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設計事務所での毎日

武蔵美の建築学科を卒業してから、都内の建築設計事務所へ入りました。これは本当に自分が悪いのですが、入った事務所は、自分が目指したい方向とは違う内容の仕事が多くて。ただ、建築設計の仕事ではあったので、実務を覚えて、将来目指したい住宅設計に生かそうと考えました。

社長を入れて4人の設計事務所で、ぼくは一番下っ端。毎日、夜遅くまで全員で事務所にいるような生活。自分の仕事を早く終わらせても帰れるわけでもなく、事務所としてそういう慣習で。皆さん優しい人たちでしたが、自分のことを考える余裕のない毎日にだんだん疲れていきました。もっと自分の時間があれば、もう少し頑張れたかも知れないと思いますが。

目指す内容とも違う仕事で、ただ忙しい毎日は若者にはなかなか苦しく。唯一の息抜きは大好きな音楽でした。休日は渋谷のレコード屋へ行き、好きな中古盤を探してはあれこれ聴いて気持ちを保とうとしました。

でも同時に、仕事をしていくにつれて、生涯の仕事にするには、建築は自分の適性とは何かが違うと感じるようになりました。自分の中でそれを認めたくない気持ちもありながら、自分には何が向いてるのか、当時まったくわかりませんでした。

その状態が続くとストレスも溜まってきて、家族や友人に会えば「最近疲れた顔してるね」なんて言われる。だんだんと「どうしよう。ここにいてもずっとこのままだ。どうしたら良いか…」と思いながらすごす毎日。この状況をなんとかしたい。自分で動き出したい。でも、辞めるなんて言い出せないなあ…。

これからどうしようと悩みながらの毎日。設計事務所へ入って4年が経つころ、ひとり暮らしをしていた世田谷のアパートからもほど近い、都内の公共ホールが勤務地だという団体職員の採用試験があることを知ったのです。

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