シストレ検証:レジスタンスラインでの反発を狙った空売り戦略
1. はじめに
皆さん、システムトレードに興味はありますか?
システムトレードとは、あらかじめ決めたルールに基づいて機械的に取引を行う手法のことです。感情に左右されない投資判断ができる点が魅力ですが、戦略の精度が結果を大きく左右します。
前回の記事では、「レジスタンスライン(抵抗線)」を超えたら上昇トレンドと判断し、買いポジションを取る戦略を検証しました。しかし、その結果は酷いものでした。抵抗線を突破した後も上昇し続けるケースは少なく、多くの場合、利益を得ることができなかったのです。
今回はその反省を生かし、「抵抗線で反発する動き」を利用した空売り戦略を試みます。この戦略では株価が下落するタイミングを狙い、短期間での利益を目指します。この記事では、具体的なルールや検証結果、戦略の課題について詳しく解説します。
2. 今回の戦略
今回の戦略は、株価がレジスタンスライン(抵抗線)に達したとき、そのラインで反発して下落すると想定するものです。この「下がる動き」を空売りで利益に変える狙いです。
戦略の概要
レジスタンスラインとは、株価が上昇する際にぶつかる「天井」と考えられる価格帯です。一般的に多くの売り注文が集中するため、このラインに近づくと反発して下落する傾向があります。
この特性を利用し、以下のルールでトレードを行います。
具体的な戦略ルール
エントリー条件
株価が直近20日間の終値ベースで計算した抵抗線(レジスタンスライン)を超えた場合、その翌営業日の始値で「空売り」を仕掛けます。手仕舞い(ポジションを閉じる条件)
空売りを実行した後、終値が前日の終値を下回った場合、その翌営業日の始値でポジションを手仕舞いします。
また、上記にマッチしなくても、10営業日が経過した時点でポジションを強制的に手仕舞いします。これにより、保有期間が長期化するリスクを回避します。検証条件
検証期間:2020年1月1日~2024年11月1日
対象銘柄:2024年11月1日時点で上場している日本株全銘柄
手数料:0円(計算のシンプル化のため)
3. 検証結果
今回の空売り戦略を、2020年1月1日から2024年11月1日までの日本株全銘柄を対象にバックテストを行いました。その結果、以下のような成果が得られました。
資産曲線の動向
検証期間中の資産曲線を確認すると、以下のような特徴が見られました。
2020年〜2021年
大きな損失を記録。特に、株価の動きが荒い局面では、空売りが機能せず、逆に大きなドローダウン(資産の減少)が発生。2022年以降
損失を乗り越え、右肩上がりに資産が増加。戦略の基本性能としては、一定の収益性を持つことが確認できました。
戦略の主要指標
検証から得られた具体的な結果は以下の通りです。
総利益:375,987円
システム全体で得られた利益は約37万円。この期間のトレード回数を考慮すると堅実な成績といえます。最大ドローダウン:-253,700円
資産が最大で約25万円減少した場面もあり、リスク管理の重要性を示しています。1トレードあたりの平均利益:2,625円
空売り1回ごとの利益額としては小さいものの、安定して利益を積み重ねる戦略といえます。1トレードあたりの平均損益:-3,539円
利益トレードと損失トレードの偏りを示しています。損失トレードが発生すると損害が大きいことが課題です。勝率:62%
全トレードの62%が利益を出した取引であることを示します。シンプルな空売り戦略としては高い成功率です。
大きな損失の要因
2020年と2021年の損失が目立ちました。この時期は、新型コロナウイルスのパンデミックにより市場が急激に変動しており、株価がレジスタンスラインを突破した後も下落せずにそのまま上昇を続けるケースが多発しました。このような予測外の動きが、損失を拡大させる要因となりました。
4. まとめ
今回の検証では、「抵抗線で反発を狙う空売り戦略」が一定の収益性を持つことが確認できました。ただし、いくつかの課題も明らかになりました。
以下課題の解決ができれば、十分実運用で利用できるシステムになると思います。
2020年~2021年の大損失
新型コロナウイルスによる急激な市場変動が、予想外の損失を引き起こしました。このような特殊な状況に対応するためには、以下の対策が必要です:
・ボラティリティ(変動性)を考慮したエントリー条件
抵抗線の反発が起こりにくい局面を避けるフィルターを追加する。
・市場全体のトレンドを加味
市場が上昇トレンドの場合は取引を見送るなど、環境認識を組み込む。平均損益がマイナス
勝率が高いにもかかわらず、損失額が利益額を上回るトレードが多い点が課題です。これを改善するためには、以下の対策が飛鳥です:
・損切りラインの見直し
空売りのエントリー後、想定通りに下がらない場合の早期撤退ルールを設定。
・利益確定の最適化
手仕舞い条件を調整し、利益を最大化する方法を模索。