#224 フランスに学ぶ休暇マネジメント
いかがお過ごしでしょうか。林でございます。
いつから始めたのかは明確に覚えていないのですが、おそらく5年くらい前から毎年2週間程度の休みを取り、まとまって海外に行くようにしています。
スペイン、ハワイ、イタリア、オーストラリアなど、毎年どこかの国で何もしない日を数日は作れるくらい余裕のある旅程を組んで、のんびり過ごすのが好きです。
これ、一度やってしまうと、毎年やらないと身体が持たないといいますか、仕事の生産性にもとても良い影響を与えているのを実感しています。
私は、普段の仕事もそうなのですが、一気に集中力を高める時間を意図的に作って、「今日はこれをやるぞ!」と決めたことを一気に終わらせる仕事の仕方をするので、1日8時間勤務も身体が持たないんですね。
過去記事でも書いてますが、1日4〜5時間くらい仕事したらもうヘトヘト。でも、良い仕事をするためには、これくらいがちょうどいいと本気で思っています。
管理職として今年度から取り組んでいるチーム時短の取り組みでも、いかに自分のチームメンバーに休んでもらうか、は命題となっています。
早いものでもう6月も後半で、今年度の取り組みの第一四半期の振り返りを近々noteでもしようと思っていますが、「とにかく隙あらば休んでくれ」「予め休みを申請してしまってね」と口酸っぱく言い続けた効果なのか?今のところチームメンバーたちは去年度よりも良い感じで労働時間削減も踏ん張ってくれています。
そんな私にとって、いかにメンバーに上手く休んでもらうかを設計してもらうのは重要ミッションの1つ。知識としても、人はどう休み、休むことの効能を自分の言葉でも話せないとなということで、読み始めた1冊の本をベースに、「休んでもらい方」のマネジメントを習得すべく、整理していきたいと思います。
参考図書はこちらです。
「バカンス大国」フランス
フランスは、労働法で年間最短5週間の有給休暇の取得が定められており、年間の平均取得日数は33日です。休暇期間の大半は7月、8月の2ヶ月間に集中し、多くの国民が数週間の休暇を取得しています。
この時期は、ビジネスも役所の手続きも何もかもが停滞し、仕事のアポやサービスのローンチはご法度。「よく働き続けるには、まとまった期間を休む必要がある」と国全体で認めている風潮があります。
2023年12月に公表された労働生産性の国際比較では、フランスはG7の経済大国でありながらG7内で3位(日本はG7中最下位、全体で30位)。就業1時間あたり付加価値は、日本が52.3ドルであるのに対して、フランスは83.9ドルとなっています。つまり、同じ消費やサービスの価値を創出するのに、日本ではフランスの1.6倍の時間がかかるということです。
日本も、2019年4月の年次有給休暇取得に関する労働法の改正が行われ、従業員に一定期間のまとまった休暇を取らせることが雇う側の義務になりました。
しかし、制度は変われど、仕事量も組織も変わらずでは、ただ上から部下を休ませろとの命令を受けた現場管理職が、自分の休暇を犠牲に業務の帳尻を合わせるという苦しい事態が起きているところもあります。
そこで、いわゆる「オッサン型管理職」のイメージをアップデートする「次世代型管理職」の拡がりを目指す私としては、「働いてもらい方」と同時に「休んでもらい方」のエッセンスを学ぶ必要があると感じたのです。
そして、今ではすっかりバカンス大国を誇るフランスも、はじめは今の日本と同じ「休めない国」であったことを知り、時間はかかるがこれは希望が持てるなと感じ始めています。
休み下手な国から、休むために働く国へ
今では「バカンス大国」と認知されているフランスも、20世紀前半には、数少ない休みの日にも別の仕事をしてしまう「休み下手」な国だったようです。
そこから、大きく3回のトランジションを経て、現代に至っています。
1回目は「バカンス元年」と呼ばれ、全国的、かつ全職域の労働者に、共通の年次有給休暇制度が適用され、原則連続取得で15日間の取得が保障されたタイミングです。
長期休暇に対する理念として「人としての尊厳を守る」という生き方の根本に関わる狙いが明言されており、日本のように「年休=心身を休めることで、仕事の生産性を高める」という実利的な狙いでないところに特徴があります。
しかし、休暇があっても金銭面の余裕がなく、バカンスは金持ちの道楽という悪印象もあったことから、国民の反応は冷ややかだったようです。
そこで政府は、旅する際の電車賃を国負担で補助したり、アウトドアやスポーツといった、比較的お金のかからず健康的な余暇の過ごし方を地道に推進しました。
2回目は、戦後復興期です。
フランスも日本の高度成長期と同じように、1945年の戦後から1970年ごろにかけて「栄光の30年間」と呼ばれ国民の所得が上がったことを受け、バカンスを取る人は、1951年の800万人から1966年には2,000万人以上に増加しました。
1950年代初頭には8%しかなかった自家用車所有率も、1975年には73%まで上昇し、バカンスの移動手段になりました。
3回目は、1973年、1979年のオイルショックによる大不況です。
ここでバカンス文化が縮小すると思いきや、政府は不況対策としてバカンスを利用しました。限られた仕事を1人でも多くの人で分かち合うワークシェアを掲げることで、週40時間労働を段階的に35時間と縮小することで、働き手の雇用を確保する作戦に動きました。
「休む肯定感」を組織に醸成するのが大切
希望があるのは、元々のフランスの国民性が長期休暇を可能としているわけではなく、国民の意識改革も含め、段階的にバカンス大国に遷移していることです。
そんなフランスにおいて、管理職がどのように休暇をマネジメントしているか、というテーマで複数のインタビューが行われていますが、「早めに長期休暇宣言をして、事前に仕事のアサインを調整しておく」という、当たり前の話で共通していました。
自分がチームや組織に対してできることを考えると、やはり実体験として感じている「休むことの効能」を言語化して訴え続けることで、「休む」ことの捉え方を少しずつ変えていくしかないのかなと。
例えば、上述したフランスがバカンス大国に移行してきた背景も、年間で2,000時間も働いていたら、読書を通じて知る由もないですよね。
でも、「休暇中に見聞きしたもの、体験したこと、全てが仕事の糧になる」というのは頭脳労働者の宿命で、特に管理者であれば常に「自分たちの常識は、外の非常識」という感覚を持ち、外を知るために時間を費やすことが肝要です。
自分がチーム時短に必死になっているのも、今年3月に家族と2週間の子連れオーストラリア旅行で感じた日本の働き方に対する違和感が根底にあり「国が言っているから、会社が言っているから」というのが、モチベーションの源泉ではありません。
すぐに全体を変えることは無理でも、「40年以上働き続ける人生において、仕事以外の世界を知り、後々まで家族と語り合える思い出をいかに作っていくか」、「休暇中に得た知識や経験を本業で活かして、いかに成果を出していくか」ということを地道に社内に対して発信し続けていくことで、少しずつ雰囲気が変わっていくと思っています。
それでは、今日もよい1日をお過ごしください。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!