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小銭大魔神の日常
じゃらじゃらじゃら
財布を開くとそこには大量の小銭があった。
いくら入ってるか把握できないほどにじゃらじゃらしていた。
そう、小銭大魔神になっていた日の話である。
大魔神としては小銭を何とかしたい。
ATMで預金すりゃいいか!とコンビニ入ると、まあそりゃお札しか使えないわけで、そこまでは分かっていたので、まあまあまあと自分をなだめた。
まあレジで千円札に両替してもらえないかなーとコーヒーを持って呑気にレジに並ぶと、
全自動ハイテクPOSレジではないか。
今流行りの自動釣銭機を目の前に、両替というものは存在していないのではないか、というより手間掛かりそうなので多分無理だ。両替出来ても多分無理だ。
ということで一応聞いてみるも「両替厳しいですね〜」となったので、思い当たる街の薬局屋の
に行ってみた。
全自動ハイテクPOSレジではないか。
両替するのに申し訳程度に買ったドリンクで両手が塞がる。
小銭を預けたいはずがどんどん減っていく。
どのお店を覗いても、
全自動ハイテクPOSレジではないか。
飲食店に入ってまで両替を欲してるわけじゃない。ササッとじゃらじゃらをすっからかんにしたいだけなんだ、こちとら。
そんな小銭大魔神はどうどうどうと気持ちを落ち着かせていたところに目に入って来た。
銀行なら小銭入れるとこあるじゃーーん!
わーいわーい!最初からこれでよかったじゃーん!
ということで、カードを入れてボタンをポチポチ押していると、カードが戻ってくるではないか。
何度やっても戻ってくるカード。
土日じゃない、祝日でもない。戻ってくるカード。
叫びたい気持ちを抑え、別の銀行ATMを目指して黙々と歩む。
小銭大魔神の行脚である。これを済ましたら財布が軽くなる...軽くなる...貯金できる...。
そして満を持して到着!
秒で駆け込む!カードを入れる!
人生最速ポチポチ!
“ウィーガチャッ”
開いた!!お札口!!
開かない!!小銭口!!
なんで!!嗚呼!!
遂にこの街では両替出来なくなっていたのだ。
令和とはこういう事なんだと突き付けられた。
小銭大魔神、令和の時代に盛大な小銭泣きである。預金も出来ない、小銭も減る、全自動レジ、もう魔神失格じゃないか。
泣きじゃくった目からこぼれ落ちる大粒の小銭。
自動釣銭機で溢れ返る現代、令和の技術革新、キャッシュレスなんだ世の中。
この小銭はもう紙にも替えられないんだ。
こぼれ落ちる小銭をせっせと運ぶ蟻たちを眺めながら、それ俺の涙、大事にしろよ、とか言ってる大魔神。
顔を上げると空はもう赤く染まっていた。焼ける雲と青が少し滲んだ空の美しさを見ているとなんだか穏やかになって来る。今日も一日、預金出来なかったな...でもいいか、夕陽見れたし。
小銭大魔神、明日もマイペースに小銭を司ります。
令和に負けません。小銭泣きもしません。
......何で今日両替しようと思ったんだっけ?
そして今日も小銭大魔神は小銭を謳歌しているのであった。
あなたの街にもじゃらじゃらと音が聴こえたら、気をつけよ。そこが大魔神の通り道だ。
じゃらじゃら。
めでたしめでたし。