田:っていうかあんまり差がない。差がないって思うのが結構大事だなって僕は思う。なんかね、そうじゃないと、舞台だけいいって思ってると、日頃のことを見落としがちっていうか、舞台で起きてることと普段起きてることをあんまり差なく見るっていう。
小沢:それって、役に取り込まれたりとか、そんなことはないんですか?
吉田:いや、ないですね。
小沢:そうなんですね。現実との境目がなくなればなくなるほど、
吉田:でもそれはムズいっすよね。役が何か、っていう話もあるから。ひとが作った役だったら、何も思わないっすよね。よく、役の名前でその俳優のことを呼ぶじゃないですか。あれ全然意味わからんくて。そんな奴いないんだから。「役の気持ち考えて」とかにも「役いないんだからそんな」みたいな、「人間いないじゃないですか」「肉体ないじゃんそいつの」みたいなね。それでも言葉っていうのはなにか人間の姿を想像させるわけじゃないですか。なんかその複雑さ? 惑わされ? が大事。そこを諦めない。
小沢:言葉をよりどころに演じてる?
吉田:いやそんなことないですよ。
小沢:そっか。なんかふわふわしません?
吉田:いやふわふわしないです僕は。ふわふわはしませんけどね、でもふわふわしたいですよ。やっぱ何か自分がテンパりたい、テンパりたいです。演劇ってテンパることないんですよ、だって全部決まってんだから。台本あって。でもテンパりたいっすよやっぱ。作られたテンパりじゃない根本的なテンパり。基本みんなそうなんじゃないですか。だって「段取り芝居はいけない」とか言うじゃん。ふわふわはしないかな。でも、セリフの途中にいきなり、予定にない奇行とかされだしたら多分テンパるよね。でもね俺、結構それを待ってる節があって、心の中では。奇行来たら「うわ奇行来た!」みたいになって、じゃあ俺こうするからって、そっから始まるんじゃねえかみたいな。俺いつもね、客も喋ればいいのになとか。なにか舞台上に言ってくれたらいいのに「俺はそう思ってるぜ!」みたいな。そしたら「そうだよね」って言って、続ける。
小沢:凪詐さんがお客さんやったら言えちゃいますか?
吉田:言わないけど。たまに喋ってるときあるよ笑 駄目な客やけど。いや、俺は結構本気で客席から「いや俺は思ってるよ!」みたいな。「違うぞ!」とかでもいい。「違うぞ!」って言われたら「どう違うんだ」って言って、「これこれこうです」って言われたら「そうかお前間違ってるぞ」っつって、「今からそれがわかるから焦んな」っつって、「じゃあやるからね」って言ってやるとか、黙って観られるよりはそういうのがいいですよ。みんなね、すごいいろいろちゃんと観てくれてるから別にいいんですけど。ふむふむって観られるよりは「違うぞ」って言われた方が気持ちはいい。
コトリ会議の将来
小沢:コトリ会議が将来どうなりたいとか、どうしていきたいとかありますか?
吉田:ないですね。
小沢:ないかなとは思いました笑
吉田:コトリ会議はね、やっぱり大人の劇団なんで。僕29でしょ、みんな40歳くらいでしょ。やっぱね世界違うんで、大人の皆さんの世界を大事にしてほしくて。演劇の若い人が増えたら年上の人たちはね、やっぱり悲しいじゃないですか。みんな頑張ってくれて演劇は続くって思う反面、やっぱり自分たちの知ってたものがなくなってくんだなみたいな気持ちになると思うんすよ。僕ですらそれにめっちゃなってるんで。やっぱ人類の進化はえぐいから。なりません? 「あれ、こんなにみんながネットやるんだ」とか、「あの感覚ないんだ」とか、「昔だったら今この時間みんなスマホ触ってないな」とか、40ぐらいの人なんて、もっとですよ。でもそのなくなってく感覚みたいなのを、若い人に合わせずに、あったことはね、あったままに残していってほしくて。作品づくりにおいてもアップデートとか言わんでね。僕は結構ね、その方が嬉しいです。それが間違ってるなって思ってても、やっぱ残してくれる方がなかったことにされるよりは全然いいなって思うから。コトリ会議もね、そうやって大人の皆さんが思うことをね、やってくれたらなって思うんですよ。だって僕は僕でできることは別でできるから、コトリ会議でやる必要ないっていう。
あなたにとってコトリ会議とは?
小沢:ありがとうございます。最後。あなたにとってコトリ会議とは。
吉田:大人の劇団じゃないですか。
小沢:凪詐さんはどっち寄りですか? 僕からすれば大人側なのかなって。
吉田:全然違いますよ。やっぱりね僕とかは劇団っていうものに全く夢を見てないんで。でもやっぱり山本さんとか原さん(=原竹志)とかね、花屋敷さん(=花屋敷鴨)とか若旦那さん(=若旦那家康)、丈太郎さん(=大石丈太郎)が観てた演劇は劇団じゃないですか。僕はそもそも演劇を観て、演劇を始めようと思ったわけでもないし、その時点でもうちょっと違うんですよ。でもそれを大事にしてほしいんですよね、やっぱり。ちょっとね、言うの難しいと思うんですけど、思ったまま「いや俺たちはこれが大事だ」っていうことをね、All Time Always、いつでも、どこでも言ってくれたらいいなって思いますね。コトリ会議に限らず、今の世界の大人はみんな気にしてるな。今なんか自分たちの思ってることあんまり言えないんだろうなって。でも言ってみて間違ったら、訂正しての繰り返しですから。それでいいと思いますよ。
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『おかえりなさせませんなさい』
小沢:もし最後、ちょっと喋っておきたいこととか、インタビューを読んでくださる方にメッセージとかがあれば。
吉田:読んでくださる方にメッセージはないな笑 僕はこういう話、無限にできるんで。思い出話は無限にできる。
最近一番記憶に残っていること
小沢:じゃあ一番強く記憶に残ってるものってなんですか?
吉田:なんだろう〜。最近でいうと、倉田翠さんっていうダンサーで演出家の人がやってるakakilikeの作品に出演したんですけど、その1年前ぐらいに京都のE9て言う劇場で倉田さんのダンス講座があって、前期後期合わせて2週間ぐらい。倉田さんのやってきたこととか、作品のつくり方を教えてもらうみたいな。まあ、ほぼ一緒にやってるみたいな感じでしたけど。最終日にお客さんも入れて発表をするっていう。最近の出来事だと一番デカかったっすね。倉田さんは子供のときからバレエとかやってて、ダンサーだと思うんですけど、俳優、ダンサーじゃない人とも作品をいっぱい作ってるんで、踊れない人でも出てるんですよ。そういう人なんで、別にダンサーの人もいたけど、俳優の人もいるし、いろんな人がいましたね。映画監督の女の人とか。その人も舞台上に出てましたけど。いわゆるダンスっていうのだけが踊りじゃ無くて、今、石がそこに落ちてたとか、誰かが居たとか、何かをしたって事をダンスだと思うみたいな事だと僕は勝手に思ってるんですけど。だから踊ったっちゃ踊ったけど、踊ってないっちゃ踊ってない。
小沢:どんなことが印象に残ってるんですか?
吉田:やっぱり13人+倉田さんが集まって全員の人生がばちくそ濃かった。っていうか、他人の人生こんなにぶつけられることもないし、ぶつけることもないなみたいな。作品づくりも誰かの書いてくれた台本はないので、自分のことを使ってやることになるんですよ? 印象に残ってるのが畠中真濃さんっていうダンサー人が言ってた「舞台上で(知らない?)他人のためにこんなに頑張れるのが新鮮だった」みたいな言葉ですね。そのままじゃないかもしれないけど。結構きましたね。発表では、自分たちがやりたいことを何個か持ち寄ったんですけど、最終日にまとまらなくて、本番では持ち寄ったものをどう言う順番でやるかは全部即興でやるってなって。始まりだけ決まってて、いわゆるダンスをJPOPに合わせてちゃんとやって、めっちゃ明るくワァッて踊り出て、最後みんなでキメッ!ってなってから、先が一切決まってないって言う笑 闇。その地獄感。自分がやった事だけがあった事になっていくっていう実感がありましたね。そうなると、人前で頑張ってる人のことほっとけなくなるんですよね。その人が頑張ってるから今繋がってるわけで「こいつのために頑張る」とか、「いやこんだけこいつがやってんのに俺やらんとかなしやろ」みたいな感覚がでてくる。でもさ? そんなの世の中普通に生きてたらあるじゃないですか、でもなんか舞台だとそれなくていいよねみたいなのが何かあるんですよね。だから結局一般で生きてる感覚と舞台の感覚が、そこで結構なくなったっていうか、舞台を特別扱いしないみたいな。元々そういう傾向があったんですけど、なんか結構、確信に変わりましたね。
小沢:なんか舞台は舞台、現実は現実じゃないよねっていうことですか?
吉田:いや舞台は舞台、現実は現実ですけど。別に舞台だからって、なんかめちゃくちゃ夢が広がるって、そんな難しくないですか。それやりだすと、やばいですもんね。危険ですよ、マジで。で、やっぱもうおかしなってくるんですよね。感覚全開みたいになって「この人のために頑張らなきゃいけない」とか、「俺やらなきゃいけない」みたいな、でも身も蓋もないこといえば、人間の認識は全部勘違いなんですよね。自分の思ってる通りのことなんてないから、勘違いなんすよ。思い込み。でもその、なんか勘違い上等、思い込み上等! がすごい力になるっていうか。やっぱセリフ決まってて、段取りでやるとまた違う。自分を賭けなければいけないと言うか。でも別に、意外とセリフあったって一緒なんですけど。なので。倉田さんの講座の経験は大きかったんですよね。やっぱ人に言えんような大事なことを話されたりとかして、そういう人とそのまま一緒に人前に出て、やっぱりその人を傷つけられないじゃないですか。そういう感覚がついたっていうか。
小沢:今の創作活動に繋がってますか?
吉田:そうですね。でもあのときのは頭がおかしい力なんで。やろうと思ったらできるんですけど、なんていうんすかね、いきなり人にやったらあかんことですよね笑 お互いが「はい?」ってなるから。徐々に徐々にですよね。でもなんかね、力にはなりましたね。
小沢:ありがとうございます。
吉田:これ、スクショ取らなあかんのちゃう。ちょっとスクショ用の見た目になるわ。(ガサゴソ)あ、これがスーパーポチっすね。
小沢:めちゃくちゃ準備してくださってありがとうございます。
吉田:かわいい角度に。
小沢:いけますか、はいチーズ。
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