舞台文豪とアルケミスト感想
今更ですが、2月23日の夜に、東京で文劇を見てきました。
とても良かったので、Twitterでもふせったーなど使って感想を流していたのですが、自分の備忘録として一個にまとめておこうかな、と。本当にとても良い話でした。
以下、ネタバレしかないので、見ていない方は注意してくださいね。
まず、話全体を通して、印象的なセリフがあります。
中也の「俺たちは文学に殺され、文学に生かされる」というもの。
いや本当、このセリフそのままの話だった……
そのままの話だったので是非色々な人に見てもらいたいです。
文学を守らなければならない理由に答えが出てたかなって。
文劇の主人公は太宰です。
太宰が主人公としてあの物語を考えると、
「太宰と芥川の出会いの物語」であると思います。
そして同時に、
「太宰と志賀の歩み寄りの物語」だったなあとも思うんですよね。
どちらも芥川、太宰の死によって現実ではできなかったことで、ロマンある話だよなと思うなどしました。
①太宰と春夫先生
まず、文劇はゲームと設定が違います。
細かいことあげるとたくさん違いはありますが、一番そうくるかー、となったのは「キャラの関係性の違い」です。
特に太宰と春夫先生のやり取りから、ゲームとは設定が違うんだなと強く思いました。
でも設定違うと嫌!と普段からなりがちな私が、意外にもすんなり受け入れることができました。
ゲーム自体、史実を基にした二次創作のようなものですし、史実を大事にしていればまあ特に思うことはなかったのかな、と言うことと。あとは「どんな記憶を保持しているか」の違いという根拠がしっかりしていたから、そんなに気にはならなかったのかもですね。
で、太宰と春夫先生なんですが。
ゲームと違って文劇太宰くんは「芥川賞をくれなかった」と春夫先生を非常に恨んでいます。
太宰くんがとにかくテンション乱高下が激しくてギャグ調になってますけど、物理的にも首を絞めにいく、または「自分の作品を嫌いな人に自分の作品に入ってほしくない」等の暴言も吐いています。
春夫先生普通に怒ってもいいよと思うレベルでしたが、春夫先生は、太宰に芥川賞をあげれなかったことに対する、罪悪感・後ろめたさを感じてるからか、その恨みを真っ向から受け止めています。
新しい形だなあと思ったんです。太宰と春夫先生はゲームだと全然違った関係を築いていたので。
ゲームの春夫先生も罪悪感や後ろめたさはあると思ってますけど、太宰くん側に芥川賞にまつわる記憶が(少なくとも最初に)ないので、距離感が全然違うんですよね。
この辺興味深かった……
②太宰と芥川
ここは考えていたのと大分距離感が違って最初驚いてしまいました。
太宰は芥川をとても尊敬していますが、積極的に話せない憧れの相手なのかなと思っていたので。ぐいぐいいく太宰を想像してなかったから普通にびっくりしました。
文劇太宰にとっては、芥川は手の届かない存在ではないんだなあ、と。
無邪気に自作を読んでもらえるとはしゃぐ姿は最初ちょっと意外でしたが全然ありです。ありありのあり。 今回の話で、芥川は太宰にとって完璧な神様ではないんだなあと思いまして、むしろ完璧な神様じゃないからこそ敬愛しているし、同時に助けたいとも思えるのかな、とか新たな解釈に目覚めました。
太宰は作品からわかる芥川の弱いとこも全部含めて愛していて、知らなかった、知る機会がなかったであろう芥川の根っ子の弱い部分にも今回初めて触れて、それでもそんな芥川が書いた作品だから自分は救われたんだと叫ぶのが……尊いとしか言えない……すみません致命的に語彙力がない。尊い。
③太宰と志賀
文劇太宰、思ってたより志賀としっかり話していてひっくり返りました。志賀の苦悩や人間らしさにスポットが当たってからの歩み寄り開始で、志賀と太宰が好きな人間としては普通に嬉しかったです。
太宰が如是我聞で志賀さんを批判したことはゲームでもネタにされているし、知ってる人も多いかと思います。でも、志賀さんが太宰が死んだ後に書いた太宰についての文章は知らない人もいるのかな?と思うので紹介までに。
「太宰治の死」という文章なのですが、志賀さんは著作権も切れていないので興味ある方は随筆集などで読んでみてください(ダイマ)
その話の中で「直接知り合えなかったのは残念だった」といった内容の文章が出てきます。
太宰と志賀は同じ時代に生きてはいたものの、直接の知り合いではありませんでした。だから相手を直接知らない中での紙面上での対立です。あくまで個人の感想ですが、喧嘩にもなってないのでは?という認識でした。
相手を知らなかったから喧嘩もできないし、助けることもできなかったんです。そういう関係だったんですよねあの二人は。
じゃあ知り合ってお互いのことを知ったらどうなるの?
私はやはり「直接会ってお互いの本音をさらけだしてからが二人の関係形成の本番」と思っていたので、文劇はそれを叶えてくれたんですよね。
それもあって、志賀が最後太宰に向かって手を伸ばしたのめちゃくちゃ感動してしまったのです……。
相手を知れたから助けようと手を伸ばすことができんだなあ、と。
さて、一番好きなシーンの話を最後にします。
一番好きなシーンは、やっぱり蜘蛛の糸のシーンです。
「俺と一緒に生きてください」を太宰に言わせるのが、あまりに感慨深くてですね……
死にたがりの太宰が、「一緒に」っていう。「一緒に」生きてほしい、なんだよなあ。なんかそれがすごく好きです。
そんな二人に生きろ、って叫んで皆が引っ張り上げるとこも含めて素晴らしかったです。
あのシーンを見返したくて公演後DVD即買いしてたしね。
続編待ってます。