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#307 新規顧客開拓より「目の前にいる人」をファンにしよう!個人事業戦略により重要なカスタマーリテンション

いかがお過ごしでしょうか。林でございます。

今日は、マーケティングの話をします。

最近、記事を書きながら思考を深めている個人事業へのマーケティングの適用、ということで、マーケティング戦略から今後人生の中での時間配分、行動の優先順位を決めるために改めて勉強し始めました。

マーケティングに関する書籍は五万とありますが、そんな分野ではロングセラーがやはり強いと思い、初版が1997年に発売され、最近では2019年に4版に改訂されている「グロービスMBAマーケティング」を読み進めていました。

3C分析や、SWOT分析、4P分析などの基本的なフレームワークや、ブランド戦略、広告戦略、価格戦略の話など、マーケティングに関する一通りの基本的な考え方が広く紹介されている良書です。「マーケティングとは何ぞや?」という方は、一度読んでみられると面白いかと思います。

今日は、私が特に目を引いた部分である「カスタマークリエーション(新規顧客開拓)よりもカスタマーリテンション(顧客維持)」という部分について、掘り下げて考えていきたいと思います。

なぜ、カスタマーリテンションが重要なのか?

カスタマーリテンションとは、既存顧客との関係性を重視して商品・サービスを継続的に利用してもらい、更なる関係構築を目指すための施策のことを指します。

今から30年近く前でも、「マーケティングの目的が、顧客創造重視から顧客維持重視へと徐々にウェイトを移しつつある」ことがいくつかの理由で指摘されています。
分かりやすい理由は、新規顧客開拓にかかるコストの大きさです。
よく、「新規顧客から売上を獲得するためのコストは、既存顧客から売上を獲得するのに比べて7倍のコストがかかる」と言われますね。

これは、新規顧客開拓をミッションにしていた仕事と、長いお付き合いのある顧客との仕事の両方の経験があるので、本当に実感値としてよく分かる話です。実際は、7倍どころではなく、同額の売上を上げようと思ったら、30倍以上のコストの開きがあるのでは?と感じているくらいです。

「同じ1億円の売上を上げる」というKPIが設定されたとしても、既存顧客がいる状態でのチャレンジと、新規顧客に対するチャレンジとでは、全くハードルが異なります。本当に個人レベルで新規の売上を立てるとなると、最初は100万円であれ、かなりハードルが高いと感じていたのを思い出します。

話は少し逸れますが、このあたりが単純に売上額の大小だけでは、社員の評価を公正に行うことはできないと考えている所以です。売上額が大きくても、そこにいる人がイコール優秀とは限らないし、売上額は小さくても超優秀な人が獅子奮迅の活躍をしているプロジェクトもあるからです。

話を戻すと、単純に新規顧客の方がコストが大きいというだけではなく、「都市圏に住む30代サラリーマン」というような顔の見えない見込み顧客に対するアプローチがかなり粗々になりつつある点も指摘されています。
つまり、同じ「都市圏に住む30代サラリーマン」といっても、個人主義・多様な価値観が広がった現在においては、本当に色んな人がグラデーションされているので、このぼんやりとした見込み顧客に関する大規模広告のようなマーケティング努力は、実質的に効果が薄い、という指摘です。

30年近く前ですら、すでにこのようなことが指摘されていたのです。現在は、より多様な価値観・生き方が広がっており、ぼんやりとした見込み顧客像に対するアプローチでは、「各個人の痒いところ」に手が届かなくなっているのは、明らかです。

特に、ただでさえマスに対する大々的な広告などが打ち出せない個人にとって、「具体的に顔が浮かぶ人」に対する営業が本当に大切。「営業」に悪い印象を持つ方もいますが、本来「営業」とは、その人が困っていることにアプローチする価値提供を伝えることです。

顧客関係維持は、ほぼ100%の確率で利益上昇につながる

1990年にFrederick F. ReichheldとW. Earl Sasser, Jrにより共著論文の形で公表された研究「Zero Defections: Quality Comes to Services」では、企業が顧客を5%多く維持するだけで、ほぼ100%の確率で利益を上昇させることができることが明らかになっています。

単純に、「長い期間を通じて同じ金額を払い続けてくれる」ことによる基礎利益だけでなく、顧客維持によるいくつかの利益への貢献が指摘されています。

例えば、顧客に対する「営業費削減利益」です。
事業活動そのものの評価を表す「営業利益」は、単純に売上から原価を引いて導かれる粗利益から販管費を引くことで求められることから、営業費のような販管費は営業利益に直結します。

だから、戦略的な販管費利用は除き、できるだけ営業費は小さくできたほうが営業利益を大きくできるのですが、自分のことも、自分が提供できる価値も知らない人にアプローチして、何かのサービスを購入するまでの意思決定には、顧客側の心理的ハードルが高くなります。
だから、自分のことを知ってもらうまでにかかるコストが大きくなるわけですが、既存顧客の場合、このハードルが小さいだけで、営業費が下がります。

また、新規顧客の場合、その人や組織が抱えている真の課題を深く理解できていない状態から手探りで問題を定義するところかスタートになりますが、既存顧客の場合、ある程度顧客の期待値を知っており質問や問題を減らすことができるため、1年目から2年目にかけてコストが3分の2に減少することが分かっています。
また、顧客の財務状況や投資の嗜好を熟知しているため、より効率的・効果的な解決手段を提供することが可能となり、その分売上額自体も上げていきやすくなります。(売上額上昇分と、営業費下落分により、利益幅が広がる)

上述した研究では、「ある産業用流通業者では、1アカウントあたりの純売上高は、取引開始から19年目まで上昇し続けた」ことが分かっています。

個人事業で大切な観点

単発的に多くの顧客を追い求める狩猟型の顧客創造マーケティングが難しい「弱者の立場」にある個人事業においては、市場シェアを高めることよりも、顧客内シェアを高めることが大切です。

それも、単に一時点における顧客内シェアではなく、顧客を中長期的なパートナーと捉えて、顧客と一緒に、顧客のその先にいる顧客への価値提供を大きくするアプローチが必須。

これにより、中長期での顧客内シェアを高く維持できるだけでなく、顧客が投資に回せる予算そのものを一緒に大きくしていくことができます。

別の言い方をすれば、今目の前にいる人に自分のファンになってもらい、その人と一緒になって、取り組む事業そのものを大きくしていく、というアプローチがより有効なわけです。

そうなると、具体的に重要になってくるのは、自分の商品がそもそも顧客維持型マーケティングに馴染むものかどうかの見極めと、今目の前にいる顧客に対するより深いレベルでの理解です。

前者に関しては、歯磨きやティッシュといった比較的低価格の日用品では、なかなか顧客維持型マーケティングアプローチは難しいかなと。一方で、コンサルティングのような事業であれば、かなり親和性が高いと感じています。

後者の顧客理解に関しては、「顧客と長い付き合いがある=顧客のことをよく理解している」と考えがちなのですが、本当にそうか?は改めて自問自答する必要があります。

「顧客を知る」とは、「顧客のビジネス・事業を知る」ことであり、顧客がどのような価値を顧客の顧客に提供して、顧客の事業を成立させているか、の仕組みを理解することです。ここを理解しないと、真の意味での事業パートナーとして「顧客維持型マーケティング」に取り組むことはできないと考えています。

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林 裕也@30代民間企業の育児マネージャー
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