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【今でしょ!note#102】情報発信に悩む自治体へのアドバイス (1/2)

いかがお過ごしでしょうか。林でございます。

「自分たちの地域に人が来ないのは、SNSでの発信が少ないからだ」、「隣の地域でSNSを始めたらしいから、うちの地域でもはじめるぞ!」

地域分野で仕事をしていて、少なくとも1000回くらいは、このような声を聞いてきました。
自治体の職員さんだけでなく、そこに暮らす大学生、高校生までも「情報発信が上手くできれば、人が来てくれる」と考えているようです。

しかし、これって本当でしょうか?

確かに、発信活動自体は、必要なことです。でも、地域にとっての発信活動は、必要条件ではあるけど、決して十分条件ではないんですよね。

「発信」の前に大切なことが沢山ある。

とにかく断言できるのは、自治体組織の上位層から言われていい感じのホームページを作ったり、SNS更新の仕事を振られた若手職員の方が交代で試行錯誤しながら更新を続けても、その効果はかなり限定的ということです。
費用対効果がプラスになることは、ないと言い切ってよいと考えます。

今日は、地域行政の情報発信に関する私の意見をまとめてみたいと思います。



まずは3C分析を

まず、多くの行政組織で陥りがちなのは、目的や目標設定(達成基準と終了判断ポイント)が曖昧なまま、本来手段であるはずの情報発信をとりあえずはじめてしまうケースです。

まずは、ここにしっかり時間を使い、チーム内で目線を合わせることが大切です。

そして、情報発信は、マーケティングの4Pでいうところのプロモーションそのものです。
つまり、戦術が必要。

今回は、目的や目標の設定が完了したあと、どのように戦術を練っていくかというところで、企業活動ではよく用いられる超王道の経営フレームワークの3C分析に基づく戦略設定について解説します。

Customer(市場・顧客)

ここでは、マクロ観点での市場と、ミクロ観点での顧客に分けて考えてみましょう。

企業活動における市場調査では、市場規模や成長性などを見ることが一般的ですが、自治体における市場とは自分の地域の人口傾向や、固定資産税等の税収の見込み等があげられます。

顧客にあたるのは、住民、外からやってきて消費をおこしてくれる観光客、自地域の企業で労働したり、投資してくれる人が該当するでしょう。

このフェーズでは、目的をできるだけ具体的に設定して、目的を果たすために情報発信のターゲットを誰とするか、明確にするプロセスが大切です。

一口に「住民」と言っても、どの年齢層をターゲットにするのか(アクティブシニア、子育て世代、学生など)で、アプローチは変わります。
生活習慣の違いなどを具体的にイメージして、「こういう人たち向け」ということを一定絞り込むことが必要なのですが、ともすれば「子どもからお年寄りまで全員を」となりがちです。

でも、それをやってしまうと、ターゲットがボヤけて、手段もありきたり、全方位的なものとなってしまい、後に説明する他地域との差別化になりません。

どの分野でも人手が潤沢に余っているということはないでしょうから、情報発信の担当者がそれだけ専任で仕事できるわけではない。
時間は有限ですから、「全ての層に向けて全方位的に差別化する」みたいなことは、難しいのが現実です。

だからこそ、どういう人たちに向けて、どのような行動を起こしてもらうための発信か
そこをしっかりと定義して、リソースをまずは一箇所に集中させることが大切です。

Competitors(競合)

企業活動で言えば他社となるわけですが、地域における競合とは他地域になるでしょう。
それは国内だけではなく、海外の魅力的な地域も含めてイメージしてもいいかもしれません。

2023年12月時点で、全国で1884地域があります。
そのそれぞれの地域で、「うちの地域には魅力的な自然がある」「美味しいごはんがある」とSNSで発信しても、例えば東京に住んでいる私から見ると、どの地域も同じように見えてしまいます。

差別化の基本原則は、「みんながやっていないことをやる」です。
なのに、多くの自治体が、似たようなサイズ感、近くの地域での成功事例を探し、「他でやっていること、成功しているように見えることを真似る」という真逆のことをしています

例えばインバウンド観光政策として、SNSでの英語での発信をしよう!となり、1884地域が同じようなことをしていても、「数ある地域の中で、あえてあなたの地域に行く」理由が見つかりません。

より踏み込んだ議論をすると、競合というのは、他地域だけではなく、ターゲットとなる住民や潜在観光客がすでに知っている知識や体験、というのも含まれます。

つまり、発信している内容が「既に知っているよ」「それよりいいものが他にもあるよね」となってしまうと、発信コンテンツ自体に差別化要素がなくなってしまう。

だから、発信をして何らかの行動を起こしたいと考えている相手の人が、何をどこまで知っているのか。知らなくて驚きや興味を持ってくれそうなことは何なのか?を理解するのが重要なのです。

そのプロセスを抜きにして、何が自分たちの差別化要素になるのか、を真の意味で捉えることはできないでしょう。

Company(自社)

「自社の分析」は、企業活動においては、自社の強み、得意技、自社がやる意義みたいな分析を行うところです。
地域にあてはめると、その地域ならではの特色、他ではあまりやっていない取り組み、時間をかけて積み重ねてきたもの、が該当します。

よく「うちの地域には何もない」みたいな話をする人がいます。
「魅力的なものが何もないから、スタバを連れてくればよい。外から魅力的な企業を連れてくればよい。新しくて大きなランドマークとなる立派な建物を作ればよい」と。

本当にそうでしょうか?

魅力的なものとは、他の地域が真似しようとしても、なかなか真似できないものです。
一番分かりやすいのは、歴史。

何年にもわたって築きあげられてきた歴史的建造物や、開拓されていない土地、昔ながらの街並みというのは、それを真似しようとしても、同じ時間をかける必要があり、真似がしにくい資産です。

また、その地域の人にとっては当たり前のもの・文化の価値が、外から来た人によって再発見・再定義されるケースもよくあります。

でも、本来は、自分たちが外からの目を持って、改めて自分たちの価値を再定義することが大切。
外と比較してみたときの自分たちの価値の認識なくして、「魅力的な情報発信」などできるわけがありません。

外の目を持つためには、地域の人が積極的に外に出て、海外含めて、様々ないいものを知る必要があります。

しかし、過去記事でまとめた通り、日本人の年間平均宿泊旅行回数は、1.2回とかなり少ないです。

自分で投資して外を見ようとしていない人が、外から見た自分たちの価値を理解することがかなり難しいのは、明らかです。

自分たちの戦い方を自己認識、言語化するステップがあり、その上での情報発信なのです。

これら3C分析を踏まえた戦略策定なきまま、とりあえずSNS活用を、といった手段が有効でないのは、想像しやすいことだと考えています。

それでは、今日もよい1日をお過ごしください。
今日もお読みいただき、ありがとうございました!

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林 裕也@30代民間企業の育児マネージャー
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