#345 地元のことは案外よく分かっていない。福井・九頭竜ダムの魅力
いかがお過ごしでしょうか。林でございます。
週末は、祖母の法事などで地元の福井県に帰ってました。
今回、私も富山に住んでいる妹も、それぞれ子どもは連れずに一人で帰ってきたこともあり、おそらく私たちきょうだいが独身時代ぶりに、自分の両親を含めた4人で出掛けることになりました。
行き先は、福井県大野市にある九頭竜ダム。
出身地なので、もちろん名前は聞いたことはありますが、実は生まれて37年間、行ったことがなかった場所です。
高校卒業まで地元に暮らしていたとはいえ、小学校くらいまでの記憶は曖昧だし、中学・高校は部活や学校行事であまり親と県内に出掛けることはないですから、実は、私のように「地元が地方で18年近く住んでいたとはいえ、地元のことを実はあまりよく分かっていない人って多いのではないか?」と感じています。
特に自分の場合、福井は生活する場所としては便利だと感じていた反面、早くより広い世界が見たい!と考えて勉強して関西の大学、その後もっと知らない世界を!ということで東京都内の企業に就職し、それでも物足りず海外の仕事に10年近く取り組んでいましたから、ただ生活していただけでは、地元の魅力ってよく分かっていなかったのです。
よく、「一度外に出ると地元の良さが客観的に分かるようになる」と言いますが、この説は当たっていると思います。外に出てみないと、外から見た人からの見え方なんて分かりようがないですからね。
地元に帰っている間に読んでいた福井新聞では、連日、若者を都心部に行かせないために、例えば「大学受験希望者数に比べて県内大学全体の受け皿が少ないから広げるべきだ」みたいな議論が取り上げられていました。そんなことをしても外に行く人は行くし、外に行く機会を持てた方が自分たちの良さを再認識できると思うんだけどな、、とか考えながら読んでいました。
普段、都内で生活していると、地方から見た人口減少への捉え方に触れる機会がないので、密かに地方紙を読むのを楽しみにしていたりもします。
ということで、今さら初めて訪問した「九頭竜ダム」の魅力について、取り上げてみたいと思います。
九頭竜ダムとは?
九頭竜ダムは、福井県と岐阜県の県境にある「油坂峠」付近からはじまる福井で最も大きい川(全長116Km)の九頭竜川の上流に作られたダムです。
日本の総貯水量ランキングでは、全国で2,700基以上あるダムの中で第6位となかなかの貯水量を誇っており、全国に約300基ある「ロックフィルダム」の中では、日本で3位の大きさとなっています。
総貯水量を25mプールに換算すると、九頭竜ダムは約73万5000杯分になるようですが、これでもあまりイメージできないですね。笑
「ロックフィルダム」とは、地域の山の岩を積み上げ、岩の中心部の粘土の壁により水を漏らさない仕組みとしているダムのこと。周囲の山に豊富な岩石がないとできない方式で、200トンものダイナマイトを使って山を爆発させて岩石を作り、アメリカから輸入した30トンのダンプトラック25台を用いて作られました。
私の実家もある福井県福井市から大野市って実は結構距離がありまして、以前だと九頭竜ダムに来るのに1時間以上はかかっていたのですが、これまで貫通していなかった北陸自動車道と東海北陸自動車道をつなげる「中部縦貫道」の工事が進められています(下図の赤枠の部分)。これにより、九頭竜ダムまでも市内から高速で行けるようになっており、さらに今は貫通前ということで無料で使えるようになっていますから、割とアクセスしやすい場所になりました。
余談ですが、上述した「中部縦貫道」の工事では、東海北陸自動車道と長野自動車道を貫通させる計画で、これまで福井から見ると東にある岐阜県や長野県には迂回して行く必要があったのですが、今後横串で繋がるようになります(上図の青枠部分)。
道が繋がるとそこに来る人も変わりそうで、道路整備計画って奥深い世界ですね。
最近では、観光スポットの一つとして「ダム」の人気も高まりつつあるそう。確かに山の中にあることが多く、季節によって表情が全く変わるので、自然観光として魅力的な場所です。九頭竜ダムは、紅葉スポットとしても人気の場所なので、是非近くに来られる予定がある方は、訪れてみてください!
九頭竜ダムの歴史を知ると更に面白い
ダムの近くに展示室があり、過去の自分であれば間違いなくスルーしていた場所なのですが、現代史の面白さを知った自分としては、なかなか胸アツなところでした。
九頭竜川は、流域の暮らしに恵みをもたらしてきた一方で、大水害を度々引き起こし、特に1959年に連続して発生した台風による水害では、川が溢れて道路が流されるなどして、約3万人が被害に遭いました。これをきっかけに、川の水を調整して福井平野を洪水から守る目的で九頭竜ダムの計画は進められ、調査から8年の時間をかけて1968年に完成しました。
大雨で増えた水をダムで一時的に蓄えて下流の川が溢れないようにする「洪水調節」だけでなく、水が流れ落ちる力を利用して電気を作り出す「発電機能」もあります。水を上から下に流してタービンを回す水力発電のイメージはありましたが、何と再度下に落ちた水を上に吸い上げて、水を循環させているとのこと。
九頭竜ダムの高さは128mで、通天閣(108m)と京都タワー(131m)の間くらい。この高さを利用して一気に水を下に落とし、すぐ横にある長野発電所(長野は、大野市内の地名)の地下発電設備のタービンを回しています。
長野発電所では、1年間に3億5600万kWhの電気を作っており、これは一般的な家庭が1年間に使う電気量の約10万軒分(福井県で1年間に使う電気量の約5%)になるとのこと。
こんなに険しい山奥で、近くの山をダイナマイトで破壊して、岩石を集めて積み上げて作ったダムですが、今から約60年前に10年もかけずにこれだけ巨大なものを作り上げた当時の工事関係者には頭が下がりますね。
実は周辺にも色々ある
山奥なのでダムしかないのかな?と思ってましたが、中部縦貫道の開発で東側に道路を繋げようとしていることもあり、ドライブコースにはなかなか良さそうな場所でした。
近くの「道の駅 九頭竜」には動く恐竜もいて、こんなところにも恐竜!て感じ。
高速で少し福井市内側に進んだところにある「道の駅 荒島」は、2021年に開業した道の駅とサービスエリアを兼ねたところとなっており、高速道路利用者もそうでない人もアクセスできる仕組みになっています。
中には、巨大mont bellのほか、道の駅内で宿泊できる車専用の有料宿泊サイト、カヌー体験池、クライミング体験、ヘリコプター離発着地、レンタサイクルなどもあり、なかなか面白い場所でした。
地元とは言え、離れて20年近く経っていると、かなり変わっていることを実感した週末でした。
福井に来たけど「東尋坊」「永平寺」「勝山恐竜博物館」など有名どころは一通り行ったことがある、という方は、ぜひ車で足を運ばれてみてください!