"Network State"ーみんながまだ知らないWeb3の未来とは?
Web3というワードは、さまざまなメディアで日々取り上げられており、世間一般にもだいぶ浸透してきたように思います。
Web3への資金や優秀な人材の流入はいまも世界中で起きていて、僕が経営するGaudiy(ガウディ)という会社も、シリーズB総額で34億円を調達することができました。嬉しいことに、優秀な仲間も続々と増えています。
しかしながら、結局のところ、Web3が人々にどんな価値をもたらすのかがよくわからない、というのが現状ではないでしょうか?
その背景のひとつに、ブロックチェーンは唯一、過去にSFで描かれてこなかった技術だという興味深い話があります。AIやVR、ロボットなど、世の中のテクノロジーはさまざまなSF作品の題材にされてきましたが、分散型技術のブロックチェーンはヒーローが登場しないために、物語をつくりづらい。
Web3はまだ黎明期であり、いまのUXで語るべきでないとも言われたりしますが、根本的にはこの「未来の『絵』が見えない」ということが、わかりづらさを生んでいるように思います。
僕自身、Web3が分散化を実現するとか、Web3がGAFAにとって代わるとか、そういう話にはまったくピンときていません。GoogleもAmazonも、便利だからサービスを使っているし、今後も使い続けると思います。
加えて、カネくさい話ばかりが蔓延している状況が、人々をWeb3からますます遠ざけてしまっている。これはとても残念なことです。
前回のnoteでも書きましたが、僕は、Web3の本質は「カルト的な価値共創となめらかな価値分配を実現すること」であり、使い方さえ間違わなければ、ものすごく社会的価値のある技術だと考えています。
そこで今回はさらに一歩踏み込んで、「Web3が実現する未来」について自分の考えを書いてみたいと思います。
はじめにお断りしておくと、これから書くことは「人類にとって」という大きなスコープの話です。Web3の技術は、あらゆる領域で、課題解決の手段として活用されていくと思いますが、今回は個別の事象を扱いません。
Web3が、我々人類のどんな課題を解決し、どのようなベネフィットを与えるのかについて、自分なりの考察をまとめてみます。
Web3とは、いったいなんなのか?
まずはじめに、Web3とはなにか? について改めて簡単に触れます。
前回のnoteでは、Web3を「カルト的な価値共創となめらかな価値分配を実現するプラグイン」であると定義しました。
Web3は、あくまで手段です。ですが、この手段を用いてどのような世界が実現できるのか。その解像度がまだまだ高くないと思っています。
そもそも、Web3を理解するには、前提となる知識が膨大に必要です。ブロックチェーンはよく「総合格闘技」と言われたりしますが、コンピューターサイエンス、サービスデザイン、金融工学、経済学、哲学など、あらゆる学問や知識が関係しており、すべてを理解するのは容易でないことをまずは前提として知っていただきたいと思っています。
その上で、イーサリアム財団が運営するethereum.orgから言葉を借りると、Web3のコアエッセンスとしては以下の4つです。
分散化されていること(中央管理のシステムではない)
パーミッションレスであること(誰も排除されずに参加できる)
独自の決済手段を持つこと(法定通貨や銀行に頼る必要がない)
トラストレスであること(第三者機関を通さずに承認できる)
この詳細については後述しますが、僕が今回お伝えたいことは、Web3は誰もが「あたらしい国民国家」を創造できる技術だということです。
「国家」というと既存の国家を思い浮かべる人が多いかと思いますが、ここで言及する「国家」とは、国による政治的介入要素をもたない「分散型ネットワークによるオンラインコミュニティ」がイメージに近いです。
既存の国家とは異なる仕組みで、国家を超越する可能性を秘めたオンラインコミュニティを創造することができる。それがWeb3の世界です。
Web3が実現する「あたらしい国民国家」
Gaudiyでは、創業初期から「ファン国家の創造」というビジョンを掲げています。僕は以前から、ブロックチェーン技術を活用すれば "国家" をつくれると考えていますが、そのビジョンを伝えることには苦心してきました。
ですが実際に、これに近い思想は、世界最高水準のインテリジェンスをもつ人々によってすでに提唱されています。Ethereum創始者・Vitalikの「Decentralized Society」やAlexander Gallowayの「プロトコル」、SmartNews共同創業者CEO・鈴木健さんの「なめらかな社会とその敵」など、分散型ネットワークが実現する新しい社会がそれぞれの視点で描かれています。
そして最近、僕がめちゃくちゃ衝撃を受けたのが、2022年7月4日に公開され、個人的に人類で最も天才だと思っている元Coinbase・CTOのBalaji Srinivasan氏が著した「The Network State」という書籍です。
(ちなみにBalaji氏は、新型コロナや米国の選挙、貧困問題などの未来をいろいろと当てていることから、世界中で「タイムトラベラー」という愛称で呼ばれているほどの人物ですw)
Balaji氏はWeb3が実現するNetwork Stateについて、概念から立ち上げ方までを紹介しています。日本語で扱っている文献やSNSの議論がほぼないため、興味がある方はぜひ原文で読むことをお勧めしますが、ここでは要点をご紹介します。
まず、その定義としては、以下のように説明されています。
もう少しわかりやすく言うと、既存の国家は「物理的な領土」をベースに形成されていますが、Network Stateはオンラインネットワークによって、ノード的につながったコミュニティから成り立っています。
Network StateはWeb3の技術を基盤としていることから、パーミッションレスを基本に、多くの人が自らの意思を持って参加できることが特徴です。
またBalaji氏は、オンラインコミュニティがNetwork Stateに発展するまでには、3つの段階があると説明しています。
Network Stateは、既存の国家を代替するものではありません。ですが、ブロックチェーン技術を使って、今までにない "State" をつくれる。
かつてホッブズの時代に、人々が平和と秩序を維持するために「リヴァイアサン = 絶対王政(国家)」をつくったように、新たなリヴァイアサンとしてのEncryption(暗号化)であり、Network Stateの時代が来るといいます。
Network Stateはどんな社会課題を解決するのか?
Web3の技術で実現するNetwork Stateは、社会に対してどんな価値をもたらすのでしょうか?
僕は、Web3が人類に与える最大のベネフィットは、すべての人が国家や社会に依存せずに、所属するコミュニティを自ら選ぶことができ、その一員として貢献し、還元を受けられることだと考えています。
Web3の要素をふまえて説明すると、Network Stateでは、国境や人種を越えて(=分散型ネットワーク)、同じ志をもつ人々であれば誰でもコミュニティに参加することができ(=パーミッションレス)、その所属するコミュニティで共創・還元することができます(=トークン・トラストレス)。
日本で暮らしていると想像しづらいかもしれませんが、たとえばあなたがウクライナに生まれた男性だとします。戦争をしたくなくても徴兵され、国家から脱出したくてもできないかもしれません。
既存の国家とは領土・国民・権力の三要素を有するものであり、簡単に国籍を変えることはできません。つまり、生まれた時点で所属するコミュニティ(国家)が決まっており、それを変更することは基本的にできないのです。
また、国家レベルではなくても、自分の意思で好きなコミュニティに参加できるかどうかは、人の幸福度に影響します。
ハーバード大学がおよそ80年かけて取り組んだ研究によれば、人を幸せにするものは金や富、健康ではなく、「同じ志をもつコミュニティで、頼り、頼られて生きること」だという結論が出たといいます。
日本は豊かで恵まれた国ですが、バブル崩壊後から続く「日本の閉塞感」はいまだに社会問題になっています。米ギャラップ社の調査では「日本で熱意を持って働いている社員は全体の6%」という結果も出ているほどです。
現在の社会では受験や就活などで選抜されるのが当たり前ですが、もし誰もが、自分が希望するコミュニティに参加することができるとしたら、人々はもっと熱量高く、イキイキと活動できるのではないでしょうか。
その意味で、Web3はある特定の課題を解決する以上に「人の幸せを実現するもの」だと僕は思っています。
つまり、自分なりにWeb3を再定義するならば、カルト的な価値共創となめらかな価値分配を通じて、人々がもっと幸せに生きられる社会を実現する手段だと考えています。
Web3で実現する未来ー国家とNetwork Stateー
ここからは、Web3で実現する未来をさらに想像してみます。いまの社会となにが変わるのか? について、既存の国家やオンラインコミュニティと比較しながらまとめてみます。
1. 理想的なStateに所属でき、移籍も簡単に
先述したように、Stateはパーミッションレスで、国や人種によらず、誰でも自分が好きなコミュニティ(State)に参加することができます。
Stateの情報はパブリックになっているため、より共感できるビジョンや、望ましい社会福祉を提供しているようなStateを自ら選ぶことができ、移籍もしやすいです。より自由競争に近くなるため、それぞれのStateが環境をより良くしていくインセンティブが働きます。
2. 複数のStateに参加して、分散型IDで信用を紡ぐ
既存の国家とは別に、複数のStateに所属することが可能です。たとえば日本の国籍を持ちながら、ヘルシー増進Stateや動物愛護Stateなど、複数のアイデンティティを持つことができます。
ブロックチェーン技術を活用した「分散型ID」によって、国家やサービスではなく個人にIDを帰属させることができるため、複数のStateや国家における活動・資産などの個人データを連携でき、信用を引き継ぐことができます。
3. 理想の経済圏をつくり、自己実現ができる
Stateの創始者はトークンを活用したエコノミクスの設計ができるため、理想とする経済圏をつくり、人と資金を集めやすくなります。(Web2的なオンラインコミュニティとの違いもこの点にあります。)
また参加する人は、同じ志をもった人同士で共創・還元されるため、パーパスを持って生きられるようになり、自己実現につながります。トークンの価値が上がると、その人自身も恩恵を受けるため、自分たちのStateをより良くしていこうとするインセンティブが働きます。(いわゆるDAOです)
▼こちらのnoteがわかりやすいので、よければご参考ください。
Web3の未来が、なんとなく伝わったでしょうか?
既存の国家に置き換わるわけではないですが、Stateが選択肢として増えることで、誰もが自分らしく生きられる社会が実現できると思っています。
ガウディの描く「ファン国家」とは
Network Stateは、想像しがたい、ずっと先の未来に聞こえるかもしれません。しかしながら、自分が参加したい社会をつくるサービス「FreeSociety」など、近しい動きはすでに起きています。
そしてGaudiyは、エンタメIPとファンを中心としたNetwork State「ファン国家」をつくろうとしている会社です。
今後は、国籍はアメリカだけど、Network Stateはポケモンとワンピース、みたいな人がでてくるかもしれません。自分が所属したいコミュニティを自由に選べて、パーミッションレスで参加できる。ファン活動で貢献した分がフェアに還元されて、IPとファンが共に成長できるようなファン国家です。
僕は、人は本来、誰しもがイノベーティブであり、クリエイティブだと信じています。既存の国家や社会システムでは、その力を最大限に発揮できない構造になっていましたが、それを変えられるのがWeb3だと思っています。
Web3は、あたらしい国家をつくることのできる技術です。ジャニオタやガンプラ職人などが「職業」になり、推し活で生活が成り立つような、そんな未来をつくっていきたいと思います。
さいごに告知
Gaudiyは「ファン国家」の実現に向けて、ブロックチェーン技術を活用したファンプラットフォームサービス「Gaudiy Fanlink」を開発・提供しているWeb3スタートアップです。
シリーズBの追加調達を実施し、総額で34億円の調達を完了した旨を、昨日のプレスリリースで発表しました。
特設サイトも更新しました:https://special.gaudiy.com/
ファン国家という壮大なビジョンに対しては、まだまだ1%も実現できていません。やることは山積みであり、これからが正念場。
社内では「シリーズCでユニコーン」を合言葉に、待ったなしでアクセルを踏んでいくフェーズです。(サンリオ、ガンダムなど、めちゃくちゃ大きいIPとの取り組みがどんどん始まっていきます。)
困難だけどワクワクする挑戦をしたい方、ユニークで優秀な仲間と一緒に働きたい方にはマッチする環境だと思うので、少しでも興味あればぜひカジュアルにお話しできると嬉しいです!
採用サイト、Culture Deckもあるので、興味ある方はぜひー
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