【今でしょ!note#160】「ダメ会社症候群」の特徴
いかがお過ごしでしょうか。林でございます。
最近、三枝匡さんの「V字回復の経営」について改訂版が出ていたようなので、読み直しました。
本書は、建設機械会社コマツにおいて7年連続赤字だった不振事業を2年で黒字化に変えるまでのノンフィクションです。
本書は、複数企業の事業再生を実現してきた筆者が、闊達さを失ったダメ企業の特徴を分析し、そこから回復にまで持っていくための変革を起こす際に必要なステップ、考え方が記されています。
もし自分が「大企業病」が蔓延る事業組織の立て直しを求められたらどうするのか?いまの自分たちは、客観的に見て「ダメ会社」にいるのか「闊達な成長企業」にいるのか。このあたりを点検して、普段の自分たちの行動を評価をする上でも、改めて読んでみてよかったと感じましたので、いくつか本書で紹介されているポイントをに触れながら、考えてみたいと思います。
やたら出席者の多い会議
やたらと出席者の多い大会議は、ダメ会社症候群の典型です。出席者を減らすと、「自分は聞いていない」、「自分は関係ない」と拗ねる人が出てしまう、リーダーシップの弱い組織の特徴であると紹介されています。
本書で紹介されている例としては、役員会議レベルでも、約30人の出席者が出てきて丸一日かけて会議をしていますが、自分の番が回ってきたら少し説明するだけで、決定は先延ばしで何も決まらない会議がなされていたようです。
会議や打ち合わせの時間は、時短にも直結する話だと思っていて、基本的に「自分が発言しない会議」であれば出席不要だと考えています。
そして、言わずもがな「出席者の単価 × 会議時間」のコストを常に意識しておくのが大事なので、多くの人が出ているにも関わらず何も決まらない、進行中事案の軌道修正がなされない会議であれば、やらない方がマシですね。
会議に限らず、本書で一貫して紹介されているのは「スモールイズビューティフル」の考え方です。意識決定においても、各メンバーが当事者意識を持つことにおいても、そこに参加する人が多く、規模が大きくなってしまうと責任の所在が曖昧になり、どうしても「自分は関係ない」と考える人が増えてきてしまいます。
もし、多くの人が参加している打ち合わせや会議があれば、「これはもしかしてヤバいやつなのか?」と疑ってみるのが良いでしょう。
個人レベルでは、なかなか発言しにくい会議に出てしまっても、リーダーシップをもって臨めばあればやれることは沢山あります。TeamsやZoomなどのWeb会議であれば、チャットコミュニケーションを同時並行でできますから、気付いたことはとにかく書き込んでみる、議論のポイントや結論をショートにまとめる、というアクションも有効でしょう。
それすらできず、ただ黙って1時間を終えてしまう会議であれば、やり方を絶対に見直した方がいいです。
競合他社や顧客の話が出ない
今週1週間の職場での会話を振り返ってみて、どれだけ競合や顧客の話が出たかを振り返ってみましょう。
勢いがある企業は、当然外での勝ち負けを意識して、いかに競合他社に比べて、自社が半歩でも先に行けるか、そのために自分たちの商品や営業活動の競争力を高められるか、に集中していますから、社外の会話が頻繁に出ます。
一方で、闊達さを失った組織では、社内政治が蔓延り、関心事項が常に内部にありますから、競合や顧客の会話が圧倒的に少なくなります。
社内の組織間で「隣のチームが悪い」と歪みあっているような組織は最悪です。私の経験上、同じプロジェクトの中でチーム間で綱引きしている状況が始まっているケースにおいては、マネジメント側に問題があることがほとんどです。
マネージャーのレベルが低いと、当たり前のように隣のチームを敬遠し、自分自身がその雰囲気を作っている自覚がないのです。競合他社に目を向ければ、同じ船に乗っている社内間で足を引っ張りあっている場合ではありませんから、外に目を向けて自分たちを客観視できていない証左であると言えます。
当たり前ですが、会社の同期なんてライバルではないんですね。そんなレベルで出世競争なんてしていても無駄です。(もちろん、事業成果=社会への提供価値を競い合う仲間がいることは大切です)
むしろ、同じ船に乗って同じ場所を目指す仲間であるため、自分と同じくらいの世代で、尊敬できる人や能力が高いと感じる人がいるのは、かなり喜ばしいことです。
自分より能力が高いと感じる後輩がいるのは、組織が成長傾向にあるということで喜ぶべきであり、もしいないのであれば、まずい状況にあると思った方がいいですね。
この4月は、会社や事業部単位でのキックオフのような場も多いと思いますから、そこでどれだけ競合の話が出てくるか、というのも自分の職場を点検する観点になるでしょう。
競合の話が出ずに、自分たちの昨年度業績はこうで、今年度はこういうことをしていく、という話だけが組織トップからなされている場合、組織の方針や戦略を立てるはずの事業戦略担当でさえも外を見れていないということですから、かなり危機感を覚えた方が良いと考えます。
「開発→生産→販売」にかける時間が長い
筆者は「造る、作る、売る」のサイクルをいかに早く回すか、というフレームワークをご紹介されていますが、これも点検の観点になります。
もう少し具体的に言えば、営業担当が顧客と対峙して受け付けた照会や要望、クレームに対して、どれだけの時間で顧客にレスポンスできているか、ということです。
よく言われる「機能別組織」か「事業部組織」か、という論点にも繋がりますが、「機能別組織」で製造機能と販売機能が分離していると、顧客の声を商品やサービスに取り込むまでの時間が長くなりやすい傾向があります。
事業部組織では、開発部隊と営業部隊が同じ組織にいますから、「この事業部ではこれを売る」というのがある程度決まっていて、その商品に対する顧客からのフィードバックがタイムリーに反映されやすい傾向があります。
もちろん、事業部組織を取っていても、営業部隊と開発部隊の心理的距離が遠かったり、「開発は開発だけしていれば良い」というように、開発部隊がマーケティングや営業マインドを持てていない場合も、「開発→生産→販売→(顧客の声やマーケットニーズを取り込んだ)開発」のサイクルを早く回していくことができません。
顧客の立場で見れば、「開発→生産→販売→開発・・・」にかかるサイクルが早い会社の方が当然満足度は高く、複数企業の選択肢がある中で最終的に選ばれる企業は一社になります。そのため、競合よりも半歩でもいいからこのサイクルを早く回せるか、というのは、企業の重要な競争力そのものに直結してきます。
自社商品のマーケットシェアが落ち込んでいる事象に対して解像度を上げて理解するならば、この「開発→生産→販売→開発・・・」のサイクルを回すスピードが競合よりも遅いということが考えられますから、この要素のどこにボトルネックがあるかを分析していくことで、問題点を特定していくことができます。
このように、多数の事例から抽象化されたダメパターンをもとに、自分の所属する企業の点検をすることは、結構大切なことだと改めて考えさせられました。
それでは、今日もよい1日をお過ごしください。
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