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100年後の君に、詩集を贈る 番外編〜室生犀星詩集のこと〜

今、僕の目の前に一冊の茶色い古びた詩集があります。昭和4年、1929年に出版の室生犀星詩集。なんと今から91年前の本!

一番最後のページには「明日は試験だというのに、勉強がイヤになった」と赤い鉛筆で書かれています(笑)最初の持ち主が学生時代の試験勉強をサボって、本屋で買った一冊のようです。

僕も辛い状況にある時は、昔からよく本屋に駆け込んだもんです。

この室生犀星の詩集、1940年代の第二次世界大戦の時代を越えて、91年という歳月を越えて、2020年ゆよん堂に存在します。現在手元にある本で、最古の本です。最初の持ち主からの時を越えた贈り物だと、僕は思っています。

さて、いま目の前にもう一冊の本があります。中原中也の詩集です。この詩集には、以前、山口県の湯田温泉の中原中也記念館に新潟から旅をした時、持って行って、来館スタンプを最後のページに押してあります。

この詩集がもしかしたら100年の時を巡り巡って、誰かの手の元で読まれていたらと思うと、それは何だか凄い過ぎでよくわからないような気持ちですが、でも、それはきっと嬉しいことです。

中原中也が宮沢賢治の詩集「春と修羅」に感銘を受けて、何冊も買い込んで文学仲間に配り歩いたというエピソードが僕はとても好きです。そんな感じで自分は古本を売っている気もします。

100年後の君に、中也の詩集を贈ります。

詩人の長田弘さんがエッセイで、「本や言葉は、前世代からの一時的な預かり物で、現在の持ち主は大事にして、次世代に受け渡しをする役割がある」という趣旨のことを書いていました。

本はその作者や制作に関わった多くの人達、さらに、古本なら前の持ち主からの贈り物でもありますね。

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※本稿は、本屋しゃん企画の映画「タゴール・ソングス」に関連したオンライン・ブックフェアに、ゆよん堂として寄せた文章のアウトテイクです。100年後の誰かに届けたい本を色々な方が選書、コメントを寄せています。とても素晴らしい企画ですので、ぜひご覧になってみてください。

ONLINE ブックフェア  映画「タゴール・ソングス」誕生記念ー 100年後に、この本を心を込めて読む、あなたは誰ですか?
https://note.com/honyashan/n/nf834dcd3044a

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