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#322 管理職になりたくない人は77%。管理職育成が足りない問題

いかがお過ごしでしょうか。林でございます。

私の課題意識が高い分野は「はたらく幸せ実感」が低いことで、それに大きく影響していると考えているのが、日本独特の組織文化です。

高度経済成長下においては、「年功序列・終身雇用」が上手く回った面があり、会社が定年までの生活を保証してくれるということに対して報いていれば結果も出て、ある一定の年齢に達すればそれなりのポジションも保証された「みんな一緒であることがいい」の価値観と安心感がありました。

「とりあえず上の言うことには従う」が、「年功序列・終身雇用」制度では得策であり、それが近年の行政や企業の組織文化を形成してきたと考えています。

同時に、生産労働人口のピラミッドの面でも、相対的に年齢が上の人が少ない時代でしたから、ある一定の年齢に達すれば「そろそろ管理職に任用を・・」という慣習となり、「管理職育成」に真剣に向き合わなくても何とかなってきたのだろうと推察します。

近年、「管理職になりたくない人が増えている」「管理職の負荷が増大している」という話をよく聞きますが、実態はどうなんでしょうか。

企業向けの人材育成研修などを手掛ける「日本能率教会マネジメントセンター(JMAM)」が、2023年4月に行った調査結果を公表しているので、今日は本調査結果に基づき、考えを述べていきたいと思います。


77.3%が管理職になりたくない

2023年4月の調査で、一般社員に対して管理職になりたいかどうかを調査したところ、77.3%が「管理職になりたくない」との回答でした。
2018年の調査では72.8%だったということで、5年で4.5%上昇しており、「管理職になりたくない人が増加傾向にある」という潮流が広まっているようです。

また、「今の仕事が面白い」と感じていながら「管理職にもなりたい」と感じている「ポジティブ部下」に分類される人は、全体の17.3%に過ぎないようです。私自身も管理職になる前は、「仕事には面白さを感じていたものの、管理職になりたいとは思っていなかった」ため、下図の分類で言えば左上の32.2%が該当していました。

出所:JMAM「管理職の実態に関するアンケート調査」、以下同様
https://www.jmam.co.jp/hrm/column/0095-kanrishokuchousa.html

一方で、管理職に対して「管理職を続けたいかどうか」を問う調査では、70.4%とこれまた7割近い人が「管理職を続けたい」と回答しています。

管理職になる前は「管理職になりたくない」と考えていましたが、管理職になった後は「管理職を続けたい」と感じているパターンが最も多いということで、完全に私もこのパターンです。(下図の右下の「ネガ→ポジ管理職」に該当)

「今の仕事が面白い/面白くない」「管理職を続けたい/続けたくない」という設問の回答に対して、管理職全体の56.4%は「今の仕事が面白い」かつ「管理職を続けたい」と感じているということで、一つの問題として浮き上がるのは、管理職になる前となった後で、管理職に対するイメージと実態にギャップがあるということです。

管理職のイメージと実態のギャップは勿体無い

働き方に対する価値観や特性は人それぞれですから、別に全員が管理職を目指す必要はないと思っています。
でも、私個人が実際に管理職をやってみて感じていることとしては、「全員に管理職をオススメしたいくらい、楽しい役割である!」ということです。

少なくとも、一般社員と管理職で「管理職のイメージと実態にギャップがありそう」なのは上述した通りで、100%とまではいかなくても、ある程度は管理職業務に対する正しい理解があった上で、それぞれの方への向き・不向きが判断されるようにはなって欲しいと考えています。
なぜならば、本当は管理職として適性があるのに、管理職になる前のイメージだけで「私には向いていない」と判断されてしまうのが勿体無いからです。

「勿体無い」というのは、もちろん本人のキャリアにとって、という意味もありますが、「管理職」というポジションで仕事をした方が、周囲の人へのポジティブな影響をよりもたらせる人なのに、その機会が閉ざされてしまっている、という事実に対する勿体なさを感じてしまうのです。

冒頭で述べた通り、私の課題認識は「はたらく幸せ実感」が低い職場が日本ではまだまだ多いことであり、管理職のマネジメント行動が、はたらく幸せ実感に大きな影響を与えている組織文化により直接的に関わっています。
だから、本当は特性があって、組織の周囲の人を元気にさせたり、組織力を上げることができる人は、よりその潜在能力を如何なく発揮してもらいたいと考えています。

本レポートでも、「ポジティブな管理職が組織のパフォーマンスを高める」との考察がなされており、組織力をアップさせる「ポジティブ・エナジャイザー」の重要性を説いています。

特に、女性管理職はドンドン増えていくべきです。「私には向いていないから・・」と感じる方が多いようですが、それは「(今当たり前になっている管理職の働き方には)私は向いていない」が正しい理解だと考えています。

ジェンダー論を唱えるつもりは全くありませんが、男女問わずマネジメント業務に向いている人が30%いたとして、男女合計100人の中から選出できれば30人のマネージャーを各現場に配置できるのに、男性50人の中からしか選べなくなってしまっている時点で、本来マネジメント業務に向いている女性が、その能力が日の目を見ることなく埋没してしまっています。でも、仕事も増えて必要な管理職の数も増えているから、本来マネジメント業務に向いていない男性まで管理職にせざるを得ない状況にある。結果、マネジメントできない人が管理職になってしまうから、活気のない残念な現場が一定数生まれてしまっている、というように現状を捉えています。

管理職のイメージと実態にギャップが生じる理由

なぜ、管理職のイメージと実態にギャップが生じてしまうのでしょうか。私は2つの理由があると考えています。

管理職側の自己開示と発信不足

1つは、管理職側からの「管理職の楽しさ」に関する発信が不足しているからです。私がnoteを書いている大きなテーマの一つがここにありますが、大企業に勤める企業の管理職が日々の生活の中で感じていることをリアルタイムに知れる機会って、そんなに多くないと感じています。
だから、私はありのままに日々感じているリアルを伝えて、一人でも「マネジメントの仕事も悪くないかも?」と思ってもらって、マネージャー仲間ができると嬉しいなという気持ちで書いています。

私個人が持っていたギャップの一つは「管理職になると、調整事ばかりで自由に仕事ができなくなる」ということ。調整事が多くなる面は確かにありますが、一方で「チームで何をやるか」というWhatそのものとそのアプローチを決められるので、むしろ自由度は高くなります。自分が優先度が低いと思う仕事は、メンバーにも「やらなくていいよ」と言って、「やめる」「必要最小限にできる」のです。

マネジメント行動に対する育成

2つ目は、管理職・一般社員に関わらず、マネジメント行動に対する育成が不足していることです。マネジメント行動は現場で実際にプロジェクトのマネジメント経験をすることで最も磨かれるのは事実ですが、そのアサイン創出やマネジメントとしての行動を社員が学ぶことができるかは、各現場にいいマネージャーがいるかどうかに依存してしまうところがあります。

特に行政組織では、「管理職の役割定義」を知らないままに管理職のポジションに就いてしまっている人も少なくないとのこと(!)。

本来、プレイヤーからマネージャーに変わるということは、それまでの役割とは全く別の役割となるので、それまでのプレイヤーとしての成功体験などは一度ゼロリセットする必要があると考えますが、プレイヤーの延長上で仕事をしてしまっている管理職が少なくないようです。

一点目で述べた「管理職の自己開示と発信」が不足しているという指摘もそうですが、やはりマネジメント行動に対する育成機会が少なすぎると思うんです。
一般社員であるときから、管理職のリアルについて理解する機会や役割の違いについて理解する機会がないことが、不要なイメージのギャップを生み、特製のあるマネージャーが適切にマネジメントポジションに就けていない原因であると考えます。

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林 裕也@30代民間企業の育児マネージャー
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