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ゲキ×シネ 劇団☆新感線『天號星』

先日観劇した舞台、剣劇「三國志演義 孫呉」に早乙女友貴さんが出演されていた。
そこで早乙女友貴さんの鮮やかな太刀さばきと堂々とした風格に心打たれたため、上映中だったゲキ×シネ 劇団☆新感線『天號星』をすべりこみで鑑賞してきた。




本作は早乙女太一さん、早乙女友貴さんの天才兄弟をメインに打ち出したタイトルとのこと。

開幕して1分経たないうちに「これはおもしろい」と一気にのめり込み、かじりついて鑑賞した。
上演最終日だったため、遠方の映画館は4、5人の大人が間隔を空けてぽつりぽつりと座っていて静まりかえっていた。ピンと張り詰めた静寂空間の中、私だけ声を出して笑ってしまった。他の方はきっと『天號星』収めをしにきたリピーターなので笑ってはいなかったけれど、初見の私はこらえきれずにブルブル震えて笑ってしもたすまん。

劇団☆新感線ってすごいんだなぁ、と有名すぎる事実を改めて思い知らされた。気を遣っているわけでもなくずっと笑ってしまったし、一瞬たりとも飽きない。飽き性な私は演劇を鑑賞しているとき、展開が読めたり、気持ち悪い変な間があると、気を抜いて退屈でふっと冷静になり物語から弾き出されることが多いのだが。

これ、本当に3時間も上映時間がある作品なの?体感30分でしたよ。

音速でした。中盤からまだ終わって欲しくないと願ってしまった。
他作品やコンテンツをdis下げするわけではないけれど、本当にセンスのいい一流のプロ作品だと思いました。これは早乙女友貴さんを劇場で拝見した際にも感じたことだけど、新感線も本気でレベチ。素晴らしいものを見せていただき心が洗われたようだった。
この日はまじめな会議映像をチェックした後で脳みそが疲れ切っていたはずなのに、ものすごいカタルシス的な効果を得られて、目や肉体まで元気になった。

『劇団☆新感線』とは

1980年に大阪芸術大学舞台芸術学科の四回生を中心にしたメンバーにより旗揚げされた劇団で、80年代日本の学生演劇ブームの礎を築いた一座のひとつとのことだ。

私が『劇団☆新感線』に初めて出会ったのは5年ほど前です。
父の通うスナックに裕福なおじさんがいて、たまに父を迎えに行く私のことをかわいがってくれていた影響で『劇団☆新感線』を知りました。『劇団☆新感線』『キャラメルボックス』このあたりは抑えておかなきゃねという教養を育てるようなパトロニズムにあやかって作品に触れる機会をいただいた。

新感線作品は『髑髏城の七人』シリーズの上弦だか下弦だかの両方の月を観た記憶が……と調べたところ、ちょうど鈴木拡樹さんが出演されていたシリーズでした。
漫画やアニメを原作とした"2.5次元作品"で知った俳優さんの中で、一番芝居が上手いと私が思っている鈴木拡樹さんレベルだと、新感線に出れるのか。そんな風にミーハーな感想を抱きました。

当時「良かった、すごかった」って感想はあったけど、キービジュアルの画像が暗いしなんかみんな眉毛ないし怖いな……ってのと、まだ若かったからか演劇に対する興味が今よりいっそう薄く、今回ほどの衝撃はなかったかもしれないです……演劇を受け取る下地や感性が育っていなかったのか?


2.5次元ブームの影響で様々な演劇を鑑賞する機会が増えた今だからこそ、やっぱり新感線はすごいんだってわかってよかった。

飽きる隙を与えない、ずっと笑えるしかっこいいし、共感性羞恥で恥ずかしくならない。視覚、音響、役者さんの気の利いた空気づくりの効果がずっと空間いっぱいに広がっていて、テンポ感が非常に心地よかったし一瞬たりともダレなかった。

ストーリーの流れの鮮やかさや、散りばめられた深度のある言葉、締まりの見栄切りの心地よさ、まるで落語のような完成度でした。

そろそろ殺し屋銀次と人斬り朝吉が欲しいなと思ったら、ふたりが出て来る。

そろそろ笑えるシーンないかなと思うと、コメディっぽい抜きが入る。

私はかなり飽き性な方なので、もう少しじっくりストーリーを咀嚼するような演劇を好む人には散らかって見えるのかもしれないが、お笑いのコントばりのテンポ感が好きな人には刺さりそうだ。だって私はお笑いのコントがいっとう好きだから。お笑いのコントばりにものすごく敏感な空気読みスキルが光っていたように思えた。

一流の商業演劇として令和まで続いて、商業的に成り立つ胆力のある団体ってこういうことなんだなぁってしみじみ考えてしまった。

オタクがハート加工した半兵衛


エモかっこいいおじさんの夢小説

星の巡りあわせと落雷と、運命のいたずらと、かくかくしかじかあって早乙女太一さん扮する銀次と、古田新太さん扮する半兵衛の肉体が入れ替わる。

このあらすじを拝見した時、おじさん世代ってきっと成熟した魂のままで若い肉体をもう一度手に入れたいという願望があるんだろうな、団塊世代の観劇層が共感しやすい導入だな、と思った。
しかし入れ替わって半兵衛が若い女からモテモテでハッスル……という俗っぽい展開に繋がるわけではなく、半兵衛は娘たちを守り、星の導く運命を孤独に背負う。

人には触れちゃならねぇ痛みがあるって花の慶次でも言ってた。これぞ男の中の男よ。
この本は、俳優・古田新太さん自身が持つような、ゆるいし動きたくないのになんか色気がある、みたいな要素が反映されたかっこいい像で、素敵だった。

『入れ替わり』というオーソドックスなテーマながらに、銀次が人間的な欲にまみれていく変化、半兵衛の男っぷりが磨きあがるかっこよさが光っていた。
きっとあの脚本を書き上げて演劇を作ろうとしても、芝居する側の実力がないと何もかも成り立たないだろうなと感じました。でも脚本と演出のセンス爆発してたし、嫌だなぁとかモヤモヤするところが1ミリもなかった。
出演者の多くがおじさんだし(すみません)昭和ギャグみたいな下ネタも多いのになんで?本当に不思議。それがセンスの正体なのでしょうか。

クズ男と天才は紙一重

クズ男と天才は紙一重、とはよく言ったもので、やっぱりセンスある演出構成作家俳優さんって現実でもモテるんじゃないかな。
モテる男性って「さりげなく気を遣う」のがうまい。薄着の女性に「寒い?俺のジャケット貸そうか?」とは言わない。ブランケットやカイロをそっと差し出してくれるだけ。相手の負担にならないように察して気を遣ってくれますよね。あと飽きさせない。演出も同じ構造だと思った。仕事って私生活やすべてが繋がってアウトプットされているに過ぎないんだろうな。

私が面白いと感じる演劇って『しつこくない、飽きない』にあると気づかせてもらえた。優れた演出家も、目の肥えた観客を飽きさせないのだろう。

早乙女兄弟ってやっぱり星(スター)

早乙女太一さんと早乙女友貴さん、あてがわれた役が素晴らしかったのもあるけど、天性の生粋の役者なんだろうなと本気で思った。こういう華やオーラって、ある程度与えられて人間が生まれ持った星なんだろう。天號星が導く縁のように同じ一座にこんな兄弟が生まれるなんて、役者になることを運命づけられていたとしか思えない。

早乙女兄弟からは江戸の風をものすごく感じる。今回の舞台となった元禄時代、今よりも占いやスピリチュアル的なものが身近にあった時代なんだろう。でも今の時代だって見えにくくなっただけで星は光っているのだと思う。そしてそんな早乙女太一さんを早々に見つけ出した北野たけし監督が凄まじい。
新感線ではその才能を演出によって活かされて、最強になっていた。

ところで、早乙女太一さんってぜったいにぜったいにB型だよね?!板の上では最高で、刺激的で危険な香りがぷんぷんするB型男のえぐみある!!B型!!!と胸中で血液ハラスメントしていたけど、調べたら本当にB型だった爆笑。B型って周波数でてんねんな、Bの。
突飛な才覚や売り上げを持つ子に多い印象のあるB型エッセンスという意味ですが、早乙女太一さんって本当に花形の千両役者って感じだ。時代が時代なら浮世絵になっていたんだろうな。

早乙女友貴様の前では乙女になってしまう

まず、顔が好き。0番看板役者の運命を与えられた恒星お兄ちゃんより、もうちょいキツめだったり愛嬌がある惑星っぽいポジションが似合う雰囲気も好き。
朝吉は父親を斬り捨てた残忍な人斬りなのに、どこか憎めない人間らしさも残っているいい役だった。太刀筋がすごく速いから、あんな人にロックオンされたら気づかないうちに首と胴体がさようならして死んでまうわ。

そして要所に瞬く流星。オタクだから星や天体観測は大好きだけど、こんなに恥ずかしくない星の使い方あるんだ、ってなんかこれまでのオタクとしての生涯が恥ずかしくなった。私は劇団☆新感線みたいなセンス目指そっと(???)

こんなに楽しいなんて、現地で観たらもっとすごい。現地で観たい、早乙女兄弟が出ているときがいい。早乙女ご兄弟は劇団☆新感線の演目に過去7回出演されているとのことで、きっとまた機会も巡って来ると願いましょう。星の巡りの思し召しのままに身を委ねて待ちましょう。

ヒロインの子達が一流すぎる

顔が爆裂かわいすぎてお肌も瞳もキラキラで、澄んだオーラをしていて、こちらの情緒がおかしくなるのは大前提として。山本千尋さんも久保史緒里さんもまったくお飾りのヒロインではなかった。芝居が上手いし熱量がある人に訴える何かがあったと思った。

私個人的に、女の人の叫ぶ芝居が苦手でして。女の人は好きだけど耳にキンキン響いてうるさいと思っちゃうし。でもガチモンのヒロイン人生の美人女優さんって、芯があって凛としているんだなぁ。やっぱりいい女って姿は可憐でも強いんだ、と思い知らされる。映画の画面越しなのにみさきのおとっつぁん芝居で鳥肌が立った。他の女優さんもかっこよかった。素晴らしい。

彼女たちが有償鑑賞に値するほど顔が小さくてキラキラでかわいいのは大前提として、それに加えて中国拳法や歌などの武器も携えている。厳しい世界だ。

あとあのレベルのかわいい子が出るなら本気で現地で観劇したい。あんなかわいい子を肉眼で拝める機会なんてたまったもんじゃないから、ぜひ現地観劇する際はまたかわいい子を出してほしい。

素晴らしい3時間のコスパでびっくりしちゃった。最高すぎて鑑賞後は胸に手を当てて、はわーって天使になっちゃった。語彙力。

どの役者さんも素晴らしく、芝居を生で浴びたいレベルの人しかいなくて、通路使った演出盛りだくさんで、配信であれだけ楽しかったんだから現地はもっと楽しい。
今の年齢でまた新感線に触れる機会をいただけてよかった。教養とはその時はよくわからなくてもどこかに残り、時間が経ってから自分を助けてくれるエッセンスなんだろう。人生まだまだ学ぶことばかり。機会をくださった早乙女友貴さんに感謝。

ゲキ×シネ 劇団☆新感線『天號星』は2024年5月より延長開始される劇場もあるようです。


劇団☆新感線 次回作は『バサラオ』

2024年の新作は生田斗真さんが出るんですね。人気者じゃんチケットとれねーじゃんふざけんなよ。チケット取れるの?めちゃくちゃ現地で見たいんですが。どうしたらいい?たすけて。トライしてみます!

【福岡公演】
2024年7月7日(日)~8月2日(金) 博多座
【東京公演】
2024年8月12日(月祝)~9月26日(木) 明治座
【大阪公演】
2024年10月5日(土)~10月17日(木) フェスティバルホール


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