#301 やりたいことがない問題にどう向き合うか?「自分ダイバーシティ」の発想
いかがお過ごしでしょうか。林でございます。
人と話していて、よく聞くワードの一つが「やりたいことが見つからない」という話です。このテーマに対する私の意見は割と明確で、基本的には「やりたいことがないのは、行動量が少ないから」というふうに捉えています。
というのも、やりたいことというのは、道を歩いていて、どこにあるのかな〜と探して「あった!」と突然見つかるものではないですし、最初は別にやりたいともやりたくないとも思っていないことでも、やっているうちに「あ、実はこれやっている時は楽しいかも」とか「他のことやっていると苦痛で仕方ないけれど、これだけは無理せず、勝手に体が動いてしまう」みたいな瞬間に出会う、みたいな感じだと思うからです。
つまり「やりたい」から「行動する」ではなく、「行動する」うちに「やりたい」ことに気付いてくる、そんな順番だということです。
私のやりたいことは何だ?とウンウン考えていても、机上で考えているだけでは絶対に見つからない。もちろん、過去にやってきたことを冷静に振り返って気持ちを整理してみるのは良いと思いますが、それも先に「行動する」があって、そこからエッセンスを抽出している、ということに過ぎません。
これまでも何度か記事にしてまとめてきた「やりたいことがない問題」ですが、今回、田中慶子さんの話を聞いて、「自分ダイバーシティ」という言葉を使って「やりたいこと問題」を捉えていたのが素敵だと感じ、自分なりに思考した話をまとめてみたいと思います!
「自分ダイバーシティ」という考え方
私自身も「思考の枠」に嵌めて考えてしまっていたのに気付いたのですが、いわゆる「ダイバーシティ(多様性)」という言葉は、複数の人が集まっているイメージを持っていました。
これまでの生活環境や価値観が異なる人が集まり、何かの目的達成に向けて一緒に協働すること。
「朝9時にはオフィスの席について、18時に帰る」というのが仕事で、仕事とはそうあるべし、みたいな一つの価値観しかない組織の中で、「いやいや、それでは生活上の制約があって無理しないとハマらない人がいるから、本来の組織が成果を出すという目的に照らし合わせれば、別に全員が9時-18時にオフィスにいること」がマストではないではないよね、という価値観をブレンドすること。
これも一つのダイバーシティを尊重するパターンの一つだと思います。
ただし、ダイバーシティって、別に複数の異なる人間が集まっている場合だけではなくて、自分一人の中に色々な価値観や興味・関心を持つことでも成立する、こんなふうに考えることが「自分ダイバーシティ」です。
私の中で着想したのは、自分の頭の中に、常に3つくらいの「認知領域」の箱を作るイメージです。
以前もご紹介したことがある樺沢紫苑先生の「言語化の魔力」によると、人間が一度に頭の中にストックできることは3つくらいが限界で、それを超えるとメモリ不足に陥って、ストレスに感じてしまい、処理能力も一気に低下します。
仕事の処理能力が高い人が多くの「量」をこなせる理由は、「頭の中の箱」に入ってきた一つの仕事をすぐに捌いて空っぽにしていくため、常にメモリが空いている状態で、CPU効率がよく高いスループットを維持できるからです。
逆に処理能力が低い人は、「頭の中の箱」に何かの仕事が入ってきた時に、すぐに着手することをせずに一旦放置してしまうから、どんどんCPU効率が落ちてきて、全体のスループットが下がります。
パソコンで言えば、多くのアプリケーションを一度に立ち上げすぎて全体の動作が遅くなってしまっている状態です。
話を元に戻すと、そんな考え方から「頭の中の箱」は3つくらいが適度かと思っているのですが、人は「認知領域」に入っている物事であれば、解像度が上がりやすいんですね。何かの話を興味深く聞いたり、普段は見逃してしまいそうなことに気付ける能力は、実はこの「認知領域」に関係しています。
例えば、セブンイレブンのロゴを思い浮かべてみてください。
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皆さんはクリアにイメージできたでしょうか?
答えはこんな感じなんですが、「イレブン」の最後の「n」だけ「ELEVEn」と小文字になっています。
これを認知している状態であれば、セブンの看板を見た時に「n」に目が行きますが、認知していないとスルーしますよね。
これが「認知領域」の違いによる物事の解像度の違い、ということです。
「頭の中の箱」に3つくらい「認知領域」を入れておく
このように、自分がちょっとでも興味があるかも・・?と思うレベルで構わないので、一旦キーワードとして「頭の中の箱」に入れておく。こうすることで、自分という一人の人間の中にダイバーシティを作り出すことができます。
これをしておかないと、「自分はIT業界にいるから、ITスキルしかないけどどうしよう」とか閉塞的に考えてしまいます(ITスキルあれば、どこでも活躍のフィールドはあると思いますが)が、3つくらい入れて行動しているうちに、「これは興味あるかも!と思い箱の中に入れていたけど、実はそうでもなかったな」と気付いて他のものと入れ替えたりできます。
大事なのは、3つくらい「認知領域」に入れておくだけで、行動しながら見たり聞いたりしたことで関連するものに出会った時に、解像度高くその情報を感知できるということです。
で、もしできれば、箱の中への入れ方も、できるだけ分解された後のものが入っていた方が、より自分の興味・関心が「動詞」で理解できてきます。
何を言っているかと言うと、何となく「IT関連の仕事」に興味があると思っていても、なかなかそれが「これだ!」となりにくいのは、解像度が粗いからです。
「IT業界の仕事」と言っても、それを構成する要素に分解していくと、もっと細かくなっていきます。ITシステムを構築する代表的なプロジェクトの中には、「企画→提案→見積→プロジェクト計画→要件定義→設計→製造→試験→検修→運用訓練→納品→維持→・・・」というように、複数のプロセスで構成されていますし、「企画を顧客に提案する」という一つの活動を取っても、「インタビューや中期経営計画、有価証券報告書分析による顧客の情報収集、顧客が求めているものの仮説立案、企画書作成、プレゼン、仮説検証、ブラッシュアップ」というように、さらに分解できます。
もちろん人それぞれではありますが、「やりたいこと」や「得意なこと」にハマるキーワードは、「IT関連の仕事」という漠然としたものではなく、「企業戦略を分析する」とか「企画を立案する」とか「プレゼンしてメンバーを巻き込む」とか、これくらいの「動詞」に落とし込まれたものになることが多いと思うんです。
ここまで落とし込まれた状態で「認知領域」として頭の中に入った状態で行動していれば、より自分の興味・関心を具体的に掴むことができると考えています。
最後に極論:やりたいことは別になくてもいい
ここまでやってみても「やりたいこと」がない、という人は、無理に探さなくてもいいと思います。「やりたいことがないとダメ」みたいな風潮も感じますが、別にやりたいことがなくても生きていけます。
もちろん、「Will→Can→Must」の順番で、Will起点でできることを広げて、やるべきことを増やしていくアプローチもありますが、「Must→Can→Will」で、まずは求められることをしっかりやり遂げていく中で、徐々にできることを増やしていく、というアプローチも素晴らしいです。
「やらなければいけないこと」がやれる、というのも、とても大事なことです。
だから、自分ダイバーシティで、色々と興味の種を「頭の中の箱」に入れつつ行動することは続けつつ、それでもなかなか「やりたいこと」が見つからない状態であっても、やることしっかりやっているのであれば、堂々としていればいいのではないでしょうか。